【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~

えとう蜜夏

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四十一 高原での告白

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 ――そう私は庶民だったのよ。今まで騙しててごめんなさい。

 私は自分を見上げてくるジョーゼットの可憐な泣き顔にハートを打ち抜かれていた。自分の言ったことよりジョーゼットの超絶可愛い顔の方に意識がいってしまう。

「え? ミーシャ商会と。取り違えとか、一体何のことなの?」

「ミーシャ商会って知ってる? そこの娘さんがねガブリエラちゃんって言って、その子と私が病院で間違われているの」

「ミーシャ商会は存じています。けれど……。間違えるなんて、そんなこと……」

「そうよね。どうやって間違えたのか、分かっていたらそれを証拠に元に戻れるのよねえ。ガブちゃんともう少し話をしておけば良かった。家に戻ったらまた相談しようかな。任せてなんて言ってたし」

「ガブちゃん?」

 ジョーゼットはそう言うとぴたりと泣き止んでまだ涙目だけど拭ってこちらを見上げてきたの。睫毛が光ってまた神々しい。

「ガブリエラって長いからガブちