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第七章【氷山帝国】
7-15 救出へ
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………………………………………………
―――5分後。
白姫の言葉に、自分勝手な解釈をしていた猛竜騎士は彼女の優しさに気づき、かのを救うべく連合本部へと訪れていた。
宿泊した宿も立派な造りであったが、連合本部は更に上を行く豪勢たる建造であり、雪の結晶をモチーフに装飾された両開きの入り口の扉には屈強な警備員が数名立ち塞がっていた。
魔剣士「外も暗くなってるっつーに、こんな時間まで警備員がいるのかよ!」
白姫「温度も凄く低いのに、顔色一つ変えないのは凄いね……」
猛竜騎士「国の中枢を担うからな」
魔剣士「で、どうするんだ?」
猛竜騎士「入口から警備員に"入れてください"と言って通じる相手ではなさそうだが」
魔剣士「……ってことは」
猛竜騎士「お前らが罪を重ねることはない。ここからは俺の仕事だ」
魔剣士「ん…なんでだ?」
猛竜騎士「……な、なんでだってな…」
魔剣士「俺さ、こういう場面は過去に一回…クソ盗賊のせいで体験してんだよなぁ」
猛竜騎士「ん?」
魔剣士「白姫と会った夜、まんまこういう状況でさ」
剣を抜き、前方へと構える。
猛竜騎士「おい、ちょっ……」
猛竜騎士の「待て」の前に、魔剣士はいち早く飛び出した。氷が張っていた道にやや滑り気味のようだったが、魔剣士は異常なまでの速度で突っ込み、警備員たちが存在に気付いた時にはオーラも展開し剣を振り下ろしたところだった。
警備員たち「な、何……!」
魔剣士「こういう事が起きないって思い過ぎだろ。何のための警備員だよ」
反応が鈍い。魔剣士の剣撃は防御の隙も与えず、警備員たちは一掃された。とはいえ全員が峰打ちであり、気絶を確認したところでオーラの放出を停止。猛竜騎士らを手招きした。
猛竜騎士「お、お前な……」
魔剣士「大丈夫だって、一瞬だっただろ?」
猛竜騎士「暗躍に慣れ過ぎだぞ……」
魔剣士「一応、魔法を受けた時のためにオーラも展開したけど必要なかったな」
猛竜騎士「奇襲過ぎてそんな暇もなかったんだろう」
魔剣士「ヘッヘッヘ、そうかそうか。ま、そんじゃ一人を起こしますかっと……」
猛竜騎士「ん?」
魔剣士は倒れているうちの一人の胸倉を掴み、壁に押しつけると「起きろ!」と声をかけた。
警備員「ん、んむ……」
魔剣士「元気ですかー?」
警備員「お、お前らは!賊かッ!!」
魔剣士「……まぁ賊の手配だけどよ。それより聞きたいことがあるんスよ」
警備員「言うものか!」
当然である。だが、魔剣士も慣れたものだった。
魔剣士「はァッ!」
片手剣に炎を宿し、それを警備員へと近づける。
警備員「ひっ!?な、何っ!!?」
魔剣士「燃やすぞ」
警備員「ち、ちょっと……待ってくれ!ちょっと!」
魔剣士「お前もさ…まさかこんな風に人生の終わりが来るなんて思わなかっただろ?他の倒れてる奴に聴くわ」
警備員「……ッ!」
魔剣士「燃え死ね」
警備員「ち、ちょっと待て!待てぇ!!分かった、分かった!!!」
魔剣士「……ハイ、ドーモ!」
白姫「わ、私の時もこんな感じだったのかな~…?あはは……」
猛竜騎士「魔剣士、お前は闇魔法の使い手だよ…本当に」
…………
……
…
………………………………………………
―――更に10分後。
警備隊により彼女がいるであろうテイケンの研究室(自室)を教えて貰った三人は警備員を気絶させ、それらを茂みに隠したのちにテイケンの元へと向かっていた。
内部はかなり複雑で、一本の中央通路から枝分かれした部屋と小さい通路がいくつも点在し、部屋の場所を分かっていても何度か迷ってしまうほどの構造だった。
だが、深夜近いと言うこともあるおかげか研究員らの姿はなかった。
魔剣士「……オッサン、本当にいいのか?」
猛竜騎士「何がだ?」
魔剣士「アンタがセージを助けるって決断したんだったらそれに従うよ」
魔剣士「だけどさ、俺らが暴れれば、俺らを無関係にしようとしてくれたセージの優しさって無駄になるんじゃねぇかなーって思ったんだが…」
猛竜騎士「それを気づかせてくれたのが白姫の言葉だ。あのまま別れては目覚めも悪かったのは違いないだろう」
魔剣士「ま…確かにな。あの重い空気は俺も嫌だったのは同意だ!」
猛竜騎士「なら……」
魔剣士「あの扉をぶち破るまで!」
猛竜騎士「テイケンの部屋にいてくれることを願うぞ……!」
魔剣士「っしゃ、おらぁっ!!」
テイケンの部屋の扉までたどり着いていた魔剣士らは、容赦なくその扉を蹴り開けた。最悪、その場面に出くわす可能性はゼロではなかったのだが今は助け出すことが全てであった。
猛竜騎士「セージ、いるか!」
魔剣士「セージ!」
白姫「セージさんっ!」
勢いよく部屋へ飛び込んだ三人。すかさず武器を構え、辺りを見渡す。
猛竜騎士「…む」
魔剣士「誰もいねぇ……」
だが、そこには誰の姿もなかった。
白姫「……ここにはいないんでしょうか?」
猛竜騎士「こんな時間に自室にいないのか」
魔剣士「夜中までどっかで研究してんのかね」
猛竜騎士「まさかこんな時間にか?」
魔剣士「研究バカどもだし、なくはねーんじゃねーの」
猛竜騎士「だとすれば、この施設の多さの中で彼女を見つけ出すのは時間的に不可能になってしまうな……」
魔剣士「あ?」
猛竜騎士「アリの巣のようになっている場所で…見つける前に警備員らの目が覚めてしまうだろう」
魔剣士「あ…」
猛竜騎士「ここまでか…」
魔剣士「……マジかよ」
猛竜騎士「これ以上、探す時間はない」
猛竜騎士「警備員らに追われる前にこの国を抜けねばならないだろう」
魔剣士「こ、ここまで来てかよ……」
猛竜騎士「本来なら、逃げるべきが得策だろう……が!」
魔剣士「……お?」
猛竜騎士「諦めるつもりはない。勝手だとしても、彼女が助けを求めているんだと…そう思うからだ」
魔剣士「……おうよ!」
猛竜騎士「白姫、彼女の目はそう訴えていたのか…そうだろう?」
白姫「はいっ…。きっと、絶対そうだと思います……!」
魔剣士「なら、急ごうぜ!」
魔剣士「アリの巣ほどあるのなら、その数だけ…一部屋ずつでも探せばいいんだよ!」
猛竜騎士「ふっ…。お前こそ、忌み嫌ってたような相手にそこまで尽くそうとしているのか」
魔剣士「い、嫌な奴には違いねぇよ!だけど、俺らのことを思って犠牲になって、結果的に白姫も助けてくれたことに違いはないわけだから……」
猛竜騎士「あぁ、そうだな」
魔剣士「行こうぜっ!!」
魔剣士とて、嫌うような相手でも借りは返したく思う。だからいち早く部屋から飛び出さんと行動を取ったのだが、その思いがあってか、その際、偶然といえないような現象を目の当たりにする。
魔剣士「……って、あら?」
猛竜騎士「どうした」
白姫「魔剣士、どうしたの?」
魔剣士「なんか…浮いてるぞ……」
猛竜騎士「何かって…どこにだ?」
魔剣士「ほら、そこだ…」
指さした先はただの壁があるばかりで、魔剣士の言う"何か"という物が浮いている様子はない。
猛竜騎士「いや、何も見えないぞ」
白姫「うん、見えないよ…?」
魔剣士「いやいや、浮いてるだろ。なんかこう、金色のなんつーか…俺の魔力みてぇなやつ……」
猛竜騎士「お前の魔力だと?」
魔剣士「そうだよ、金色のフワフワしてる…輝きが……」
猛竜騎士「……俺にも、白姫にも見えていないようだが」
魔剣士「じゃ、気のせいか?」
猛竜騎士「気のせいということもないと思うが、それがどう浮いているんだ?」
魔剣士「扉から外に…伸びてる……」
猛竜騎士「…外へ?」
魔剣士「いや、間違いじゃない。絶対に浮いてる。俺の魔力だ…外に伸びている!」
部屋の中に浮いた黄金の魔力は、今にも消えそうなくらいに乏しいものだったが、外の通路から長く続いていることは確認出来た。猛竜騎士と白姫の目には何も映ってはいなかったものの、魔剣士が人にない力で何かを感じ取ったことはしんと理解し、先に走り出した魔剣士の後ろを追い、着いていった。
猛竜騎士(魔剣士の言う事が本当なら、まさに"ひとすじの光"といったところか)
猛竜騎士(しかし何故、ここに魔剣士の魔力が浮いているというんだ……?)
猛竜騎士(…)
猛竜騎士(……ダメだ、何も浮かばない。この先にセージがいるとも限らないが、今は頼らない他はないか…)
猛竜騎士が何も浮かばないのは無理はなかった。
実際にそれが見えているわけではなかったし、これは本当に偶然の産物、奇跡的な状況だったからだ。
もしセージならば、自分に見えていなくても魔剣士の台詞でどのような状況かは一発で理解したとは思うが、この現象は一言で現せるほど単純な話じゃあなかった。
―――あの、ブローチである。
猛竜騎士がプレゼントした、セージの義父"錬金師アルク"によって造られたあのブローチは、魔石によって生成されたものだったのだ。
普段から所持していた猛竜騎士により、魔剣士の修行のうちで黄金魔力が自然と蓄積。そこへ先程、この部屋で起きた出来事が重なる。
そう、サーマスによる雷属性の強力な魔法に反応し、ブローチに蓄積され続けていた魔力が放出し、セージの服を一緒に運んだ際に強く浮かぶ黄金魔力が"ひとすじの光"として道を示していたということである。
魔剣士(わからねぇけど、この先に…きっといる気がする……!)
白姫(魔剣士がこうなったら、着いていけばきっと大丈夫だと思うから!)
猛竜騎士(頼むぞ、魔剣士……)
とはいえ、その行動が正解だと分かるわけもなく、誰一人その先にセージがいるという確証はない。しかし根拠がなくとも魔剣士の足は早くなる。また、魔剣士を信じる二人もそれに素直に着いていく。
魔剣士「ハッハッハ!俺が助けてアイツを見下してやっからな!」
猛竜騎士「あいつの優しさだろうと、勝手だろうと、このままでは終われないが故に…きっと分かってくれるはずだ」
白姫「セージさんも分かってくださいます!」
そう…三人はこの時、彼女が"テイケンの手に堕ちている"と認識しているばかりで、現在セージが闇魔法の人体実験対象となっていることは知るわけはなかった。
だが、白姫の機転や魔剣士の力、猛竜騎士の決断の全てをもって命をも救う状況となっていたことは、運命と言っても過言ではないだろう。
魔剣士「さぁ行くぞ!コラァァっ!!」
…………
……
…
―――5分後。
白姫の言葉に、自分勝手な解釈をしていた猛竜騎士は彼女の優しさに気づき、かのを救うべく連合本部へと訪れていた。
宿泊した宿も立派な造りであったが、連合本部は更に上を行く豪勢たる建造であり、雪の結晶をモチーフに装飾された両開きの入り口の扉には屈強な警備員が数名立ち塞がっていた。
魔剣士「外も暗くなってるっつーに、こんな時間まで警備員がいるのかよ!」
白姫「温度も凄く低いのに、顔色一つ変えないのは凄いね……」
猛竜騎士「国の中枢を担うからな」
魔剣士「で、どうするんだ?」
猛竜騎士「入口から警備員に"入れてください"と言って通じる相手ではなさそうだが」
魔剣士「……ってことは」
猛竜騎士「お前らが罪を重ねることはない。ここからは俺の仕事だ」
魔剣士「ん…なんでだ?」
猛竜騎士「……な、なんでだってな…」
魔剣士「俺さ、こういう場面は過去に一回…クソ盗賊のせいで体験してんだよなぁ」
猛竜騎士「ん?」
魔剣士「白姫と会った夜、まんまこういう状況でさ」
剣を抜き、前方へと構える。
猛竜騎士「おい、ちょっ……」
猛竜騎士の「待て」の前に、魔剣士はいち早く飛び出した。氷が張っていた道にやや滑り気味のようだったが、魔剣士は異常なまでの速度で突っ込み、警備員たちが存在に気付いた時にはオーラも展開し剣を振り下ろしたところだった。
警備員たち「な、何……!」
魔剣士「こういう事が起きないって思い過ぎだろ。何のための警備員だよ」
反応が鈍い。魔剣士の剣撃は防御の隙も与えず、警備員たちは一掃された。とはいえ全員が峰打ちであり、気絶を確認したところでオーラの放出を停止。猛竜騎士らを手招きした。
猛竜騎士「お、お前な……」
魔剣士「大丈夫だって、一瞬だっただろ?」
猛竜騎士「暗躍に慣れ過ぎだぞ……」
魔剣士「一応、魔法を受けた時のためにオーラも展開したけど必要なかったな」
猛竜騎士「奇襲過ぎてそんな暇もなかったんだろう」
