魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

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第七章【氷山帝国】

7-14 終わり(1)

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………………………………………………
―――連合本部、会議室にて。

マスター(称号:連合長・ダイヤモンド)
「それでは、本日の定例をとり行う。進行はいつも通りに頼む」

サーマス(称号:連合長補佐・ルビー)
「承知いたしました」

厳粛なる雰囲気の中、メタルランク以上の称号者たちが顔を揃え、会議は開始された。定例会議は三か月に一度、一年に四回行われるもので、いわゆる研究結果の発表会と言えば分かり易いと思うが、各々の結果を発表し、同時にジェム・ランカーによる昇格試験も兼ねていた。
現在進行役はルビーランクのサーマスが担当しており、以下、サファイア・エメラルド・オパール・アクアマリンといったジェムの称号を持つ研究者らが発表に対し、順次意見をしていく。
ランクの低い順序に結果の発表は行われるのだが、本日は比較的数は少なく、現在の発表者が終わり次第セージが次の発表者であった。

セージ(今日は少ないけど、どれもこれも特筆するような発論ではないはね)
セージ(ジェム・ランカーたちも反応はないし、次の私の最初の発言"闇魔法についての研究結果"と言った時にどんな顔をするか楽しみだわ……)
セージ(最初から最後まで、興味を持たせて……私は昇格する。必ず……!)

意気込むセージに、いよいよ前者の発表が終了。相変わらずジェム・ランカーらは興味を示していないようで、セージは"その白けた面の度胆を抜く"と意気揚々と立ち上がった。

セージ「それでは、私の研究結果を発表致します」

さぁ、ジェム・ランカーの顔を変化を楽しんでやろう。セージは、"闇魔法"の言葉の最初、"やみ"までを口にした。
だが―……しかし。
分かっているだろうが、それを遮るようにあの男が立ち上がったのだった。
「失礼致します。彼女の発表の前に、自分が先に発表をしても……?」
その男、テイケンは自信満々に口を開いた。

セージ「えっ!?」
テイケン「セージ君、失礼。ちょっと僕は時間がないので、先に発表をしたいのだが?」
セージ「わ、私が……!」
テイケン「んっ?」

本当ならば「私の出番でしょう」とそれを却下すべきである。だが、ここは階級が全てであり、それを指示するジェム・ランカーたちの前で上司にあたるテイケンに対しそれを抑えることは出来なかった。

セージ「ど、どうぞ…テイケン様……ッ」
テイケン「有難うセージ君」

"ギリッ…!"
チャンスを…奪われた。思わず歯ぎしりをするセージ。

セージ(こんな状況だから、度胆を抜くような研究を発表すれば上へ行く支持を得られやすい……!)
セージ(でも、私以上に今日の会議で注目を集められる議題はない!)
セージ(どんな発表でも無駄になるんだから、先に譲ってあげるわよ……!)

テイケンが如何なる発言をしても、「私が一番であることは揺らぐことはない筈」だと確信していたセージは、持ってきたレポート用紙を見ながら口を開こうとするテイケンに対しても強気な姿勢は崩さなかった。
―――そう、次の彼の言葉を聞くまでは。

テイケン「僕の研究について発表致します。"闇魔法の研究について"、此方になります……」

セージ「…」
セージ「……えっ!?」

テイケンは、ニヤリと笑みを浮かべてセージの顔を見た。

マスター「……闇魔法の研究だと!?」
サーマス「テイケン君、それは本当か……?」
サファイア「これはまた興味が出るものを……」
オパール「本日一番の議題になりそうだな」

ザワつくジェム・ランカーたち。セージは思わず立ち上がり、テイケンを睨み付ける。

セージ「ま、待ちなさいテイケン!!」
テイケン「……テイケンさんじゃないのかい?」
セージ「ふざけないでっ!それは私の……!どうやって!!」
テイケン「何のことだろうか?」
セージ「な、何のことって……!そ、それは……!」

