66 / 176
第七章【氷山帝国】
7-16 人体実験
しおりを挟む
………………………………………………
―――その頃、地下研究所。
サーマス「さて……」
セージ、テイケン、制研究員の三人はサーマスの電撃により気絶させられ、ジェム・ランカーの数名によって地下研究所へと運ばれていた。全員、身体の自由は奪われた状態で、台の上でベルトに苦しいほど締め付けられていた為にかろうじてしゃべれる程度だった。
セージ「さ、サーマス……!」
サーマス「裸というのはいささか可哀想であるし、服は着せておいた」
セージ「あ、有難うと言えばいいのかしら?」
サーマス「いやお礼はいらないさ」
セージ「なら、この状況を説明してほしいんだけど?」
サーマス「ふむ……」
セージ「何故、私がこんな縛られているのか。ここは"モルモット実験場"のはずでしょう?」
サーマス「フフッ、ならば本題に行こうじゃないか」
セージ「いいわよ……」
サーマス「君の隣にも縛られている制研究員とテイケンも良く聞いてほしい」
サーマスはセージの隣の台に縛られている二人に目を向ける。
制研究員「や、約束が違いますサーマス様!セージ様だけは許してくれると、解放してくれると…!」
テイケン「頼む、助けてください…!僕は、まだ……!」
各々の言葉を口にしているが、セージもサーマスも耳を傾けようとはしなかった。
セージ「……な、何を言っても一度でも裏切った子を許す気はないし、テイケンも無様なものね」
制研究員「せ、セージ様…!セージ様、申し訳……ありませんっ……!」
テイケン「なんで僕が、なんで…!なんで……」
サーマス「セージ君は冷静だな。この状況で落ち着けるとは、流石に強いな」
セージ「フン、今さら暴れたってどうしようもないでしょう」
サーマス「そうだな。何が変わるわけでもない」
セージ「本題というのを早く聞かせて頂戴。ま、大体は察しがつくけどね」
サーマス「このモルモット台に繋がれた君たちは……まぁ、そういうことだな」
セージ「でしょうね。何の実験かしら?」
サーマス「……闇魔法、魔力増強の道具を装着してもらう」
セージ「なっ!?」
サーマス「ククク、顔色が変わったね……」
セージ「レガシー品の類を…私たちに装着するつもり!?」
サーマス「そうさ」
セージ「そ、そんなの失敗に決まっているでしょう!」
セージ「テイケンの発表を聞いたのなら、魔力増強に耐えうるには生命の幹のレベルアップが必須なのよ!」
セージ「ただ装着させたのなら、受けきれない魔力…過剰状態になって私たちは…ぜ、全員が内部から弾け飛ぶ!」
サーマス「知っているさ」
セージ「……まさか!」
サーマス「君たちの存在は国にとっては不必要なのだよ」
セージ「そういうことね……」
サーマス「闇魔法が簡易的に習得できる可能性があるという研究結果は大いに役立つだろう」
サーマス「この闇魔法の会得者が増えれば、圧倒的な恐怖下に置くことで…絶対的な世界統一はそれで完成だ」
セージ「ふ…ふざけ……!世界戦争になるわよ!!」
サーマス「君の研究だろう。こんな風に使われるとは思ってもなかったかもしれないがね」
セージ「私は、こんな為に研究をしたんじゃない!この国を変えるために、全員が幸せになれる国を作るために!」
サーマス「人の夢は儚いということさ」
セージ「夢じゃない!」
サーマス「む…?」
セージ「夢は見るもの!私は夢なんかじゃなく、絶対の実現の為にやっていた!それは夢とは言わない!」
サーマス「あぁ…まぁ確かになぁ……」
セージ「だから、私は…!」
サーマス「ならば、今日限りでそれは"夢"になるわけだ……ハハハ!」
セージ「サーマス……!」
何を言っても無駄。サーマスは笑いながら、いよいよデスクに上がっていた"腕輪"を持ち出した。すると、テイケンがそれに反応する。
テイケン「そ、それは!」
サーマス「そうだねぇ、テイケン君は知ってるよねぇ……?」
セージ「な、何…?」
テイケン「この実験場で使われていた"雷撃の腕輪"……!」
テイケン「雷属性を保持した腕輪で…装着したモルモットらは全身を槍に貫かれたような激痛を伴うと言って死んでいったレガシー品だ……ッ!!」
セージ「……えっ!そ、その言い方は…ココで闇魔法の研究をしてたような口ぶり…」
サーマス「本当に君は勘が良いね」
セージ「そうなのね…!何故!人体実験を伴う、犠牲を出すバーサクの研究は禁止されていたはず!」
サーマス「世界の中心セントラルと、世界一の技術を持つ氷山帝国が手を組んでいるというのに…対してそんな禁止条約など通るものか」
セージ「な……!」
サーマス「そうなんだよねぇ、そうだそうだ」
サーマス「折角だから、冥土の土産にこれも教えておこうか」
セージ「何よ…!」
サーマス「人権を失う制度を作ったセントラルの指示。それは、この研究のためさ」
セージ「……まさ…か」
サーマス「何をやっても犯罪にならないということは…誘拐だって問題にはならないということさ」
セージ「く、腐ってる…!」
サーマス「良い話だっただろう?さて、そろそろ君たちには消えてもらうとするか」
セージ「全て仕組まれていた…操られていた……。国も、技術力も、人も、金も、私も……」
サーマス「では、まずはテイケン君からやろうか」
暴れるテイケンだったが、自由を奪われた状態で抵抗する意味もなく、テイケンの腕にはレガシーが嵌められる。
テイケン「た、助けてください!嫌だ、まだ死にたくないっ!!」
サーマス「君も野望など持たなければ……美味い一生を終えたものを……」
テイケン「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だぁぁぁっ!!」
サーマス「さよならだ」
腕輪が完全に装着されると、生命体の魔力に反応すると動作する仕組みなのか、腕輪から細い針が現れて"チクリ"と深く突き刺さり血が台の上から滲み落ちた。そして、腕輪から強烈な魔力が体内へと放出され、テイケンの身体に激痛が走る。
テイケン「あ゛……!」
テイケン「ぁぁあああああっ!!!!」
目に見えてテイケンの身体は小さい雷のような電撃が包み込み、それに伴って全身を針で貫かれるような痛みが襲う。過剰摂取された魔力により、テイケンの身体は酷い火傷のように皮が剥がれ始め、ドクドクと心音すら聞こえてくる。やがて、テイケンの身体は過剰な魔力を受けたことによる"金色の魔力"が煙のようにモワモワと上がり、一瞬のうちにそれと共に消え去ったのだった。
セージ「これが、闇魔法の……!」
制研究員「……ッ!!」
サーマス「ん~残念だ。成功すれば闇魔法の会得者にもなれたのだがなぁ?」
セージ「サーマス…!」
サーマス「ま、次は制研究員クンだね」
落ちた腕輪を拾い上げると、次は制研究員の台へと近づいた。
制研究員「今度は…自分ですね……」
サーマス「おや、君は覚悟があったのかな?」
制研究員「今さら…無駄ですね。約束も守らない貴方に対し何を言っても自分の利への行動しかしないでしょう」
サーマス「君もまた、分かっているね。さすがセージ君の一番弟子だよ」
制研究員「…ッ」
サーマス「セージ君、自慢の弟子に言い残すことはないかね?また、セージ君は言い残すことはないかね」
制研究員「……あ、ありません」
セージ「私もあるわけがないでしょう。私の目が甘かった、私の管理が甘かった…それだけよ」
サーマス「随分と冷たいね」
セージ(……制研究員)
制研究員(セージさん……)
セージ(貴方と出会ったのはもう数年前。あの頃はずっとドジで……)
制研究員(なのに、貴方は自分を捨てずに育ててくれた)
セージ(言葉は冷たいけど、きっと分かってくれるわよね。決して私は、貴方を嫌いにはなれない。全部分かってるわ……)
制研究員(はい…。最期までご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした……)
セージ(裏切らねばならない事情があったのは分かってる。でも、私のせいでこんな結果になってゴメンなさい……)
制研究員(恨んではいません。僕のせいでこうなりましたから)
セージ(そう…有難う。私も救われる……)
制研究員(ですが、自分は……貴方に対して……)
サーマス「それでは、さよならだ」
サーマスは彼の腕へとレガシー嵌めると、先ほどと同じように鋭い針が腕へと深く突き刺さる。
制研究員「……せ、セージ様!」
セージ「制研究員…」
制研究員「僕は、貴方のことが……」
セージ「…えぇ」
そして、激痛が訪れる―――。
制研究員「好き…でした……ッ!!」
セージ「うん……」
制研究員「あ…がっ……!!」
セージ「…っ」
耐え難い程の激痛が制研究員の全身を蝕む。だが、彼は決して請うことも涙を流すことも、叫ぶこともなかった。自分が苦しめば、彼女もまた苦しいだろうから。そして、彼女の苦しむ姿は最期に見たくなかったから。
制研究員「……ッ!!」
意識が飛ぶ寸前、制研究員は思わず彼女のほうを向く。その時、彼女は……。
セージ「制研究員……」
笑っていた。笑顔でいてくれた。
制研究員「セージ…様ッ……!」
笑みを見た彼は安心し、その意識は空へと消えた。
それ即ち――…。
サーマス「……気持ちの悪い男め、魔力と散る瞬間に笑っておったわ」
セージ「制研究員……」
サーマス「だが、これであとは君一人だな」
セージ「えぇ、そうなっちゃったわね」
サーマス「怖くはないのか」
セージ「何も」
サーマス「鋼鉄の女だ。君との別れも惜しいものだよ」
セージ「なら、助けてくれてもいいのよ?」
サーマス「そうはいかない」
セージ「そうでしょうね」
サーマスは再び落ちた腕輪を拾いあげると、セージの台へと近づいた。
セージ「ひと思いにどうぞ」
サーマス「本当に残念だ」
セージ「……そう」
サーマス「もっとこの国の為に、働いてほしかったよ」
セージ「早くやりなさい。もう話すこともないわ」
サーマス「それでは、望み通りに」
腕輪をセージへと嵌めようと、その細い腕を掴む。瞬間、セージにはあらゆる思いが駆け巡った。
セージ(あ…これが走馬灯なのかしら……?)
セージ(お父さん、お母さんの顔に、私を拾ってくれたアルクお父さん……)
セージ(研究ばかりの日々で、無駄な一生だったわね……)
セージ(そう、猛竜騎士や魔剣士クン、白姫ちゃんとの出会いは刺激的だったわ……)
セージ(……みんな、無事で旅を続けてくれればいいのだけど)
思い出と意識が混雑している中、ついにその腕輪は彼女の腕へと取り付けられる……寸前。やはり、ここで彼は来た。地下の実験場のドアを蹴破り、彼らが到着したのだ。
猛竜騎士「セージ!」
魔剣士「ババァ、どこだコラァー!」
白姫「セージさーん!!」
騒々しく、彼らがセージの為にいざ馳せ参じたのである。
セージ「……え?」
サーマス「な、何だ!?」
突然の出来事に、サーマスは振り返る。すると、目の前に飛び込んできた光景は彼を"テイケン"と間違えた魔剣士の一撃が丁度、一発降り下ろされるところであり――…。
サーマス「ぴぎっ!!?」
異音を上げたサーマスは、鼻血を出しながら床を滑り、壁へと叩きつけられたのだった。
魔剣士「……あぁぁ!?汚ぇぇっ!こいつ鼻血出し手やがった!エロ男だエロ男!」
違うのだが。
猛竜騎士「……せ、セージ!?」
セージ「猛竜騎士…?」
猛竜騎士「何だこの状況は…。テイケンの言いなりになっていたと思ったら、これは……」
セージ「夢…?」
猛竜騎士「何を言っている!しっかりしろ!」
セージ「……うそ」
猛竜騎士「あの男はもう吹っ飛ばしたぞ。勝手だと思ったが俺らはお前を助けに来たんだ!」
セージ「嘘、嘘よ…。どうしてここが、何故、私を……!」
魔剣士「……あれっ!?」
猛竜騎士「どうした魔剣士!」
魔剣士「俺の吹っ飛ばした奴…テイケンって奴じゃねーぞ!?」
猛竜騎士「な、なに?」
セージ「……猛竜騎士なのね。本当に。夢じゃない、生きてるのよね…?」
猛竜騎士「いま縄を外す。説明してくれ、一体な何がどうなっているのか…」
…………
……
…