魔剣士「ヘッヘッヘ、そうかそうか。ま、そんじゃ一人を起こしますかっと……」
猛竜騎士「ん?」
魔剣士は倒れているうちの一人の胸倉を掴み、壁に押しつけると「起きろ!」と声をかけた。
警備員「ん、んむ……」
魔剣士「元気ですかー?」
警備員「お、お前らは!賊かッ!!」
魔剣士「……まぁ賊の手配だけどよ。それより聞きたいことがあるんスよ」
警備員「言うものか!」
当然である。だが、魔剣士も慣れたものだった。
魔剣士「はァッ!」
片手剣に炎を宿し、それを警備員へと近づける。
警備員「ひっ!?な、何っ!!?」
魔剣士「燃やすぞ」
警備員「ち、ちょっと……待ってくれ!ちょっと!」
魔剣士「お前もさ…まさかこんな風に人生の終わりが来るなんて思わなかっただろ?他の倒れてる奴に聴くわ」
警備員「……ッ!」
魔剣士「燃え死ね」
警備員「ち、ちょっと待て!待てぇ!!分かった、分かった!!!」
魔剣士「……ハイ、ドーモ!」
白姫「わ、私の時もこんな感じだったのかな~…?あはは……」
猛竜騎士「魔剣士、お前は闇魔法の使い手だよ…本当に」
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―――更に10分後。
警備隊により彼女がいるであろうテイケンの研究室(自室)を教えて貰った三人は警備員を気絶させ、それらを茂みに隠したのちにテイケンの元へと向かっていた。
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だが、深夜近いと言うこともあるおかげか研究員らの姿はなかった。
魔剣士「……オッサン、本当にいいのか?」
猛竜騎士「何がだ?」
魔剣士「アンタがセージを助けるって決断したんだったらそれに従うよ」
魔剣士「だけどさ、俺らが暴れれば、俺らを無関係にしようとしてくれたセージの優しさって無駄になるんじゃねぇかなーって思ったんだが…」
猛竜騎士「それを気づかせてくれたのが白姫の言葉だ。あのまま別れては目覚めも悪かったのは違いないだろう」
魔剣士「ま…確かにな。あの重い空気は俺も嫌だったのは同意だ!」
猛竜騎士「なら……」
魔剣士「あの扉をぶち破るまで!」
猛竜騎士「テイケンの部屋にいてくれることを願うぞ……!」
魔剣士「っしゃ、おらぁっ!!」
テイケンの部屋の扉までたどり着いていた魔剣士らは、容赦なくその扉を蹴り開けた。最悪、その場面に出くわす可能性はゼロではなかったのだが今は助け出すことが全てであった。
猛竜騎士「セージ、いるか!」
魔剣士「セージ!」
白姫「セージさんっ!」
勢いよく部屋へ飛び込んだ三人。すかさず武器を構え、辺りを見渡す。
猛竜騎士「…む」
魔剣士「誰もいねぇ……」
だが、そこには誰の姿もなかった。
白姫「……ここにはいないんでしょうか?」
猛竜騎士「こんな時間に自室にいないのか」
魔剣士「夜中までどっかで研究してんのかね」
猛竜騎士「まさかこんな時間にか?」
魔剣士「研究バカどもだし、なくはねーんじゃねーの」
猛竜騎士「だとすれば、この施設の多さの中で彼女を見つけ出すのは時間的に不可能になってしまうな……」
魔剣士「あ?」
猛竜騎士「アリの巣のようになっている場所で…見つける前に警備員らの目が覚めてしまうだろう」
魔剣士「あ…」
猛竜騎士「ここまでか…」
魔剣士「……マジかよ」
猛竜騎士「これ以上、探す時間はない」
猛竜騎士「警備員らに追われる前にこの国を抜けねばならないだろう」
魔剣士「こ、ここまで来てかよ……」
猛竜騎士「本来なら、逃げるべきが得策だろう……が!」
魔剣士「……お?」
猛竜騎士「諦めるつもりはない。勝手だとしても、彼女が助けを求めているんだと…そう思うからだ」
魔剣士「……おうよ!」
猛竜騎士「白姫、彼女の目はそう訴えていたのか…そうだろう?」
白姫「はいっ…。きっと、絶対そうだと思います……!」
魔剣士「なら、急ごうぜ!」
魔剣士「アリの巣ほどあるのなら、その数だけ…一部屋ずつでも探せばいいんだよ!」
猛竜騎士「ふっ…。お前こそ、忌み嫌ってたような相手にそこまで尽くそうとしているのか」
魔剣士「い、嫌な奴には違いねぇよ!だけど、俺らのことを思って犠牲になって、結果的に白姫も助けてくれたことに違いはないわけだから……」
猛竜騎士「あぁ、そうだな」
魔剣士「行こうぜっ!!」
魔剣士とて、嫌うような相手でも借りは返したく思う。だからいち早く部屋から飛び出さんと行動を取ったのだが、その思いがあってか、その際、偶然といえないような現象を目の当たりにする。
魔剣士「……って、あら?」
猛竜騎士「どうした」
白姫「魔剣士、どうしたの?」
魔剣士「なんか…浮いてるぞ……」
猛竜騎士「何かって…どこにだ?」
魔剣士「ほら、そこだ…」
指さした先はただの壁があるばかりで、魔剣士の言う"何か"という物が浮いている様子はない。
猛竜騎士「いや、何も見えないぞ」
白姫「うん、見えないよ…?」
魔剣士「いやいや、浮いてるだろ。なんかこう、金色のなんつーか…俺の魔力みてぇなやつ……」
猛竜騎士「お前の魔力だと?」
魔剣士「そうだよ、金色のフワフワしてる…輝きが……」
猛竜騎士「……俺にも、白姫にも見えていないようだが」
魔剣士「じゃ、気のせいか?」
猛竜騎士「気のせいということもないと思うが、それがどう浮いているんだ?」
魔剣士「扉から外に…伸びてる……」
猛竜騎士「…外へ?」
魔剣士「いや、間違いじゃない。絶対に浮いてる。俺の魔力だ…外に伸びている!」
部屋の中に浮いた黄金の魔力は、今にも消えそうなくらいに乏しいものだったが、外の通路から長く続いていることは確認出来た。猛竜騎士と白姫の目には何も映ってはいなかったものの、魔剣士が人にない力で何かを感じ取ったことはしんと理解し、先に走り出した魔剣士の後ろを追い、着いていった。
猛竜騎士(魔剣士の言う事が本当なら、まさに"ひとすじの光"といったところか)
猛竜騎士(しかし何故、ここに魔剣士の魔力が浮いているというんだ……?)
猛竜騎士(…)
猛竜騎士(……ダメだ、何も浮かばない。この先にセージがいるとも限らないが、今は頼らない他はないか…)
猛竜騎士が何も浮かばないのは無理はなかった。
実際にそれが見えているわけではなかったし、これは本当に偶然の産物、奇跡的な状況だったからだ。
もしセージならば、自分に見えていなくても魔剣士の台詞でどのような状況かは一発で理解したとは思うが、この現象は一言で現せるほど単純な話じゃあなかった。
―――あの、ブローチである。
猛竜騎士がプレゼントした、セージの義父"錬金師アルク"によって造られたあのブローチは、魔石によって生成されたものだったのだ。
普段から所持していた猛竜騎士により、魔剣士の修行のうちで黄金魔力が自然と蓄積。そこへ先程、この部屋で起きた出来事が重なる。
そう、サーマスによる雷属性の強力な魔法に反応し、ブローチに蓄積され続けていた魔力が放出し、セージの服を一緒に運んだ際に強く浮かぶ黄金魔力が"ひとすじの光"として道を示していたということである。
魔剣士(わからねぇけど、この先に…きっといる気がする……!)
白姫(魔剣士がこうなったら、着いていけばきっと大丈夫だと思うから!)
猛竜騎士(頼むぞ、魔剣士……)
とはいえ、その行動が正解だと分かるわけもなく、誰一人その先にセージがいるという確証はない。しかし根拠がなくとも魔剣士の足は早くなる。また、魔剣士を信じる二人もそれに素直に着いていく。
魔剣士「ハッハッハ!俺が助けてアイツを見下してやっからな!」
猛竜騎士「あいつの優しさだろうと、勝手だろうと、このままでは終われないが故に…きっと分かってくれるはずだ」
白姫「セージさんも分かってくださいます!」
そう…三人はこの時、彼女が"テイケンの手に堕ちている"と認識しているばかりで、現在セージが闇魔法の人体実験対象となっていることは知るわけはなかった。
だが、白姫の機転や魔剣士の力、猛竜騎士の決断の全てをもって命をも救う状況となっていたことは、運命と言っても過言ではないだろう。
魔剣士「さぁ行くぞ!コラァァっ!!」
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