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第七章【氷山帝国】
7-17 波乱の予感
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………………………………………………
―――20分後。
落ち着いたセージは、三人との会話で事の顛末についてをまとめて話をしていた。勿論、白姫がいる以上セントラルに関係のあることには気を付けていたが。
猛竜騎士「……なるほどな」
魔剣士「俺らの決断がもう少し早ければ…制研究員も助けられたハズだったのか……っ」
白姫「ごめんなさい……」
セージ「そ、そんな謝ることじゃないわよ!」
セージ「こんな深入りした話になったら、国外の貴方たちが責任を感じる問題じゃないのよ」
セージ「私だって助かるなんて思ってなかったんだから…ね?」
白姫「でも、でも……」
セージ「いいのよ、白姫ちゃん。貴方がそこまで思い詰めることじゃないんだから」
白姫「…っ」
セージ「フフ、本当に眉唾ものなんだから」
白姫「ふぇ…?」
セージ「私のブローチが、白姫ちゃんの言葉が、全てが偶然になった奇跡」
セージ「こうなったら嫌でも信じちゃうわね。私に課せられた運命とかそういうのを」
白姫「運命…ですか」
セージ「そうよ。私は生きて、この国を変えなさいっていう…そういうこと」
白姫「……きっとそうです!」
セージ「えぇ、そうよね。課題はたくさんあるけど、頑張るわよ♪」
白姫「はいっ♪」
ひと時の安心出来る時間が流れる。ふと笑いあいながら雑談をしていたが、やがて"台に縛りつけていた"あの男が目を覚ました。
サーマス「ん…む……?」
セージ「!」
猛竜騎士「!」
白姫「!」
魔剣士「!」
サーマス「ここは……」
サーマス「…」
サーマス「……って、おい!?なぜ縛られ…!せ、セージ!貴様ら!!」
驚くサーマスに、セージはニタリと笑いながら近づく。
セージ「御機嫌よう、サーマス」
サーマス「セージ!」
セージ「モルモット台に縛られる気分はどう?」
サーマス「ど、どうするつもりだ……!まさか闇魔法の実験を……!」
セージ「殺人者にはなりたくないわ。安心して頂戴」
サーマス「そ、そうか……!」
セージ「私は…だけどね?」
サーマス「何?」
サーマスの視界からセージは避けると、後ろには帯刀を構えた猛竜騎士とオーラを放つ魔剣士の姿があった。
サーマス「ひぇっ!!?」
猛竜騎士「お前の考えは聞いた。自らの肥やしの為に、人権すら与えんとせん害人どもが……!」
魔剣士「俺と同じ境遇の子が生まれるのは、お前らのせいなんだな……」
サーマス「ややや、闇魔法の使い手!!」
魔剣士「消し炭にしてやろうか……」
サーマス「ま、待て!」
魔剣士「どんな言葉を吐こうが、お前を倒すことがこの国の為になるならば……!」
サーマス「お、お前たちをジェム・ランカーに推薦もしてやるっ!!」
サーマス「いずれこの国はセントラルをも喰う国なのだ!!」
サーマス「さすれば、同盟を結んでいる現状だが、今後はお前らの賞金首は剥がれ、自由な暮らしも手に入るはずだっ!」
白姫「…………え?」
魔剣士「……おい、今なんつった?」
猛竜騎士「今…セントラルと同盟と…言ったな……?」
サーマス「あ、あぁ…?」
セージ(あちゃ……)
白姫のことを思い、隠していた事実。セントラルが絶対恐怖による世界統一の為に組んでいた密かな同盟。この国を哀しみのものにした諸悪の根源。
セージ「し、白姫ちゃん!私が説明するわ。貴方のことを思って隠していたんだけどね……」
白姫「……セージさん?」
セージ「この国を裏で操っていたのは"セントラル"なのよ」
白姫「私の国が……っ!?」
セージ「民を切り捨てるやり方、急速な成長、それを実行する資金力、全てはセントラルの指示だったの」
白姫「ま、また…お父様…なんですよね……」
セージ「それは分からないけど、裏でセントラルが主となって動かしていたのは事実だとは思う」
白姫「…ッ」
猛竜騎士「……そうだったのか」
猛竜騎士「この国のことを聞いた時に、ここまで急成長をしたことを不思議に思っていた」
猛竜騎士「政治に疎い連中が、切り捨てるやり方とはいえ…ここまで完璧に国を成長をさせたカラクリはそういうことだったんだな」
魔剣士(オッサン、宿に泊まった時にそんなこと言ってたな……)
魔剣士(馬車の晴れに気温が温かいとか言ったり、熟練になるとこうも洞察力が上がるもんなのか……)
魔剣士(…)
魔剣士(……っていうか、それよりもだ!)