―――その頃、地下研究所。
サーマス「さて……」
セージ、テイケン、制研究員の三人はサーマスの電撃により気絶させられ、ジェム・ランカーの数名によって地下研究所へと運ばれていた。全員、身体の自由は奪われた状態で、台の上でベルトに苦しいほど締め付けられていた為にかろうじてしゃべれる程度だった。
セージ「さ、サーマス……!」
サーマス「裸というのはいささか可哀想であるし、服は着せておいた」
セージ「あ、有難うと言えばいいのかしら?」
サーマス「いやお礼はいらないさ」
セージ「なら、この状況を説明してほしいんだけど?」
サーマス「ふむ……」
セージ「何故、私がこんな縛られているのか。ここは"モルモット実験場"のはずでしょう?」
サーマス「フフッ、ならば本題に行こうじゃないか」
セージ「いいわよ……」
サーマス「君の隣にも縛られている制研究員とテイケンも良く聞いてほしい」
サーマスはセージの隣の台に縛られている二人に目を向ける。
制研究員「や、約束が違いますサーマス様!セージ様だけは許してくれると、解放してくれると…!」
テイケン「頼む、助けてください…!僕は、まだ……!」
各々の言葉を口にしているが、セージもサーマスも耳を傾けようとはしなかった。
セージ「……な、何を言っても一度でも裏切った子を許す気はないし、テイケンも無様なものね」
制研究員「せ、セージ様…!セージ様、申し訳……ありませんっ……!」
テイケン「なんで僕が、なんで…!なんで……」
サーマス「セージ君は冷静だな。この状況で落ち着けるとは、流石に強いな」
セージ「フン、今さら暴れたってどうしようもないでしょう」
サーマス「そうだな。何が変わるわけでもない」
セージ「本題というのを早く聞かせて頂戴。ま、大体は察しがつくけどね」
サーマス「このモルモット台に繋がれた君たちは……まぁ、そういうことだな」
セージ「でしょうね。何の実験かしら?」
サーマス「……闇魔法、魔力増強の道具を装着してもらう」
セージ「なっ!?」
サーマス「ククク、顔色が変わったね……」
セージ「レガシー品の類を…私たちに装着するつもり!?」
サーマス「そうさ」
セージ「そ、そんなの失敗に決まっているでしょう!」
セージ「テイケンの発表を聞いたのなら、魔力増強に耐えうるには生命の幹のレベルアップが必須なのよ!」
セージ「ただ装着させたのなら、受けきれない魔力…過剰状態になって私たちは…ぜ、全員が内部から弾け飛ぶ!」
サーマス「知っているさ」
セージ「……まさか!」
サーマス「君たちの存在は国にとっては不必要なのだよ」
セージ「そういうことね……」
サーマス「闇魔法が簡易的に習得できる可能性があるという研究結果は大いに役立つだろう」
サーマス「この闇魔法の会得者が増えれば、圧倒的な恐怖下に置くことで…絶対的な世界統一はそれで完成だ」
セージ「ふ…ふざけ……!世界戦争になるわよ!!」
サーマス「君の研究だろう。こんな風に使われるとは思ってもなかったかもしれないがね」
セージ「私は、こんな為に研究をしたんじゃない!この国を変えるために、全員が幸せになれる国を作るために!」
サーマス「人の夢は儚いということさ」
セージ「夢じゃない!」
サーマス「む…?」
セージ「夢は見るもの!私は夢なんかじゃなく、絶対の実現の為にやっていた!それは夢とは言わない!」
サーマス「あぁ…まぁ確かになぁ……」
セージ「だから、私は…!」
サーマス「ならば、今日限りでそれは"夢"になるわけだ……ハハハ!」
セージ「サーマス……!」
何を言っても無駄。サーマスは笑いながら、いよいよデスクに上がっていた"腕輪"を持ち出した。すると、テイケンがそれに反応する。
テイケン「そ、それは!」
サーマス「そうだねぇ、テイケン君は知ってるよねぇ……?」
セージ「な、何…?」
テイケン「この実験場で使われていた"雷撃の腕輪"……!」
テイケン「雷属性を保持した腕輪で…装着したモルモットらは全身を槍に貫かれたような激痛を伴うと言って死んでいったレガシー品だ……ッ!!」