"それは私の研究よ!"
そう言いかけたところで、進行役のサーマスは「下がりなさい」と制止させた。

セージ「ち、違うんですサーマス様!」
サーマス「何が違うのかね?」
セージ「これは私が行ってきた研究です!今日の発表の為に私は!」
サーマス「……テイケン君、本当かね?」
テイケン「事実無根です。これは僕が長年行ってきたことで、ようやく纏められた結果論であります」
サーマス「セージ君、彼はそう言っているが?」
セージ「ち、違う……!」
サーマス「では、君が先に研究を行った証拠はあるのかね?」
セージ「私が用意してきた研究論文、用紙が彼よりも詳細を記載していると存じます!」
サーマス「テイケン君、反論は?」

テイケン「ククク……」
テイケン「それは、僕からどうにかして盗み取ったものではないという証拠はありますか?」

セージ「そ、それは私の台詞よ!!」
テイケン「では、この研究が君のものであるという絶対的な、確証を与える証拠を出し給え」
セージ「そ、それは……!」
テイケン「ないのかな?」

階級的にも、セージは不利極まりない。このままでは圧し切られるのは明白であるし、階級による絶対性がこれほど憎いと思ったことはない。

セージ(本当は先に出したくなかったけど…四の五の言っていられない!)

本来ならば、ジョーカーとなるはずだった"蓄積させた黄金魔力"の宿った魔石。それは外で待機する制研究員へと手渡しており、どうやってか情報を入手していたテイケンに対しての自分の研究が本物である証拠として突き出そうと制研究員の名を呼んだ。

セージ「制研究員!」
制研究員「は、はいっ……!」

それに反応した彼は、大事そうに会議室へ銀色の箱を抱えて会議室へと入って来た。セージは「これが確たる証拠です」とニヤリとしたが、制研究員…彼が銀の箱を置いたのは彼女にとって予想もしなかった、あり得ない光景であった。

セージ「えっ…!?」

セージは目を丸くしたのは当然である。その銀の箱は、テイケンの前に置かれたのだから。

制研究員「こ、これが"テイケン様"の研究された証拠、黄金の魔力を宿した魔石ですッ……!」
テイケン「有難う、テイケン君」

セージ「…」
セージ「……え?」
セージ「ち、ちょっと待って制研究員…何をふざけてるの?」

制研究員「それでは、これで……」
セージ「ちょっ…!制研究員!!」

肩を掴もうとするセージに、テイケンは「止めてくれ」とそれを止める。

テイケン「僕の研究員に乱暴するのは、いささか事を荒立てたいと思っていいのかな?」
セージ「何を…!あの子はうちの研究員よ!」
テイケン「いいや、うちの研究室に出入りをしていた子だよ?」
セージ「そんな訳ないでしょう!」
テイケン「なら、彼に聞けばいい」
セージ「制研究員…!あなたはうちの研究員でしょう!」

彼の名を呼ぶ。が、しかし。

制研究員「せ、セージ様…。申し訳ありませんが……」
セージ「制研究員……?」
制研究員「貴方の研究所は…。セージ様の研究所は……存じません……ッ!!」
セージ「なん……」
制研究員「私のマスターは…テイケン様ですっ……!」
セージ「どうして……!なんで……!!」
制研究員「も、"申し訳ありません"…!セージ様ッ…!」
セージ「…!!」

セージの言葉は聞き入れず、彼は会議室をあとにしたのだった。

テイケン「うーむ、セージ君は嘘つきでいかんなぁ…?」
セージ「……何かしたのね」
テイケン「何かって、何をできるんだい?」
セージ「ふざけ…るな……。あの子にも何かしたんでしょう……」
テイケン「…さぁね」
セージ「人の研究を奪って、人の研究員を奪って……!そんなに、そこまでやるの……!」

テイケン「……フフ」
テイケン「サーマス様、セージ君はご乱心のようです。彼女は会議に参加できないものと存じますが」

セージ「ふざけるな……。ふざけ……」

テイケン「恐らく、研究に没頭しすぎて疲労を蓄積したのでしょうね……」
"テイケン「僕の研究結果は彼女も知っていたのに、それを自分のものとするなんて思いませんでした」"

何故かセージを庇うテイケン。進行役のサーマスはその言葉に納得し、暴れた罪を不問にするが故に退席することを命じた。
既に気力を失っていたセージは、それに対抗する気持ちもあるわけがなく、素直に会議室から出て行ったのだった。

テイケン(ハ、ハハハッ……!)
テイケン(ククク…!笑いが止まらん!セージ、これで終わりではないぞ……!)

…………
……


………………………………………………
―――30分後。
研究室へと訪れた魔剣士らは、机の上でうなだれているセージを見て話を聞いていた。

白姫「酷い……っ」
魔剣士「さ、さすがに同情するぜセージ……」

セージ「……ッ!!」
セージ「す、全ては仕組まれていたのよ……!全部ッ……!」

猛竜騎士「君の部下ですら裏切ったというのか……」
セージ「あの子が裏切るなんて……そんなこと思いもしなかった……」
猛竜騎士「……そうか」
セージ「どうして…。私はただ、"この国を変えたいだけだった"のに!それなのに!」
猛竜騎士「国を変えるか……」
セージ「あっ…!」
魔剣士「国を変える!?」
白姫「セージさん…!」

思わず本音を零す。

セージ「……今さら、隠すこともないか…」
セージ「そうよ、私はこの国を変えたかった。私がジェム・ランカーになれば国を変えれるはずだったから……!」

猛竜騎士「どう変えたかったんだ」
セージ「この国の制度を、全てを…。人権を失った人々が、幸せになれるように!バカみたいでしょ……」
猛竜騎士「……バカなものか。立派な志を持っていたんだな」
セージ「夢のあとになっちゃったけどね。ア、アハハ……」
猛竜騎士「テイケンという男、許せるものではないな…」
セージ「私は…どうしたら……。最悪よ、最低……」
猛竜騎士「またゼロからというわけにはいかないのか?」
セージ「無茶言わないで…。制研究員までいなくなった今、私は一人で何の気力も…ない……」
猛竜騎士「セージ……」

セージ「神様っていうのが居たのなら、私は見放されたのかもしれないわね……」
セージ「それとも、神様があの男を気に入っていたのか……」
セージ「どちらにしろ、私はもうお終いよ……」

ガックリと肩を落とし、薄らと涙も浮かべる。どう言葉をかけていいものか、猛竜騎士がその肩に手を置こうとした時、研究室の扉が突然開いた。

テイケン「御機嫌よう、セージ」
セージ「テイケン……!」
テイケン「ここが秘密研究所かい。そして、そこにいるのは賞金首の魔剣士クンと白姫ちゃん、猛竜騎士のオッサンだったかな?」
魔剣士「何!」
白姫「賞金首のこと…って……」
猛竜騎士「貴様…!」

魔剣士と猛竜騎士は武器を構える。

テイケン「おぉっと止めてくれ。僕は争う気はないし、君らが秘密厳守だということも理解はしているよ」
猛竜騎士「斬るぞ」
テイケン「そんなことをすれば、君らは本気で逃げ場所がなくなるよ?」
猛竜騎士「お前を信用は出来ないな」
テイケン「"ジェム・ランカー"である僕を切り裂けば、君たちは北方大地全土から追われる立場になるんだがね?」
猛竜騎士「何…!」
セージ「ジェム・ランカーに……!」
テイケン「元々決まっていはいたんだけど、今回の発表で特別に緊急特進さ」
セージ「私の研究を…奪っておいて……!」
テイケン「まぁまぁ。それよりも、君にちょっとした情報を持ってきたんだが…聞いた方がいい」
セージ「何…!あなたの話なんか聞きたくない!」
テイケン「君はこの連合を追放されるそうだ」

セージ「…」
セージ「……え?」

テイケン「いや何、あのあと君がご乱心だったことに対して話が上がってね」
テイケン「やはり許せないと、その階級称号の剥奪と追放が決定したんだよ」

セージ「そんな…ことって……!」

床へ崩れ落ち、目の焦点が合わずに虚ろになる。

テイケン「……まぁ、最後まで話は聞きなよ」
セージ「な、何よ……」
テイケン「君が望むのならという話を出して、ジェム・ランカーである僕がそれを庇ってあげたんだ」
セージ「どういうこと…よ……」
テイケン「僕の研究室の部下になれ。それで今回のことは助けてやる」
セージ「……!」
テイケン「ただし、分かっているだろう?僕の直属というのは、僕の命令に絶対だということだぞ……?」
セージ「ま、まさか…今までのことは……」

テイケン「ん~……」
テイケン「…」
テイケン「……勘違いするなクソ女」

突然声色を変え、顔を近づけて睨み付けるテイケンにセージは思わず悲鳴をあげた。

セージ「ひっ!?」
テイケン「俺は俺に従わない奴を許せないだけだ。絶対階級制度で、俺に従わないお前を許せなかったんだよ」
セージ「そ、それだけで……!私の全てを奪ったって言うの!?」
テイケン「あぁそうさ。フフ…お前はもう丸裸も同然だな……」
セージ「テイケン……ッ!」
テイケン「お前に拒否出来ないと知っている。俺の元へ来い。命令に背けば、すぐに連合から追放をしてやるがな」
セージ「あ…ぐっ…!」
白姫「せ、セージさん!」
猛竜騎士「セージ……!」
魔剣士「セージ!お前のことは嫌いだけどよ、こんな男に従うくらいなら追放されたほうが良いんじゃねぇのか!!」

テイケン「……クク、無駄だ。こいつは負けず嫌いで、俺に従えばいつか見返すチャンスがあるんじゃないかと思っているだろう」
テイケン「その上、コイツには拒否が出来ない絶対的な理由がある。連合を追放されれば、それは絶対に叶わなくなるもんなぁ……?」

セージ「……ッ!」

テイケン「コイツはな、人権のないEランク以下の出身でな。親はこの国の制度のせいで病を患ったのに治療を受けれずに亡くなっているんだ」
テイケン「だから国を見返そうとして、国を変えようとして勉学に励んだんだとさ」
テイケン「何かの為に戦うことがどれだけ強いかを白姫ちゃんに説明していたが、そりゃ自分が体験していたことだからなぁ……」

魔剣士(セージの親も…俺と……一緒……!?)
白姫(だから…セージさんはあのセリフを……)
猛竜騎士(お前は……)

テイケン「何だっけかな、家なしの時にどっかの錬金師のオヤジに引き取られたんだったか?」
テイケン「勉強を教えられてこの階級までようやく来たのに、今さらそれを捨てるなんて出来るハズがないんだよなぁ」
テイケン「国も変えることも、今の義父にも、何もかも背くことになる。人生が無駄になる。だから…俺を断ることはできないんだよなぁ!!?」

嫌味のように、舌を出しながら彼女へと迫るテイケン。セージは戦う意欲などなく、テイケンの話をただ黙って聞くだけだった。
魔剣士と白姫も彼女の境遇に言葉を発せずにいたが、唯一、猛竜騎士はテイケンの胸倉を掴みあげる行動を見せる。

猛竜騎士「貴様、いい加減にしておけよ……!」
テイケン「も、猛竜騎士……」
猛竜騎士「人を愚弄し、弱みに付け込むことが…それ程までに彼女を痛める必要があったのか!」
テイケン「俺はそういう力を手に入れた!これは俺の努力だ!」
猛竜騎士「誰かを不幸せにする力など、それは努力という言葉に値しない!」

テイケン「……ほざいていろ!俺の勝利は絶対だ!」
テイケン「全ては俺へ従う国に、俺が俺の為に、この国はいずれ俺が手に入れるんだよ……!」

猛竜騎士「貴様…!貴様が上へ登ったのは、自分の為だというのか!」
テイケン「それが悪いか…?お前が俺をどうこう出来る立場ではないだろう…?」
猛竜騎士「既に追われている身で、これ以上の罪を重ねても相違ないと俺は思っているぞ……!」
テイケン「なに…!?」

猛竜騎士は帯刀を手にし、テイケンへと突きつけた。

魔剣士「お、オッサン!それはヤベェだろ!」
猛竜騎士「この男は危険だ…!この国を象徴する存在に近い…!」
魔剣士「だ、だが!」
猛竜騎士「この男が政治を握る存在になったというのなら、魔剣士…お前のような子どもが生まれるだけになるんだぞ!」
魔剣士「あ…」
猛竜騎士「セージの為だけではない。国の実情を知っていながら自らの欲の為に溺れる男に、この世から退場してもらわない理由はない!」
魔剣士「俺みたいな…子が……」
猛竜騎士「テイケン、貴様がここに姿を現したのは失敗だったな。俺は国一つを救えるというのなら、この手を汚すこと問わんッ!!」
テイケン「ま、待て!待て猛竜騎士!待てッ!!」
猛竜騎士「聞く耳…持つものか!白姫、向こうを向いていろっ!!」

柄を回転させ、首へと突き入れようとした…瞬間。セージが猛竜騎士を突き飛ばし、彼を庇ったのだった。

セージ「ま、待って猛竜騎士!」
猛竜騎士「何故邪魔を…!」
セージ「邪魔なのは貴方よ!何をしようとしてるの!」
猛竜騎士「何…!」

セージ「私がテイケンに従うだけで、この国から追放されることはないということはラッキーなのよ……?」
セージ「それで反撃のチャンスを伺えるうえに、まだ国を改善できる可能性がある立場に入れるというのなら、これ以上の幸運はないわよ!」

猛竜騎士「だが、お前は…!」
セージ「取引は終わったでしょう」
猛竜騎士「それは…」
セージ「ここからは国という問題、私の問題。貴方たちが干渉するところじゃないの」
猛竜騎士「お前……」
セージ「分かったら、氷山帝国での特級ホテル暮らしは今日で終わり。明日にはすぐに荷物を持って出て行って」
猛竜騎士「…」
セージ「明日の朝一番で特別に耐性馬の貸切を出して、次の町にも向かわせる。これ以上ない待遇よね?」
猛竜騎士「お前はそう望むのか……?」
セージ「……えぇ!私は今、そう決めたから。貴方たちはもう関係がないでしょう?」
猛竜騎士「そうか……」

セージの冷たい口ぶりに、それ見たことかとテイケンは強気に立ち直った。

テイケン「猛竜騎士…!これで分かっただろう、お前が口を出す立場にはない!!」
セージ「テイケン、貴方に私が従えばそれでまだ本部には居られるのでしょう」
テイケン「約束しよう」
セージ「そう。分かった……」
テイケン「……フッ!フフ!」
セージ「私は貴方に従います……。マイ…マスター……」
テイケン「認めよう。セージ、君は今日から僕の部下になり、全てを受け入れる事だ」
セージ「はい……」

テイケン「ク、クククク……!ハハハハッ!」
テイケン「あのセージがついに折れたか!セージ、貴様は飼い殺しだ…。俺の道具になるがいい!」
テイケン「最低の屈辱を味あわせてやるからな……!」

セージ「承知…致しました……ッ」

震えるセージを抱き寄せ、セージは腰へと手を回してニタニタと笑った。しかし、三人が自分のことを睨み付けていることに気づいたようで、表情と口調を戻して注意を促す。

テイケン「……おっと、僕は人前でそういう趣味はないんだった」
テイケン「君たちのことはバラしたりはしないけど、さっさと立ち去りたまえよ?」
テイケン「特に猛竜騎士、お前の顔は虫唾が走る。早く出ていくことだな!」

強く"出ていけと"何度も言うと、スッキリした顔で彼は不快な笑い声を残しながらセージとともに研究室の外へと消えて行った。

魔剣士「……ンだ、あの野郎!」
白姫「セージさんが…!」
猛竜騎士「もう俺たちに立ち入ることはできない。これは連合本部の話だ」
白姫「ですが、それで……」
猛竜騎士「良いとは思わない。だが何をどうすればいい」
白姫「何をって…その……」
猛竜騎士「彼女が望んだ"未来"は俺がやろうとした未来ではなかった…それだけだ」
白姫「そ、そんな……」
猛竜騎士「俺らは部屋に戻るぞ。もう、取引は終わりだからな」
魔剣士「……スッキリしねぇよ、何もかも」

―――その後。
三人は部屋へと戻ったのだが、この終わり方が誰も納得する訳でもなく、夜になっても眠りにつくことは出来なかった。

魔剣士「…」
白姫「…」
猛竜騎士「…」

セージがどれほどの想いで今日に臨んだのか、どれほどの気持ちでテイケンを受け入れたのか。想像を絶するほどに苦しいものだっただろうと、考えるだけで胸が締め付けられた。冷たくなったような空気が重くのしかかる。
だが、固まったようなこの時間を動かしたのは、暗闇の中でボソリと呟いた白姫の一言だった。

「……やっぱり違うと思います」
「セージさんは、猛竜騎士さんや私たちを救うために犠牲になったんですよね……?」

白姫は、布団の中で猛竜騎士に聞こえるように確かにそう口にした。

…………
……


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