魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

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第七章【氷山帝国】

7-14 終わり(2)

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………………………………………………
―――同時刻。
連合本部にあるテイケンの自室に呼ばれたセージは、丁度、彼の指示に従って服を脱ぎ終えたところだった。

テイケン「良い恰好だな…セージくん?」
セージ「……有難うございます」
テイケン「そうだよなぁ、もう君は僕に生意気な口は聞けないものな」
セージ「…ッ」
テイケン「君を身も心も、その地位さえも裸に出来たことに、とてつもない快感を覚えているよ」
セージ「そ、そうですか……」
テイケン「……悔しいだろう?」
セージ「そんなことは……」

テイケン「お前は傲慢で、強気で、知識があり、夢があり、忠実な部下がいて、支持をも受け、地位も得た」
テイケン「だが、それはたった数分で砕けた。何もかも、全て…十年以上かけた全てが、わずかな時間で全て砕けた」
テイケン「これ以上の笑い話はない!ハハハハハッ!!」

セージ「……ッ!!」
テイケン「お前は求めすぎた。アポロンの翼、強く求めすぎたが故に翼を削がれたんだよ」
セージ「そ、その通り…です……」
テイケン「お前は今の格好そのままだ。何もかも失った裸のままだよ!」
セージ「…!」
テイケン「お前は義父の教えも、親も、国も、何もかも救えない。嫌いな男に身体を差し出す一生で終わるんだよ」
セージ「テイ…ケン……!」

浴びせられる罵倒は、我慢の限界だった。身体に触れられていなくとも、心は犯されていく。ついに、セージから涙が零れ落ちた。

テイケン「……それだ」

すかさずテイケンは立ち上がると、セージをベッドへと引き寄せる。

セージ「きゃっ…!?」
テイケン「お前は…従うように見せかけて強気のままだった。それを崩していなかっただろう」
セージ「そんなこと…ありません……」
テイケン「いいや、その目は決して屈していなかったことくらいは分からないと思ったのか」
セージ「わ、私は……」
テイケン「しかし、お前は僕の言葉に負けた。涙を流した。心を食われたんだよ」
セージ「そんなこと……!」
テイケン「認めろ、屈したんだということを。その涙は、心の奥底で負けたことを認めたんだよ…!」
セージ「負けたなんて…思って……っ!」
テイケン「負けたんだよお前は!最高だ、セージ……!」

テイケンは彼女を意地になっても堕とすことに、快感を覚えていた。身体ではなく、その姿勢を崩すことに対し、何よりも興奮をしていた。また、セージにとってもテイケンから放たれる矢は深く突き刺さっており、いっそのこと全てを任せられれば楽になるのではないだろうか…そういう感情が芽生えていたに違いない。

セージ(違う…!わ、私は……!決して……!)

そして、勘の良いテイケンは彼女の気持ちを読み取ってしまう。頭が良い。敏感。そのせいで調子に乗り、次の瞬間から言わなくて良かった言葉を、崩しかけていた彼女の心が戻ってしまうような言葉をしゃべってしまったのだ。

テイケン「お前のお蔭で、国はもっとより良いものになるだろうな。世界の覇権も我々の手に堕ちたも同然だということだ……!」
セージ「ど、どういう……こと……?」
テイケン「ククク、お前は勘が良いのか鈍いのか分からない奴だな……」
セージ「何が…どういう……」
テイケン「この国のことだ。お前が憎むべきこの絶対的なランク制に、人権をも破棄させる切り捨てる制度について、政治に疎かったジェム・ランカーのジジイ共に思い浮かぶことか?」
セージ「……どういうこと!」
テイケン「フッ…ククッ……!」

笑いながら腕を彼女の身体へ絡ませると、耳元で舐めるように吐息で語る。

セージ「んくっ…!」
テイケン「俺は聞いたんだ。この国は"セントラル"にコントロールされている」
セージ「……セントラルに!?」
テイケン「大声を出すな」
セージ「で、でもそんなことって!」
テイケン「真実だよ、これは……」
セージ「あっ…!?」

舌を耳に、その手は胸を擦り、凌辱の始まりに感覚を支配して彼の話は続く。

テイケン「考えてみろ。この制度には莫大な資金、適格な指示をできる人間が必要だろう……」
セージ「でも、それ…は……!」
テイケン「セントラルの王の命で、今のジェムランカーたちは自身の絶対地位に甘い汁を得た。もう引き返せないんだよ」
セージ「……!」
テイケン「セージ、君は確か"世界の平和の為に"と闇魔法の研究を発表するつもりだったな?」
セージ「そ、そうよ!私はそのために……!」
テイケン「残念だ。君の研究は、今の時代に闇魔法を蘇らすきっかけになり、ジェム・ランカーたちはその準備を始めているはずだ」
セージ「そんな…!」
テイケン「確かに君は国を救ったさ。闇魔法の研究はセントラルと深く根付き、世界を恐怖支配による絶対なものにするだろう」
セージ「違う……!私は……!」
テイケン「その表情、あぁ……!我慢もできるわけがない!」

国を変えるための研究が、恐慌を招くきっかけとなるのか。制研究員が危惧した世界にするのは、自分のせいで。あらゆる思いは交差し、テイケンが幸悦に浸る状況となっていく。男としての欲が、彼女の全てを貪らんとその全てに手を伸ばす。

セージ「はっ…!はぁっ…!」
テイケン「でも君のおかげで、僕にとっては世界の覇権を握る一歩になったよ……!」
セージ「あ、貴方にとって……どうして……!」
テイケン「政治の知らぬジェムランカーは気づいていないだろうが、セントラルは俺らを良いように使って捨てるはずだ……」
セージ「だ、だから…!?」
テイケン「僕がそうはさせない。それをされるくらいなら、僕が全てを奪う」
セージ「全てを……?」
テイケン「セントラルすら飲みこむ恐怖、この技量を利用して…僕が!いや、俺が世界の覇権を握らせてもらう!」
セージ「テ、テイケンッ!!」