セージ「……えっ!そ、その言い方は…ココで闇魔法の研究をしてたような口ぶり…」
サーマス「本当に君は勘が良いね」
セージ「そうなのね…!何故!人体実験を伴う、犠牲を出すバーサクの研究は禁止されていたはず!」
サーマス「世界の中心セントラルと、世界一の技術を持つ氷山帝国が手を組んでいるというのに…対してそんな禁止条約など通るものか」
セージ「な……!」
サーマス「そうなんだよねぇ、そうだそうだ」
サーマス「折角だから、冥土の土産にこれも教えておこうか」
セージ「何よ…!」
サーマス「人権を失う制度を作ったセントラルの指示。それは、この研究のためさ」
セージ「……まさ…か」
サーマス「何をやっても犯罪にならないということは…誘拐だって問題にはならないということさ」
セージ「く、腐ってる…!」
サーマス「良い話だっただろう?さて、そろそろ君たちには消えてもらうとするか」
セージ「全て仕組まれていた…操られていた……。国も、技術力も、人も、金も、私も……」
サーマス「では、まずはテイケン君からやろうか」
暴れるテイケンだったが、自由を奪われた状態で抵抗する意味もなく、テイケンの腕にはレガシーが嵌められる。
テイケン「た、助けてください!嫌だ、まだ死にたくないっ!!」
サーマス「君も野望など持たなければ……美味い一生を終えたものを……」
テイケン「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だぁぁぁっ!!」
サーマス「さよならだ」
腕輪が完全に装着されると、生命体の魔力に反応すると動作する仕組みなのか、腕輪から細い針が現れて"チクリ"と深く突き刺さり血が台の上から滲み落ちた。そして、腕輪から強烈な魔力が体内へと放出され、テイケンの身体に激痛が走る。
テイケン「あ゛……!」
テイケン「ぁぁあああああっ!!!!」
目に見えてテイケンの身体は小さい雷のような電撃が包み込み、それに伴って全身を針で貫かれるような痛みが襲う。過剰摂取された魔力により、テイケンの身体は酷い火傷のように皮が剥がれ始め、ドクドクと心音すら聞こえてくる。やがて、テイケンの身体は過剰な魔力を受けたことによる"金色の魔力"が煙のようにモワモワと上がり、一瞬のうちにそれと共に消え去ったのだった。
セージ「これが、闇魔法の……!」
制研究員「……ッ!!」
サーマス「ん~残念だ。成功すれば闇魔法の会得者にもなれたのだがなぁ?」
セージ「サーマス…!」
サーマス「ま、次は制研究員クンだね」
落ちた腕輪を拾い上げると、次は制研究員の台へと近づいた。
制研究員「今度は…自分ですね……」
サーマス「おや、君は覚悟があったのかな?」
制研究員「今さら…無駄ですね。約束も守らない貴方に対し何を言っても自分の利への行動しかしないでしょう」
サーマス「君もまた、分かっているね。さすがセージ君の一番弟子だよ」
制研究員「…ッ」
サーマス「セージ君、自慢の弟子に言い残すことはないかね?また、セージ君は言い残すことはないかね」
制研究員「……あ、ありません」
セージ「私もあるわけがないでしょう。私の目が甘かった、私の管理が甘かった…それだけよ」
サーマス「随分と冷たいね」
セージ(……制研究員)
制研究員(セージさん……)
セージ(貴方と出会ったのはもう数年前。あの頃はずっとドジで……)
制研究員(なのに、貴方は自分を捨てずに育ててくれた)
セージ(言葉は冷たいけど、きっと分かってくれるわよね。決して私は、貴方を嫌いにはなれない。全部分かってるわ……)
制研究員(はい…。最期までご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした……)
セージ(裏切らねばならない事情があったのは分かってる。でも、私のせいでこんな結果になってゴメンなさい……)
制研究員(恨んではいません。僕のせいでこうなりましたから)
セージ(そう…有難う。私も救われる……)
