おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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アクセルリオン視点

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 ※アクセルリオン神視点

「んもうっ! グレイズ君っ! そこはアウリースを押し倒して想いに応えるのが男の子でしょっ! ハク、貴方の教育が足らないわね」

 私は面倒な上司に神様候補を量産するための神器増産のため、呼び出された天なる国ヘブンスにて与えられた居室で、自分の使徒だったハクを通してグレイズのアウリースに対する行動を見て憤慨している。

 パワハラ女上司からの無茶な増産計画を押し付けられ、神器の生産工場に缶詰め状態の私の唯一の楽しみはグレイズ君が誰を正妻に選ぶかだった。

「丸っきり女子の気持ちを理解してないじゃない。せっかく、内気なアウリースが頑張ってアタックしているのに、ヘタレなグレイズは知っててスルーしたわね」

『まぁ、グレイズ殿ですからねぇ。ここで女の子の誘惑に陥落するなら、もっと前に神器の力に酔ってダンジョン主になってますよぅ』

「それはそうだけど。それと、これは違うわよ。ハク、あなた教育係でしょ。ちゃんとグレイズ君を教育しなさい。本体の姿に戻してあげるから」

『ふぁっ!? ダ、ダメですよ。ダメ。あれはグレイズ殿には見せられませんからっ! それにそっち方面をグレイズ殿に教育するのにはだいぶ時間がかかりそうですから』

 ハクは元々、私が神になる前にいた世界に住む魔獣であった子で、変身能力を持つ種族であった。

 生身の身体があった時には、他の三人の使徒の子たちと一緒に、私を魔物から守る仕事をしていた。

 そして、昇神する際に一緒に天なる国ヘブンスについて来てくれた大切な同志でもある。

 ただ、強力な神様を作り出すため、通常の神器の力の数十倍に近い力を与えて制作した『超越者の腕輪』の持ち主が子供を作ってくれないのは誤算でもある。

 長い年月の間、休眠状態だったハクをやっとのことで目覚めさせ、私が結んでおいた天啓子の子たちとパーティーを組むところまで来ているのに、その次に進まないグレイズ君によって焦らされるとストレスも溜まるのだ。

「グレイズ君の子供は自動的に神様候補の因子が組み込まれるように調整してあるんだから、頑張ってもらわないと私が神器の量産で過労死しちゃうのよ」

『それにしても、アクセルリオン神様が『超越者の腕輪』を作った時は、頭おかしかったですからね。神様候補の子供を産み出す神様候補ってそんなのを作ったら、この世界は数世代後に地上には神様候補だらけになっていますよ』

「しょうがないでしょ。それが上司の指示だし。神様不足が極まっているんだから」

 天なる国ヘブンスでは管理する世界の増殖スピードに対応するために多くの神様を必要としている。

 そのため、今、私は天なる国ヘブンスに呼ばれて神器製造工場に缶詰にされ、幼女から元の姿に戻るための力を蓄えることもできずにいたのだ。

 なので、グレイズ君にはバンバンと天啓子や赤い糸で結んだ子たちと子供をもうけて欲しいのが、偽らない私の心情でもあった。

『はぁ、そういうものなんですか……。でも、グレイズ殿は超が付くほど自重ができる方ですし、望み薄なのでは……』

「ふむ、じゃあやっぱり、ハクがグレイズ君のベッドで一緒に寝ている時に本体に戻してあげる方が……」

『ふぁぁああっ!! らめぇえええ!! それはダメですからぁ!!』

「なんで? グレイズ君もハクだけはベッドにあげて一緒に寝ているじゃないの?」

『それは、あたしが狼だからですっ! 女の子の姿になったらあげてもらえなくなりますからっ! 絶対ダメですよ。したら、アクセルリオン神様とは絶交ですからね!』

 ハクは、アウリースとグレイズがみんなを部屋に運び終えて、それぞれが酒場の宿泊部屋に戻っていくのを見て、迷わずにグレイズの入った部屋に入っていく。

 彼女もまたグレイズのことが好きなようで、私との使徒契約は保留とし、今はグレイズの使徒候補として行動を供にしている。

 ハクはグレイズの部屋に入ると、先にベッドの入って休んでいるグレイズの隣に潜り込んで丸まっていた。

「ハクも私に付いて使徒になっちゃったからね。ほら、つがいが欲しいお年頃でしょ?」

『ダメですっ!! あたしはここで寝られるだけでいいんですっ!!』

「もう、教育係がそんなんだから、グレイズ君が奥手なのよ」

『グレイズ殿は無理強いすると、へそを曲げて絶対に手を出さなくなりますから。人族の四十路独身の男心は複雑怪奇なんですっ!』

「ふぅ、はいはい。でも、グレイズ君に隙ができたら、ハクもグイグイと押し込みなさいよ。遠慮したら負けよ」

『あたしはグレイズ殿の使徒になるだけですからぁ!』

「ああ、言い忘れていたけど、ハクもグレイズ君との赤い糸は繋がっているからね。よろしく」

『はっ!? え? そんな話聞いて……。アクセルリオン神様、ちょっと!?』

 私はハクとの思念会話を打ち切ると、無機質で殺風景な白い壁の部屋が視界に戻ってきた。

「まったく、これだからおっさんは面倒ね。若い子なら、我慢できないはずなんだけどなぁ」

 私の仕事を軽減してくれるはずのグレイズが意外と奥手だと知り、こっち方面のフォローも強化していくしかないと思った。

「ふぅ、まだしばらくは忙しい日々が続くわね。はぁ、いつになったら元の身体に戻れるのかしら」

 私はため息を大きく吐くと、寝るためだけの部屋を出て、山積みの仕事を片付けることにした。
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