25年目の真実

yuzu

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あの日の真実

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 時間が経つにつれて、俺は焦っていった。

母さんは景色を眺めながら、写真を撮っている。あのカップルは口論を続けている。
 俺たちがいることなんてお構いなしに、二人の声は――どんどん大きくなっていった。
 
女性が金切り声で叫んでいる。男は冷たい声で言い返している。
 
そして――


男が――運転席に乗り込んだ。

 
女性が『待って!』って叫びながら追いかけた。
 
でも――男は女性に見向きもせずにエンジンをかけた。そして――

女性を置き去りにして、走り去ってしまった。

黒いミニバンが――山道を下りていく。タイヤの音が遠ざかっていく。
このままだと、叔父の前をあのミニバンが通過した時、叔父は俺たちしか犯行現場にいないと思うだろう。
俺は焦った。 けれど、スマホは圏外のまま。
 
女性は――その場に立ち尽くしていた。
 俺は焦った。この女性をどうにかして別の場所に移動させないと。早くしないとここに千紘が到着してしまう。

でも――どうやって?

女性に声をかけて、『危ないからここを離れた方がいい』なんて言うわけにいかない――そんなことをしたら怪しまれる。
 
――車の中で時間が過ぎていく焦りが、思考を鈍らせた。
 
そして――

母さんは――女性の方へ歩いていった。

『大丈夫ですか?』って――優しい声でハンカチを差し出した。
 
俺は――慌てて車から降りた。

何て言えばいい?どうすれば……

その時だった。

女性が――激しく泣き出した。
 
『もう嫌……本当にもう嫌っ……!』って。

面倒なことになった……そう思った。
関わらない方がいい。そう言ったの言葉なんて聞かず、母さんは女性の背中を擦って、なだめようとした。

でも事態は悪化した。動画を撮ったとか何とか言いだして、女性が――母さんを突き飛ばした。

俺は――カッとなった。
女性に詰め寄り、強い口調で批難した。

そして彼女の肩を押した瞬間ーー本当に一瞬の出来事だった。


女性は……千紘のトラックに轢かれ、トラックは法面に衝突して横転。

急いで横転したトラックのドアを開け、千紘の状態を確認した。

顔面は額から流れる血で赤く染まり、声をかけても反応もない。

その場で震えて動けなくなった。どうしていいか解らなかった。
激しい動悸に襲われながら……なぜか頭はクリアだった。

「よかった。殺したのは俺じゃない。これは事故だ。俺じゃない。」

最悪の状況なのにもかかわらず、俺は心底安堵した。

けれど……犯行現場に到着した叔父は冷静な様子でまずは女性に近づき、意識があるか確認した。つづいて母。
二人が気絶しているのがわかるとすぐ、割れたガラス片を物色し始めた。

「……何を?」

恐る恐る聞くと、叔父は静かに言った。

ゴム手袋これをして、大き目の鋭利なガラス片を探すんだ。千紘の頸動脈を切る。」
「千紘はもう死んでる」
「意識を失っているだけだ。事故に見せかけて殺せる。やるしかないんだ。」

 

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