制研究員(ですが、自分は……貴方に対して……)
サーマス「それでは、さよならだ」
サーマスは彼の腕へとレガシー嵌めると、先ほどと同じように鋭い針が腕へと深く突き刺さる。
制研究員「……せ、セージ様!」
セージ「制研究員…」
制研究員「僕は、貴方のことが……」
セージ「…えぇ」
そして、激痛が訪れる―――。
制研究員「好き…でした……ッ!!」
セージ「うん……」
制研究員「あ…がっ……!!」
セージ「…っ」
耐え難い程の激痛が制研究員の全身を蝕む。だが、彼は決して請うことも涙を流すことも、叫ぶこともなかった。自分が苦しめば、彼女もまた苦しいだろうから。そして、彼女の苦しむ姿は最期に見たくなかったから。
制研究員「……ッ!!」
意識が飛ぶ寸前、制研究員は思わず彼女のほうを向く。その時、彼女は……。
セージ「制研究員……」
笑っていた。笑顔でいてくれた。
制研究員「セージ…様ッ……!」
笑みを見た彼は安心し、その意識は空へと消えた。
それ即ち――…。
サーマス「……気持ちの悪い男め、魔力と散る瞬間に笑っておったわ」
セージ「制研究員……」
サーマス「だが、これであとは君一人だな」
セージ「えぇ、そうなっちゃったわね」
サーマス「怖くはないのか」
セージ「何も」
サーマス「鋼鉄の女だ。君との別れも惜しいものだよ」
セージ「なら、助けてくれてもいいのよ?」
サーマス「そうはいかない」
セージ「そうでしょうね」
サーマスは再び落ちた腕輪を拾いあげると、セージの台へと近づいた。
セージ「ひと思いにどうぞ」
サーマス「本当に残念だ」
セージ「……そう」
サーマス「もっとこの国の為に、働いてほしかったよ」
セージ「早くやりなさい。もう話すこともないわ」
サーマス「それでは、望み通りに」
腕輪をセージへと嵌めようと、その細い腕を掴む。瞬間、セージにはあらゆる思いが駆け巡った。
セージ(あ…これが走馬灯なのかしら……?)
セージ(お父さん、お母さんの顔に、私を拾ってくれたアルクお父さん……)
セージ(研究ばかりの日々で、無駄な一生だったわね……)
セージ(そう、猛竜騎士や魔剣士クン、白姫ちゃんとの出会いは刺激的だったわ……)
セージ(……みんな、無事で旅を続けてくれればいいのだけど)
思い出と意識が混雑している中、ついにその腕輪は彼女の腕へと取り付けられる……寸前。やはり、ここで彼は来た。地下の実験場のドアを蹴破り、彼らが到着したのだ。
猛竜騎士「セージ!」
魔剣士「ババァ、どこだコラァー!」
白姫「セージさーん!!」
騒々しく、彼らがセージの為にいざ馳せ参じたのである。
セージ「……え?」
サーマス「な、何だ!?」
突然の出来事に、サーマスは振り返る。すると、目の前に飛び込んできた光景は彼を"テイケン"と間違えた魔剣士の一撃が丁度、一発降り下ろされるところであり――…。
サーマス「ぴぎっ!!?」
異音を上げたサーマスは、鼻血を出しながら床を滑り、壁へと叩きつけられたのだった。
魔剣士「……あぁぁ!?汚ぇぇっ!こいつ鼻血出し手やがった!エロ男だエロ男!」
違うのだが。
猛竜騎士「……せ、セージ!?」
セージ「猛竜騎士…?」
猛竜騎士「何だこの状況は…。テイケンの言いなりになっていたと思ったら、これは……」
セージ「夢…?」
猛竜騎士「何を言っている!しっかりしろ!」
セージ「……うそ」
猛竜騎士「あの男はもう吹っ飛ばしたぞ。勝手だと思ったが俺らはお前を助けに来たんだ!」
セージ「嘘、嘘よ…。どうしてここが、何故、私を……!」
魔剣士「……あれっ!?」
猛竜騎士「どうした魔剣士!」
魔剣士「俺の吹っ飛ばした奴…テイケンって奴じゃねーぞ!?」
猛竜騎士「な、なに?」
セージ「……猛竜騎士なのね。本当に。夢じゃない、生きてるのよね…?」
猛竜騎士「いま縄を外す。説明してくれ、一体な何がどうなっているのか…」
…………
……
…
0
あなたにおすすめの小説
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる