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本当のこと3
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「お母さん、他に何か言ってなかったか!?」
勢いよく襖を開け放った蒼介に、美咲はびくりと肩を跳ねさせた。
けれど次の瞬間、呆れたように口角を上げる。
「人の話は最後まで聞こうよ。お父さん?」
畳の上に座り直した蒼介は、荒い息のまま湯呑をつかみ、一気に口へと流し込んだ。冷めたお茶が入っていたはずだった。けれど、舌の上に広がった火傷をする様な痛みに思わず「ぶっ」と吹き出した。
熱い緑茶が畳に飛び散り、美咲が慌てて手拭いを掴む。
「もう、新しいの淹れ直したのに。」
ため息をつきながら、机の上を拭う美咲。
「ぬるいお茶がまだ入ってると思ったんでしょ。思い込みは良くないよ。お父さん。」
その一言に、蒼介の動きが止まった。
「……お母さん、なんて言ってたんだ?」
美咲は無邪気な笑顔を見せて言った。
「お母さんって、弟がいたんだね。今までどうして教えてくれなかったんだろう。」
一呼吸おいて、美咲は蒼介をまっすぐ見た。
「弟が継いだ店を手伝わなきゃいけないからって。別に、お父さんのことが嫌になったとかじゃ無いみたいだし、お母さんだって親孝行したいんだと思うよ。」
蒼介の視界がにわかに開けた。
点と点が、一本の線で繋がっていく。
「気が済んだら帰ってきてねって言っといたから。」
何かが弾けるように、蒼介は立ち上がった。
浴衣の上から上着を羽織って美咲の方へ振り替える。
「悪い、片付けといてくれ!」
背後で美咲の「あーもう!」という声が響く。
それを振り返ることもなく、蒼介は旅館の玄関を飛び出した。
息を切らしながら「小料理屋はるの」の前に辿り着いた蒼介は、ふと腕時計に目をやって愕然とした。
午前二時。
当然、店はとうに閉まっている。
「……馬鹿だな……俺。」
シャッターの降りた飲み屋街は静まり返り、オレンジ色の街灯だけが等間隔に道を照らしていた。アスファルトには街灯の光が長く伸び、どこか寂しげな影を落としている。店先の暖簾は仕舞われ、格子戸には鍵がかかっているはずだ。
途端に全身から力が抜ける。肩を落として踵を返しかけた時、店の引き戸の脇、軒下の暗がりに人影があることに気づいた。
「……美奈子?」
月明かりに照らされて、美奈子が立っていた。
パジャマがわりにいつも着ているスウェット姿で、少し寒そうに肩を丸めていた。申し訳なさそうに、少し困ったような顔で蒼介を見つめている美奈子の髪が夜風で揺れている。
「どうして、こんな時間に」
蒼介が荒い息を整えながら尋ねると、美奈子は小さく首を傾げた。街灯の光が、彼女の横顔をぼんやりと浮かび上がらせる。
「美咲が連絡をくれたの。お父さんが来るから待っててあげて……って。」
勢いよく襖を開け放った蒼介に、美咲はびくりと肩を跳ねさせた。
けれど次の瞬間、呆れたように口角を上げる。
「人の話は最後まで聞こうよ。お父さん?」
畳の上に座り直した蒼介は、荒い息のまま湯呑をつかみ、一気に口へと流し込んだ。冷めたお茶が入っていたはずだった。けれど、舌の上に広がった火傷をする様な痛みに思わず「ぶっ」と吹き出した。
熱い緑茶が畳に飛び散り、美咲が慌てて手拭いを掴む。
「もう、新しいの淹れ直したのに。」
ため息をつきながら、机の上を拭う美咲。
「ぬるいお茶がまだ入ってると思ったんでしょ。思い込みは良くないよ。お父さん。」
その一言に、蒼介の動きが止まった。
「……お母さん、なんて言ってたんだ?」
美咲は無邪気な笑顔を見せて言った。
「お母さんって、弟がいたんだね。今までどうして教えてくれなかったんだろう。」
一呼吸おいて、美咲は蒼介をまっすぐ見た。
「弟が継いだ店を手伝わなきゃいけないからって。別に、お父さんのことが嫌になったとかじゃ無いみたいだし、お母さんだって親孝行したいんだと思うよ。」
蒼介の視界がにわかに開けた。
点と点が、一本の線で繋がっていく。
「気が済んだら帰ってきてねって言っといたから。」
何かが弾けるように、蒼介は立ち上がった。
浴衣の上から上着を羽織って美咲の方へ振り替える。
「悪い、片付けといてくれ!」
背後で美咲の「あーもう!」という声が響く。
それを振り返ることもなく、蒼介は旅館の玄関を飛び出した。
息を切らしながら「小料理屋はるの」の前に辿り着いた蒼介は、ふと腕時計に目をやって愕然とした。
午前二時。
当然、店はとうに閉まっている。
「……馬鹿だな……俺。」
シャッターの降りた飲み屋街は静まり返り、オレンジ色の街灯だけが等間隔に道を照らしていた。アスファルトには街灯の光が長く伸び、どこか寂しげな影を落としている。店先の暖簾は仕舞われ、格子戸には鍵がかかっているはずだ。
途端に全身から力が抜ける。肩を落として踵を返しかけた時、店の引き戸の脇、軒下の暗がりに人影があることに気づいた。
「……美奈子?」
月明かりに照らされて、美奈子が立っていた。
パジャマがわりにいつも着ているスウェット姿で、少し寒そうに肩を丸めていた。申し訳なさそうに、少し困ったような顔で蒼介を見つめている美奈子の髪が夜風で揺れている。
「どうして、こんな時間に」
蒼介が荒い息を整えながら尋ねると、美奈子は小さく首を傾げた。街灯の光が、彼女の横顔をぼんやりと浮かび上がらせる。
「美咲が連絡をくれたの。お父さんが来るから待っててあげて……って。」
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