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王都編 グレイズ、冒険者ギルドに喧嘩を売る
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しおりを挟む「ハリアー殿! ここは往来である! 話の続きは冒険者ギルド本部しましょう!」
俺とハリアーが揉めていたことで、人が集まり始めていたが、ジェネシスたちが来たことでさらに人が集まり始めていた。
「グレイズさん、オレがまだあの野郎をカタにはめてないっすよっ!」
「ジェネシス、お前も王様なんだから往来で喧嘩はするんじゃない」
ハリアーはまだ冒険者姿のジェネシスのことを王様だと認識してないため、怪訝そうにこちらを見ていた。
「お前ら、コソコソと喋りおって……だが、確かに人に見られるのはマズいな。私は先に冒険者ギルドの本部に行くから、お前らもすぐに出頭するように!!」
ハリアーはそれだけ言い捨てると、怪我から回復していた御者を蹴飛ばし、馬車を走らせ駆け去っていった。
俺たちはそのあまりに素早い動きについていけず、置いてけぼりにされていた。
「あの野郎、尻尾を撒いて逃げ出しやがった。ぜってーカタにはめてやるからな」
「へ、陛下。ど、どうかお怒りをお鎮めください。ぼ、冒険者ギルドとの本格的な抗争はなにとぞご容赦を!」
やりとりを見ていたアルマが蒼白は顔色をしてジェネシスに謝罪をしていた。
この国のトップであるジェネシスと、自分の所属する組織のトップが喧嘩して混乱が生じることを案じているようだ。
「いや、アルマさん無理っす。オレも売られた喧嘩は買う主義なんで、あのハリアーってやつはきっちりとやらさせてもらいますよ」
すっかりヤル気モードに入ったジェネシスであった。
「ジェネシス……俺もあのハリアーってやつは組織のトップに座る器じゃないとは思うが……喧嘩はいかんぞ、喧嘩は……」
「いやだなぁ、直接的な喧嘩なんてガキ臭いことなんてしませんよー。オレはきっちりとカタにはめるって言っただけっすからねー」
俺からの視線を、ジェネシスは避けた。
きっと直接的な喧嘩をする気だったと思われる。
いかんとは言わないが、身分を考えて行動する癖をつけて欲しいところだ。
ジェネシスが意識するしないを別にして、修行期間が終われば周りからは王様という肩書き見られる。
あたり構わずに気に入らない者へ喧嘩を売りまくれば、悪王のレッテルを貼られかねない。
修行期間中の後見人としては、ジェネシスの良いところは伸ばし、悪いところを目立たなくしてやりたいと思っているため忠告をする。
「ジェネシス……王様ってのは、みんなから慕われる存在じゃないとすぐにその座を奪われるもんだ。だから、自重に自重を重ね、検討に検討を重ね、喧嘩というのは最後の最後にするもんだ。お前は頭がいいから俺の言いたいことが分るよな?」
俺からの忠告にジェネシスが神妙な頷いていた。
「分かってますよ。グレイズさんと姉さんの子に国を継がせるまで王座から放逐されるわけにはいかないからね。出発前にヨシュアに頼んで仕込んでおいたあのクソハリアーを追い落とす算段は結構進んでますから」
出発時点って……そんな段階から仕込んでたとは……。
ジェネシスの底知れない遠謀を聞かされ心底おどろいていた。
「…………マジか…‥……」
「冒険者ギルド内の王国否定派はオレにとっては敵ですからね。ちょちょいと内部抗争を煽って火種に火を付けてるところっす。本部の強圧的な指示に反発しているギルド支部も結構あるんすよ。大きなダンジョン都市ほどね」
ジェネシスはニヤリと笑う。
現執行部体制に不満のあるギルドマスターたちを焚きつけていると自供していた。
「あら、さすがジェネシス君ね。これはいい商機になりそうな気がするわ」
メリーが手をワキワキとさせて、にやけていた。
商売の匂いが感じ取れたのか、メリーの目が光り輝いている。
と同時にセーラも同じ目をしていた。
「メリーさん、この件を利用してうちの会社の王都での取引先増やせますかね」
「そうね。きっと、脈がありそうなところリストアップしとかないと」
「お、おい。メリー……俺たちは商談に来たわけじゃ……」
ジェネシスから、冒険者ギルド本部への揺さぶりを聞いたメリーたちが色めき立っていた。
その様子を見ていたアルマがそっと呟く。
「……ギルド本部が揺らぐ……ここはグレイズさんが陣頭指揮をとって反王国否定派のトップに座ってもらえば……冒険者ギルド本部の一角に座れるかも……そうなれば、色々と改革も……」
ア、アルマ……何かを企んでいそうな顔だぞ。
仮にも君は冒険者ギルド側の職員だろ。
「グレイズ様が冒険者ギルド本部のギルドマスターというのもいい案かもしれませんね。ブラックミルズは上手くいっているし、他の支部も真似したいだろうし」
メラニアや……話をややこしくしてはいかんぞ。
俺は一介の冒険者でギルドマスターはおまけの仕事でしかないぞ。
「グレイズさん、また偉くなるのー。ファーマも応援すればいいかなー」
「グレイズ、やれる男。偉くなるなら応援するのが妻の仕事」
「そうですね。私たちにできることがあれば、お手伝いしないと」
ファーマやカーラ、アウリースまでやる気をみせていた。
「冒険者ギルドも少し組織が巨大化しすぎてますからね。ここらでちょっと揺さぶりかけてスリム化させないとって思ってる次第です。グレイズさんには相応のポストも用意してますからご安心を」
ジェネシスが『してやったり』という顔をしてこちらを見ていた。
護衛目的で付いてきたのだとばかり思っていたが、もしかしたら今回の件を利用して肥大化していた冒険者ギルドの組織にメスを入れる考えだったかもしれない。
なんだか、王都がきな臭くなりそうな気しかしない……。
俺はわいわいと盛り上がっているみんなを見てため息を吐くしかなかった。
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