【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~

えとう蜜夏

文字の大きさ
42 / 49

四十二 私達の行く先

しおりを挟む
「見てみなさい!    我が商会の調査部門は優秀だったのよ。ふふふ」

 ガブちゃんがやってきて開口一番にそう話してきた。侍女にお茶を用意させながら私はドヤ顔の彼女に自室の客用のソファを薦める。

 隣に座りひそひそと話を始めた。

「――結局どういうことなの?」

「諜報部からの報告によると、当時、私達を出産したのは王都の同じ産院だったみたいね。勿論あなたの侯爵家は超特別室だけどね。うちも特別室だったけれど超特別室は貴族しか使えないみたい」

「――産院が同じだったなら何らかの方法で間違えが無いかったとは言えないわね」

「そうなのよ。実は当時ちょっとしたボヤ騒ぎが調理室であって、逃げる際に混乱して手違いがあったようなのよ。抱き抱えているうちにどちらの子か分からなくなったと当時の看護にあたっていたものから聞いたと報告書に書いてあったのよ」

「じゃあ、ガブちゃんと私というだけでなく他にも取り違えがいるかもしれないの?」

「それがね。当時超特別室には侯爵家と特別室にいたのはうちのミーシャ商会、つまり私だけなの。特別室同士は階は同じなのよね。後は棟が違うから」

「ということは……」

「間違えたとしたなら、やっぱりあなたと私ということなの」

「……じゃあ、その方に証言してもらえば取り違えは世間に証明されることになるのね」

 私とガブちゃんは至近距離で見つめ合った。ガブちゃんは気まずそうに目を逸らせた。

「まあ、その人の証言だけでは証明は難しいかもしれないけど。……でもさあ、今更元に戻ってもね……」

    ガブちゃんがそうぼそりと呟いた。私は驚いてガブちゃんを見つめる。かなり真剣な表情をしていた。

「何と言うかさ、私は結構今の生活が気に入ってるのよね。今回のことで、尚更、家族とか周りの人との関係を見つめ直しすことが出来たというか……。そりゃあ、私も少しは我が儘だったと思うの。でもうちだって、商業ギルドの会長してるし、新興の中でもそれなりだし、周りから散々甘やかされいたんだから、調子にのってたところもあったと思う。だけどあれから、……日本でのことを思い出して商会の手伝いとかして褒められると嬉しくなっちゃって……。ここで頑張りたいなとか思ったの」

    そう言うとガブちゃんは言葉を詰まらせて俯いた。お互い何も言えず黙っているとぱたりぱたりと音がしてガブちゃんの瞳から涙が零れ落ちていた。

「……両親とか、結構好きだったんだなって気がついた。ダメかなあ、このままでいいじゃん……」

    俯いたままでガブちゃんの声が震えていた。私はどうしていいか分からず黙ったままだった。暫くしてから私はガブちゃんの肩に腕を回して抱き締めるようにした。お互いの温もりが心を伝えてくれるような気がした。

「そっか、そうだよね。私も……、ルークお兄様だってあんなに心配してくれると思わなかったし、両親だって……ユリアン様だって……」

    そこまで言うとガブちゃんは鼻を啜りながら言ってしたのよ。

「え?     あなた、まだユリアンを諦めてなかったの?    ああ、昔からユリアン推しだって言ってたわね。何気に今だって、好感度がカンストしてるし……」

    目を真っ赤にしてガブちゃんが顔を上げた。こうして見るとガブちゃんもしおらしくて可愛いとか思えるわね。でも、私と目が合うとにやりと笑ったのよ。年頃のお嬢さんとしてはその笑いはどうなの。

「でも、何れは分かってしまうじゃないの?    それなら早い方が良いと思うの。お互い辛いかも知れないけど」

「……」

     ガブちゃんは私の言葉に黙ったままだった。そして、ぽつりと呟いた。

「あなた。最初見たときから、変わってると思ったけどやっぱり変わっていたわ」

「それ、どういうことなのよ?」

「だって、話しかけたらいきなり肘鉄仕掛けてくるし、男装だし……。本当に最高に変わってる」

    ガブちゃんはそう言うと最後はお腹を押さえて何故だか笑いだしていた。つられて私も笑うしかなかった。

「ガブちゃんの話を聞いて私も考えたの。もうね、取り違えられていても私の人生だもの。私の思うように生きることにする。この世界でもね。だって、まだ人生これからだし」

    私はそう言って立ち上がると誰に言うでもなく宣言してしてみた。

「今はルークお兄様も家に帰っているし、一緒にその報告をしてくれないかしら?」

    私がそう言うとガブちゃんは喜んで立ち上がった。二人でお兄様の、我が家の執務室をノックすると意外と直ぐに入るようにお兄様の声がした。

「お兄様、お忙しいところごめんなさい。今日はミーシャ商会のガブリエラさんがいらしてて、是非お兄様にお話を聞いて頂きたいことがあるの」

 「おお、ミーシャ商会の、先日は大変失礼しましたね。それにその後のミーシャ商会の御尽力には感謝しているばかりです」

「……、ガブちゃん。 何かしたの?」

「あー、あの町の被害支援の募金活動なんかを少しね」

「そうだったの。ありがとう。知らなかった。ガブちゃんって攻略者の事だけかと思ってたわ」

「だからね。その認識いい加減やめてくれない? 私だってそれなりに考えて……」

 ガブちゃんと話しているとこほんとルークお兄様から控えめな咳ばらいが聞こえた。

「申し訳ありません。ルーク様のお忙しい時間を頂いているのに。……それでお話したいことは……」

 そう言うとガブちゃんは調べてきた私達の取り違えについてルークお兄様にお話しした。さっき私に話した内容と同じ。

「……ということで私と侯爵令嬢のアーシアさんが取り違えられていたのです」

 ルークお兄様はドヤ顔のガブちゃんとは対照的に穏やかな表情をなさっていた。無言なその様子にガブちゃんも語尾がやや弱くなっていった。

「……えっと。以上です」

 最後は消え入るようにガブちゃんが締めくくった。ルークお兄様は貴公子然としたままその形の良い口を開いた。

「――それで? と言うか、先日のことを機に私もあなたのことを少しお調べしました」

「え? それってどういうことですか……」

「募金活動以前からもあなたは商会の事を良く考えていらしている。今後のミーシャ商会に必要な方でしょう」

 ルークお兄様の意外な褒め言葉にガブちゃんは顔を真っ赤に染めてしどろもどろになったいた。ルークお兄様、恐るべしだわ。

「取り違えですか……。そんな聡明な方が、うちのアーシアの他愛無い言葉を真に受けるとは残念ですね」

 ――はい? 私のですか?
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

処理中です...