隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか

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第2章

ドキドキの体育祭①

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5月最後の土曜日。いよいよ体育祭の日がやって来た。

雲ひとつない青空の下、爽やかな風が吹き抜ける。今日は、絶好の体育祭日和だ。

花城学園の体育祭では、中等部と高等部の生徒が赤、青、白、紫、黄色の5チームに分かれて競い合う。

私たち2年A組は、白チームだ。

ちなみに私が出場する種目は、障害物競争と玉入れ、大縄跳び。

「障害物競争に参加する生徒は、待機場所に集合してください」

開会式と準備体操が終わると、さっそく招集がかかった。

うわ。もう出番!?

「菜乃花ちゃん、行こう!」
「うん」

私と同じ障害物競争に出場する千春ちゃんに続いて、私が歩き出したとき。

「菜乃花、待って」

彗くんに呼び止められた。

「どうしたの?」
「ハチマキが取れそうだから。結び直してあげるよ」
「えっ」

彗くんに後ろを向かされて、するするとハチマキが解かれる。

うそ。彗くんに結んでもらうなんて……。

時折、彗くんの手が首元に触れて、ドキドキする。

「はい、いいよ」
「あ、ありがとう」

再びくるっと向き直された私の顔は、たぶん真っ赤だ。

見上げた彗くんの頭にも、私と同じ白のハチマキが。

「菜乃花なら、きっと大丈夫だよ。障害物競争、頑張って」

彗くんはニコッと微笑むと、ひらひらと手を振って走って行く。

もしかして、わざわざそれを言うために来てくれたのかな?

この間の体育祭の練習のとき、私がハードルで転んじゃったから。

「宇山くん、優しいね」

千春ちゃんが、私にコソッと耳打ちしてくる。

「うん、そうだね」

たまに少し意地悪なときもあるけど、彗くんは優しい。

私は走っていく彗くんの背中を見つめながら、彼が結んでくれたハチマキにそっと手を当てた。

* *

「位置について、よーい」

ピーッ!

笛の音を合図に、障害物競争の一番滑走の生徒たちが一斉にスタートする。

そうこうしているうちに、自分の順番が近づいてきて、私はスタートラインに立った。

その途端、心拍数が一気に上がる。

うわ、どうしよう……本番だと思うと急に緊張してきた。

額には汗が滲み、心臓がバクバクと大きな音を立てて内側から胸を叩く。

私は、体操服の上から胸の辺りをギュッとつかんだ。

この間の練習のときみたいに、ハードルに足を引っ掛けて、また転んでしまったら……。
そう思うと、怖いけど。

『菜乃花なら、きっと大丈夫だよ』

ふと、私の頭のなかに浮かんだのは、先ほどの彗くんの笑顔。

そうだ。彗くんが、大丈夫って言ってくれたから。きっと大丈夫だ。

私は、真っ直ぐ前を見据える。

「それでは、皆さん。位置についてー、よーい」

ピーッ!

順番がきた私は、笛の音を合図にスタートを切った。

平均台の上を歩き、大きな網をライバルたちと一緒になってくぐり抜ける。

この間の練習で転んでしまったハードルも、足元をしっかり見て、ひとつ、またひとつと軽やかに跳び越えた。

やった……! 私は思わず心の中でガッツポーズ。

よし。この調子でいけば、きっと大丈夫。

ハードルの次は、小麦粉の中に隠された飴を探し……私は次から次へと障害物をクリアしていく。

順調に進み、あとはゴールまで走るだけとなったそのとき。

「菜乃花ーっ! あと少しだ」

トラックの外から、ひときわ大きな声援が聞こえた。
この声は……彗くん!?

「頑張れ、菜乃花!!」
「……っ」

彗くんの声が、今度はハッキリと私の耳に届いた。

彗くん、ありがとう。私……頑張るよ。

彼の声援が何よりも力となって、私の走るスピードは自然と速くなる。

そして……

「1位、白組ー!」

私は障害物競争で、一番にゴールテープを切ったのだった。


「羽生さん、1位おめでとう~!」

競技を終えて応援席に戻ると、クラスメイトの女の子たちが笑顔で出迎えてくれた。

「ねぇ、菜乃花ちゃん。次、宇山くんが出るよ」

千春ちゃんが指さしたグラウンドの中央には、彗くんの姿があった。

次の競技は、借り物競争。
そういえば彗くん、借り物競争に出るって言ってたなあ。

「彗くん、頑張ってー!」
「宇山くん、ファイトー!」

私は、千春ちゃんとふたりで彗くんを応援する。

私たちの声が届いたのか、彗くんは任せろとでも言うように、こちらに向かってグッと親指を立てた。

「キャーッ! 速水くーん」
「蓮くん! あたしたち、何でも協力するからねー!」

突然、女の子たちの黄色い声援が聞こえて肩が跳ねる。

グラウンドには、いつの間にか蓮くんの姿が。

「あれ? 蓮くんって確か、さっき障害物競争に出てたよね?」
「ああ、出る予定だったB組の男子が何日か前に足を骨折したらしくて。急遽、速水くんが代わりに出るんだって」

千春ちゃんが、私にこそっと教えてくれた。

そうだったんだ。彗くんと蓮くんは二人ともアンカーみたいだから、いとこ対決ってことになるな。
これは、なかなか興味深いかも。
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