魔剣士は更に猛烈なオーラを放出しながら、剣を抜いてサーマスの首筋へと突きつけた。
サーマス「ひぃっ!?」
魔剣士「……セントラルが絡んだとなれば、もうこれは俺らに関係ねぇ話じゃねぇよなぁ」
猛竜騎士「まぁな…」
白姫「また…お父様たちが……っ」
ここにいるのはセントラルに追われる二人とその師匠。決して関係のない話ではない。むしろ、状況は危険と言えた。
魔剣士「情報を知ってるお前が、セントラルに俺らの存在を伝えない可能性はゼロじゃねーだろ」
サーマス「こ、ここは特級区だ!そんなことはしない!」
魔剣士「それもセントラルが指南したことに、信じられると思うか……?あァ!?」
サーマス「……ッ!!」
魔剣士「もう伝えてたりするんじゃねえのか。だとしたら、生かしておけねぇぞ」
サーマス「つ、伝えていない!!本当だ!!」
魔剣士「証拠は」
サーマス「しょ、証拠!?」
魔剣士「言っていないっつー証拠はあんのか」
サーマス「そ、そんな無茶苦茶な……!」
魔剣士「どのみち斬ればいい」
サーマス「やめろぉぉっ!!本当に、本当にそのことは伝えていない!!」
魔剣士「……そのことだと?」
サーマス「あ、あぁ!先ほど、馬車で情報を伝えるよう人を送ったが、闇魔法の会得方法をまとめた手紙だけだ!!」
セージ「…」
セージ「……何ですって!!?」
魔剣士「てめ……!!」
魔剣士の握る柄に思わず力が入り、サーマスの首筋の皮へと刃がめり込んだ。軽く血が滴り、サーマスはうめき声をあげる。
サーマス「いっ…!ひぃぃぃっ!!」
セージ「戻しなさい!こんな情報をセントラルに伝えれば、闇魔法の為に他の国を暴力による支配をするかもしれないのよ!?」
サーマス「無理だ、無理だぁぁっ!もう港へ着く頃だ、今日の夕方からセントラル中央大地行きの船が出ている!」
セージ「なんてこと……」
魔剣士「クッソがぁぁぁっ!!」
魔剣士は興奮のあまり、その刃をのこぎりのように引き抜くよう力を入れるが、猛竜騎士はそれを寸でのところで制止させた。
猛竜騎士「その手を血で汚すな。まずは落ち着け」
魔剣士「お、オッサン……」
猛竜騎士「これからのことを考えるのが先決だ」
魔剣士「クソッ……!」
事態は最悪。恐らく、この情報を会得したセントラル側は氷山帝国へ研究続行の依頼をするだろう。もしそれを断ったとしても、セントラルは暴力による支配で独自の実験に手を染める可能性があった。
セージ「どう転んでも、セントラルが恐怖統治の為に戦争をけしかけるハズ…!最悪よ……!」
魔剣士「何とかならねぇのかよ!」
セージ「もう闇魔法についての情報は出て行ったから…。それを止めるには奇跡で船が沈むか、手紙が消失するか……」
魔剣士「い、今さらそんな奇跡が!」
起こるわけがない。現時点で手紙を乗せた船は最善たる状態でセントラルへ向けて出発した。
セージ「さ、最悪……!全部私のせい……!」
猛竜騎士「セージ、物事は起こった以上、誰のせいでもないんだ」
セージ「だけど……!」
猛竜騎士「今、君を責めることはない。問題の全ては、この全ては――……」
"セントラルのせいだ"と、言えるわけがない。白姫は王国や父親の責任に対し「構いません」と言っていたが、世界戦争の引き金になり兼ねない人物が、彼女の血縁…実の父親であるなどと口に出来る訳が―――…。
白姫「問題の全ては、お父様のせいです……ッ!!」
誰もが口を閉ざす言葉を、一番辛いであろう彼女がそれを口にした。
魔剣士「し、白姫!」
白姫「もう…許せないよ……」
猛竜騎士「む…?」
セージ「白姫ちゃん…?」
セントラルの名が出てから口を閉ざしていた彼女は、ただ一人考え、覚悟を決めていたのだ。
白姫「最初はお父様に対して辛くあたるみんなを見て、私はちょっと嫌だった……」
白姫「だけど、何かある度にお父様がどれだけみんなに迷惑をかけたのか、凄く分かってきた」
白姫「何よりも、魔剣士のお母さんにも……っ」
魔剣士「白姫……」
白姫「だから、決めたの。私も決断する……」
魔剣士「何を決めたんだ…?」
白姫「お父様は絶対に許せないから!」
魔剣士「お前それは…もしかして親父を完全に敵として……」
白姫「うん。私ね、お父様を変える。それがダメなら、私が国を変える!」
魔剣士「白姫…」
白姫「そうすれば、もう世界が混乱することもないのかなって。凄く難しい話かもしれないけど…私……」
魔剣士「……出来るだろ。やろうと思って出来ねぇことなんかねぇよ!」
白姫「……うんっ!ありがとうっ!」
白姫は魔剣士の胸元へと抱き着き、思わず片手剣を落としたのだが、その両腕はしっかりと白姫を抱きしめていた。
セージ「あらら…妬かせるわねぇ」
猛竜騎士「最近こいつら、人目はばからずこうなんだよな……」
セージ「貴方はどうなの?」
猛竜騎士「む…俺はそういうことはない。というか、もう…な」
セージ「じゃ、私が立候補してもいいのかしら?」
猛竜騎士「ん?」
セージ「言ったでしょう。私はアナタに興味があるって。生きてる喜び、感じさせてくれてもいいのよ」
猛竜騎士「むっ…」
セージは猛竜騎士を引き寄せると、あの時のように口づけをした。今回は以前のように振り払うことはなく、猛竜騎士は表情穏やかなままそれを受け入れたのだった。
サーマス「な、なんじゃこりゃ…!人の前で貴様らは…!」
サーマス「…」
サーマス「……って、マスター様ッ!!」
魔剣士「ん…」
猛竜騎士「ん…」
サーマスの向いた方向、実験所の出入口にはいつの間にか複数の武器を構えた警備員らと、連合長である"ダイヤモンド・マスター"の姿があった。
サーマス「マスター様、お助け下さい!こいつらは賞金首に謀反を起こした最悪の面子、国の敵です!」
マスター「分かっている。侵入者のことも全て聞いた……」
サーマス「マスター様っ!」
マスター「セントラルとの尊厳にも関わる話、聞き流しをするほど私も甘くはない。サーマス、しばし待て…今助けてやろう」
連合長は白いアゴヒゲを伸ばし、それをワシャワシャと触りながら余裕を持って立っているように見えたが、魔剣士らもまた余裕の表情でマスターを睨む。
魔剣士「……ふーん、てめぇが親玉か」
猛竜騎士「諸悪の根っこの一人というわけだな」
白姫「…」
セージ「…」
魔剣士と猛竜騎士は、白姫とセージをその腕で守るように抱きしめながら、離すことはない。
マスター「その状態で何が出来る。警備隊、武器を!攻撃を行え!」
警備員たち「はっ!!」
マスターの言葉に、警備隊は各々の攻撃を"魔法"と"短剣"など、四人目掛けてそれを放つ。だが四人は誰一人臆することはなく、魔剣士はオーラを射出し魔法を無効化し、猛竜騎士は指先で短剣を止めさせたのだった。
警備員たち「なっ!?」
サーマス「そ、そんな……!?」
マスター「噂は聞いていたが、猛竜騎士の実力と闇のオーラもこれほどか……!」
ザワつく氷山帝国勢。対して、魔剣士らは至って冷静だった。
魔剣士「……効かねぇよ」
マスター「こんなあっさりと…バカな……!」
魔剣士「てめぇ、それに俺らに喧嘩売ったな……?」
マスター「裏切り者に侵入者、国の方針はワタシが決めることだ!貴様らは全員敵だ!」
魔剣士「良いんだな…?」
マスター「な、何?」
魔剣士「消し炭にするぞコラ……!」
オーラを強め、辺りにはビリビリという波動が警備隊やセントラルの犬たちを圧倒する。
マスター「……くっ!」
魔剣士「俺はまだしも、白姫に攻撃するとはいい度胸だな……」
マスター「戯言を……!」
魔剣士「何が戯言だ。これは喧嘩を売ったっつーことでいいんだなって聞いてるんだが?」
マスター「何だと!」
魔剣士「今、ここにいる白姫は"セントラル王"を敵にすることを決めたんだ」
マスター「だからどうした!」
魔剣士「お前らがセントラルの犬だというのなら、俺らがここを破壊することに道理はないんじゃねーのかってことだよ」
マスター「ふ、フン!何人の研究員と警備隊、どれだけの人数か分かっているのか!」
魔剣士「……あぁそう?」
魔剣士は指先をマスターの方へと向けると、無詠唱にて火炎弾を発射した。
マスター「ぬぉっ!?」
発射された魔弾は、目にも見えないような速度で彼の頬スレスレを通過。自慢のヒゲを焦がし、後ろの壁で爆発を起こした。
マスター「……!」
警備隊「み、見えなかった……!」
サーマス「何だ今のは……」
魔剣士「俺には魔法の一切は通じねぇ。魔力は無造作。オッサンは物理でも俺が勝てねぇほどに強いんだぜ…悔しいけど」
猛竜騎士「元バウンティーハンターとして、人の命奪うことに容赦はない」
魔剣士の一撃、猛竜騎士の凄み、そのたった二つのことで雰囲気は一変した。部屋は"しん"と静まり返り、マスターに着いて来ていた警備隊員たちは"警備隊長"の「武器を捨てろ」の言葉に一斉に武器を床に投げ捨てたのだった。
マスター「き、貴様ら!」
警備隊長「……マスター様。大変申し訳ないが、自分は部下をみすみす酷い目に合わせるつもりはありません」
マスター「貴様らは"セントラルの兵士"ではないのか!!」
魔剣士(んだと!?)
猛竜騎士(なるほど、攻撃を行う面子が統率のとれた警備隊…どこで雇ったのかと気になっていたが)
セージ(こんな場所まで、既にセントラルは深く潜り込んでいたのね……)
白姫(兵士さんたちだったんだ……)
警備隊長「命令として、氷山帝国の守衛および白姫様を殺しても問わない賞金首であることは認知しております」
警備隊長「しかし、今は部下の命も先決。魔剣士、猛竜騎士、白姫、セージたちに対し全面降伏を……」
マスター「……つ、使えぬばかりでぇぇっ!!」
魔剣士「てめぇ、もう黙っとけ」
マスター「へっ…?」
"…ゴシャッ!"
いつの間にか距離を詰めていた魔剣士の拳が、マスターの頬へと炸裂した。
…………
……
…
―――20分後。
落ち着いたセージは、三人との会話で事の顛末についてをまとめて話をしていた。勿論、白姫がいる以上セントラルに関係のあることには気を付けていたが。
猛竜騎士「……なるほどな」
魔剣士「俺らの決断がもう少し早ければ…制研究員も助けられたハズだったのか……っ」
白姫「ごめんなさい……」
セージ「そ、そんな謝ることじゃないわよ!」
セージ「こんな深入りした話になったら、国外の貴方たちが責任を感じる問題じゃないのよ」
セージ「私だって助かるなんて思ってなかったんだから…ね?」
白姫「でも、でも……」
セージ「いいのよ、白姫ちゃん。貴方がそこまで思い詰めることじゃないんだから」
白姫「…っ」
セージ「フフ、本当に眉唾ものなんだから」
白姫「ふぇ…?」
セージ「私のブローチが、白姫ちゃんの言葉が、全てが偶然になった奇跡」
セージ「こうなったら嫌でも信じちゃうわね。私に課せられた運命とかそういうのを」
白姫「運命…ですか」
セージ「そうよ。私は生きて、この国を変えなさいっていう…そういうこと」
白姫「……きっとそうです!」
セージ「えぇ、そうよね。課題はたくさんあるけど、頑張るわよ♪」
白姫「はいっ♪」
ひと時の安心出来る時間が流れる。ふと笑いあいながら雑談をしていたが、やがて"台に縛りつけていた"あの男が目を覚ました。
サーマス「ん…む……?」
セージ「!」
猛竜騎士「!」
白姫「!」
魔剣士「!」
サーマス「ここは……」
サーマス「…」
サーマス「……って、おい!?なぜ縛られ…!せ、セージ!貴様ら!!」
驚くサーマスに、セージはニタリと笑いながら近づく。
セージ「御機嫌よう、サーマス」
サーマス「セージ!」
セージ「モルモット台に縛られる気分はどう?」
サーマス「ど、どうするつもりだ……!まさか闇魔法の実験を……!」
セージ「殺人者にはなりたくないわ。安心して頂戴」
サーマス「そ、そうか……!」
セージ「私は…だけどね?」
サーマス「何?」
サーマスの視界からセージは避けると、後ろには帯刀を構えた猛竜騎士とオーラを放つ魔剣士の姿があった。
サーマス「ひぇっ!!?」
猛竜騎士「お前の考えは聞いた。自らの肥やしの為に、人権すら与えんとせん害人どもが……!」
魔剣士「俺と同じ境遇の子が生まれるのは、お前らのせいなんだな……」
サーマス「ややや、闇魔法の使い手!!」
魔剣士「消し炭にしてやろうか……」
サーマス「ま、待て!」
魔剣士「どんな言葉を吐こうが、お前を倒すことがこの国の為になるならば……!」
サーマス「お、お前たちをジェム・ランカーに推薦もしてやるっ!!」
サーマス「いずれこの国はセントラルをも喰う国なのだ!!」
サーマス「さすれば、同盟を結んでいる現状だが、今後はお前らの賞金首は剥がれ、自由な暮らしも手に入るはずだっ!」
白姫「…………え?」
魔剣士「……おい、今なんつった?」
猛竜騎士「今…セントラルと同盟と…言ったな……?」
サーマス「あ、あぁ…?」
セージ(あちゃ……)
白姫のことを思い、隠していた事実。セントラルが絶対恐怖による世界統一の為に組んでいた密かな同盟。この国を哀しみのものにした諸悪の根源。
セージ「し、白姫ちゃん!私が説明するわ。貴方のことを思って隠していたんだけどね……」
白姫「……セージさん?」
セージ「この国を裏で操っていたのは"セントラル"なのよ」
白姫「私の国が……っ!?」
セージ「民を切り捨てるやり方、急速な成長、それを実行する資金力、全てはセントラルの指示だったの」
白姫「ま、また…お父様…なんですよね……」
セージ「それは分からないけど、裏でセントラルが主となって動かしていたのは事実だとは思う」
白姫「…ッ」
猛竜騎士「……そうだったのか」
猛竜騎士「この国のことを聞いた時に、ここまで急成長をしたことを不思議に思っていた」
猛竜騎士「政治に疎い連中が、切り捨てるやり方とはいえ…ここまで完璧に国を成長をさせたカラクリはそういうことだったんだな」
魔剣士(オッサン、宿に泊まった時にそんなこと言ってたな……)
魔剣士(馬車の晴れに気温が温かいとか言ったり、熟練になるとこうも洞察力が上がるもんなのか……)
魔剣士(…)
魔剣士(……っていうか、それよりもだ!)
魔剣士は更に猛烈なオーラを放出しながら、剣を抜いてサーマスの首筋へと突きつけた。
サーマス「ひぃっ!?」
魔剣士「……セントラルが絡んだとなれば、もうこれは俺らに関係ねぇ話じゃねぇよなぁ」
猛竜騎士「まぁな…」
白姫「また…お父様たちが……っ」
ここにいるのはセントラルに追われる二人とその師匠。決して関係のない話ではない。むしろ、状況は危険と言えた。
魔剣士「情報を知ってるお前が、セントラルに俺らの存在を伝えない可能性はゼロじゃねーだろ」
サーマス「こ、ここは特級区だ!そんなことはしない!」
魔剣士「それもセントラルが指南したことに、信じられると思うか……?あァ!?」
サーマス「……ッ!!」
魔剣士「もう伝えてたりするんじゃねえのか。だとしたら、生かしておけねぇぞ」
サーマス「つ、伝えていない!!本当だ!!」
魔剣士「証拠は」
サーマス「しょ、証拠!?」
魔剣士「言っていないっつー証拠はあんのか」
サーマス「そ、そんな無茶苦茶な……!」
魔剣士「どのみち斬ればいい」
サーマス「やめろぉぉっ!!本当に、本当にそのことは伝えていない!!」
魔剣士「……そのことだと?」
サーマス「あ、あぁ!先ほど、馬車で情報を伝えるよう人を送ったが、闇魔法の会得方法をまとめた手紙だけだ!!」
セージ「…」
セージ「……何ですって!!?」
魔剣士「てめ……!!」
魔剣士の握る柄に思わず力が入り、サーマスの首筋の皮へと刃がめり込んだ。軽く血が滴り、サーマスはうめき声をあげる。
サーマス「いっ…!ひぃぃぃっ!!」
セージ「戻しなさい!こんな情報をセントラルに伝えれば、闇魔法の為に他の国を暴力による支配をするかもしれないのよ!?」
サーマス「無理だ、無理だぁぁっ!もう港へ着く頃だ、今日の夕方からセントラル中央大地行きの船が出ている!」
セージ「なんてこと……」
魔剣士「クッソがぁぁぁっ!!」
魔剣士は興奮のあまり、その刃をのこぎりのように引き抜くよう力を入れるが、猛竜騎士はそれを寸でのところで制止させた。
猛竜騎士「その手を血で汚すな。まずは落ち着け」
魔剣士「お、オッサン……」
猛竜騎士「これからのことを考えるのが先決だ」
魔剣士「クソッ……!」
事態は最悪。恐らく、この情報を会得したセントラル側は氷山帝国へ研究続行の依頼をするだろう。もしそれを断ったとしても、セントラルは暴力による支配で独自の実験に手を染める可能性があった。
セージ「どう転んでも、セントラルが恐怖統治の為に戦争をけしかけるハズ…!最悪よ……!」
魔剣士「何とかならねぇのかよ!」
セージ「もう闇魔法についての情報は出て行ったから…。それを止めるには奇跡で船が沈むか、手紙が消失するか……」
魔剣士「い、今さらそんな奇跡が!」
起こるわけがない。現時点で手紙を乗せた船は最善たる状態でセントラルへ向けて出発した。
セージ「さ、最悪……!全部私のせい……!」
猛竜騎士「セージ、物事は起こった以上、誰のせいでもないんだ」
セージ「だけど……!」
猛竜騎士「今、君を責めることはない。問題の全ては、この全ては――……」
"セントラルのせいだ"と、言えるわけがない。白姫は王国や父親の責任に対し「構いません」と言っていたが、世界戦争の引き金になり兼ねない人物が、彼女の血縁…実の父親であるなどと口に出来る訳が―――…。
白姫「問題の全ては、お父様のせいです……ッ!!」
誰もが口を閉ざす言葉を、一番辛いであろう彼女がそれを口にした。
魔剣士「し、白姫!」
白姫「もう…許せないよ……」
猛竜騎士「む…?」
セージ「白姫ちゃん…?」
セントラルの名が出てから口を閉ざしていた彼女は、ただ一人考え、覚悟を決めていたのだ。
白姫「最初はお父様に対して辛くあたるみんなを見て、私はちょっと嫌だった……」
白姫「だけど、何かある度にお父様がどれだけみんなに迷惑をかけたのか、凄く分かってきた」
白姫「何よりも、魔剣士のお母さんにも……っ」
魔剣士「白姫……」
白姫「だから、決めたの。私も決断する……」
魔剣士「何を決めたんだ…?」
白姫「お父様は絶対に許せないから!」
魔剣士「お前それは…もしかして親父を完全に敵として……」
白姫「うん。私ね、お父様を変える。それがダメなら、私が国を変える!」
魔剣士「白姫…」
白姫「そうすれば、もう世界が混乱することもないのかなって。凄く難しい話かもしれないけど…私……」
魔剣士「……出来るだろ。やろうと思って出来ねぇことなんかねぇよ!」
白姫「……うんっ!ありがとうっ!」
白姫は魔剣士の胸元へと抱き着き、思わず片手剣を落としたのだが、その両腕はしっかりと白姫を抱きしめていた。
セージ「あらら…妬かせるわねぇ」
猛竜騎士「最近こいつら、人目はばからずこうなんだよな……」
セージ「貴方はどうなの?」
猛竜騎士「む…俺はそういうことはない。というか、もう…な」
セージ「じゃ、私が立候補してもいいのかしら?」
猛竜騎士「ん?」
セージ「言ったでしょう。私はアナタに興味があるって。生きてる喜び、感じさせてくれてもいいのよ」
猛竜騎士「むっ…」
セージは猛竜騎士を引き寄せると、あの時のように口づけをした。今回は以前のように振り払うことはなく、猛竜騎士は表情穏やかなままそれを受け入れたのだった。
サーマス「な、なんじゃこりゃ…!人の前で貴様らは…!」
サーマス「…」
サーマス「……って、マスター様ッ!!」
魔剣士「ん…」
猛竜騎士「ん…」
サーマスの向いた方向、実験所の出入口にはいつの間にか複数の武器を構えた警備員らと、連合長である"ダイヤモンド・マスター"の姿があった。
サーマス「マスター様、お助け下さい!こいつらは賞金首に謀反を起こした最悪の面子、国の敵です!」
マスター「分かっている。侵入者のことも全て聞いた……」
サーマス「マスター様っ!」
マスター「セントラルとの尊厳にも関わる話、聞き流しをするほど私も甘くはない。サーマス、しばし待て…今助けてやろう」
連合長は白いアゴヒゲを伸ばし、それをワシャワシャと触りながら余裕を持って立っているように見えたが、魔剣士らもまた余裕の表情でマスターを睨む。
魔剣士「……ふーん、てめぇが親玉か」
猛竜騎士「諸悪の根っこの一人というわけだな」
白姫「…」
セージ「…」
魔剣士と猛竜騎士は、白姫とセージをその腕で守るように抱きしめながら、離すことはない。
マスター「その状態で何が出来る。警備隊、武器を!攻撃を行え!」
警備員たち「はっ!!」
マスターの言葉に、警備隊は各々の攻撃を"魔法"と"短剣"など、四人目掛けてそれを放つ。だが四人は誰一人臆することはなく、魔剣士はオーラを射出し魔法を無効化し、猛竜騎士は指先で短剣を止めさせたのだった。
警備員たち「なっ!?」
サーマス「そ、そんな……!?」
マスター「噂は聞いていたが、猛竜騎士の実力と闇のオーラもこれほどか……!」
ザワつく氷山帝国勢。対して、魔剣士らは至って冷静だった。
魔剣士「……効かねぇよ」
マスター「こんなあっさりと…バカな……!」
魔剣士「てめぇ、それに俺らに喧嘩売ったな……?」
マスター「裏切り者に侵入者、国の方針はワタシが決めることだ!貴様らは全員敵だ!」
魔剣士「良いんだな…?」
マスター「な、何?」
魔剣士「消し炭にするぞコラ……!」
オーラを強め、辺りにはビリビリという波動が警備隊やセントラルの犬たちを圧倒する。
マスター「……くっ!」
魔剣士「俺はまだしも、白姫に攻撃するとはいい度胸だな……」
マスター「戯言を……!」
魔剣士「何が戯言だ。これは喧嘩を売ったっつーことでいいんだなって聞いてるんだが?」
マスター「何だと!」
魔剣士「今、ここにいる白姫は"セントラル王"を敵にすることを決めたんだ」
マスター「だからどうした!」
魔剣士「お前らがセントラルの犬だというのなら、俺らがここを破壊することに道理はないんじゃねーのかってことだよ」
マスター「ふ、フン!何人の研究員と警備隊、どれだけの人数か分かっているのか!」
魔剣士「……あぁそう?」
魔剣士は指先をマスターの方へと向けると、無詠唱にて火炎弾を発射した。
マスター「ぬぉっ!?」
発射された魔弾は、目にも見えないような速度で彼の頬スレスレを通過。自慢のヒゲを焦がし、後ろの壁で爆発を起こした。
マスター「……!」
警備隊「み、見えなかった……!」
サーマス「何だ今のは……」
魔剣士「俺には魔法の一切は通じねぇ。魔力は無造作。オッサンは物理でも俺が勝てねぇほどに強いんだぜ…悔しいけど」
猛竜騎士「元バウンティーハンターとして、人の命奪うことに容赦はない」
魔剣士の一撃、猛竜騎士の凄み、そのたった二つのことで雰囲気は一変した。部屋は"しん"と静まり返り、マスターに着いて来ていた警備隊員たちは"警備隊長"の「武器を捨てろ」の言葉に一斉に武器を床に投げ捨てたのだった。
マスター「き、貴様ら!」
警備隊長「……マスター様。大変申し訳ないが、自分は部下をみすみす酷い目に合わせるつもりはありません」
マスター「貴様らは"セントラルの兵士"ではないのか!!」
魔剣士(んだと!?)
猛竜騎士(なるほど、攻撃を行う面子が統率のとれた警備隊…どこで雇ったのかと気になっていたが)
セージ(こんな場所まで、既にセントラルは深く潜り込んでいたのね……)
白姫(兵士さんたちだったんだ……)
警備隊長「命令として、氷山帝国の守衛および白姫様を殺しても問わない賞金首であることは認知しております」
警備隊長「しかし、今は部下の命も先決。魔剣士、猛竜騎士、白姫、セージたちに対し全面降伏を……」
マスター「……つ、使えぬばかりでぇぇっ!!」
魔剣士「てめぇ、もう黙っとけ」
マスター「へっ…?」
"…ゴシャッ!"
いつの間にか距離を詰めていた魔剣士の拳が、マスターの頬へと炸裂した。
…………
……
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そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
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※※※
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