猛竜騎士の言っていた通り、コイツは危険な男―――!
セージは、本当に強い心の持ち主だった。彼の行為寸前で自らの心を呼び覚まし、誰の助けをするわけでもなく、テイケンの頬に渾身の一撃を食らわせてその身体を吹き飛ばした。

テイケン「いぎっ!!?」

"ドシャッ!ゴロゴロッ!"
彼女のストレート・パンチはテイケンが床へと転がる程に強烈なものだった。

セージ「……私、どうかしてた」
テイケン「い、痛い…!お前…こんなことして……!」
セージ「弱気になって、何もかも忘れるところだった。私は強くあることが、私は私なんだから……!」
テイケン「ふざけるな…!お前は俺に服従を誓ったはずだ!」
セージ「却下するわ。やっぱり貴方に触られるくらいなら、ゴブリンのほうが数万倍…数億倍マシよ」
テイケン「貴様ァァァッ!!」
セージ「内務ばかりで、外に出ていない貴方に腕づくでやられると思ってるの!」

彼女は、魔剣士らと馬車で出会った時のように気になった現場へは自らの足で出向くことが多く、身体を動かさないテイケンに対して余裕を持っていた。

セージ「今度は眠ってなさい!!」

拳を握りしめ、向かってくるテイケンに再び一撃を食らわせようと腰に力を入れる。そして、いざ"一撃!"と意気込んだその時、突然、彼女の後方から一瞬で失神させる程の電撃が襲った。

セージ「あ…!きゃああああっ!!?」

急襲のような電撃に、セージは為す術もなく床へと崩れ落ちる。この電撃はてっきりテイケンが仕組んだものかと思ったが、彼は何故か呆気にとられた表情をしていた。

テイケン「……え?」
テイケン「い、今のは…一体……?」

彼が呆けるのも当然である。何故ならばこの電撃は、人知れず部屋へ侵入していた"ジェム・ランカー"のサーマスが後ろから放ったものだったからだ。

テイケン「さ、サーマス様!?」
サーマス「やぁテイケン君…お楽しみのところすまないね」
テイケン「何故ココに…!鍵が掛かっていた筈なのに…」
サーマス「君らの上司が、合鍵を持ち合わせていない理由はないと思うのだが」
テイケン「…!」
サーマス「それに、分かっているだろう?」
テイケン「な、何をでしょうか!」
サーマス「君たちのやり取りは全て聞いた。君が目論むこともね」

テイケン「そ、それは…!」
テイケン(まさか盗聴!?そんな事は…、僕はこの部屋に絶対的に仕掛けが出来ないように……!)

サーマス「その顔は、そんなまさかという感じだな」
テイケン「うっ!」
サーマス「君は知っているはずだよ。今、君に身近でそれに長けた人物がいることを」
テイケン「……何ですって」
サーマス「入りたまえ」

"入れ"の声に、現れたのは制研究員だった。

制研究員「……テイケンさん」

テイケン「せ…制研究員んんんんッ!!」」
テイケン「き、きき…貴様ァァッ!に、二重のマスターを持っていたのかァァッ!!」

制研究員「結局、僕はセージ様を裏切りました。ですが、心にあるのはセージ様…ただ一人でした」
テイケン「貴様貴様貴様貴様ァァッ!!」
制研究員「せめて償いを。僕が出来るのは、セージ様がいつも仰っていた貴方の危険性を上へ伝えることだけでした」
テイケン「ふ、ふざけ…!お前はセントラルが俺らを良いように使うことが、どれだけのことか分かっていないのかぁ!!」
制研究員「それでも貴方の理想、貴方が支配する世界よりは!」
テイケン「戯言を、戯言を……!!」

サーマス「……とにかく、だ」
サーマス「君には罪がある。反逆罪として緊急執行を行うため、着いて来てもらう」

テイケン「い、いえ…!その、実は過ぎた言葉でして、冗談だったんです!そうです、彼女のための冗談です!」
サーマス「そのような問題ではないと分かっているはずだ。真偽はどちらにせよ、その発言をしたことが問題なのだ」
テイケン「しかしですね!」
サーマス「君は非常に良い働きだった。こんなことになって残念だよ」

サーマスは左腕に無詠唱による雷撃魔力を蓄積し、指先をテイケンへと向けた。

テイケン「ち、違うんです!違うんです、本当です!!」
サーマス「さよならだ」

何を言ったところでサーマスは聞く耳はなく、その左腕から発せられた雷撃魔法はテイケンの脳天を直撃し、彼を反発する磁石のように吹き飛ばしたのだった。

サーマス「テイケン君、本当に残念だ……」
制研究員「…」
サーマス「これで仕事は終わりだ。制研究員君、ご苦労だった」
制研究員「いえ…」

サーマス「この二人には、反逆の罪があるということで使い道はある。闇魔法の研究結果である、人体実験対象とさせてもらおう」
サーマス「とはいえ裸のまま運ぶと目に付く…服は着せさせてもらおうか……」

制研究員「……ち、ちょっと待ってください!?」
サーマス「ん?」
制研究員「僕がこの仕事を請け負った際、彼の罪を明らかにすればセージ様は許されると!!」
サーマス「……あぁ、すまない。そうだったな」
制研究員「そうですよね…!」
サーマス「地下研究所で人体実験に付き合って貰うのは……"三人"だったよ」
制研究員「……え?」

…………
……



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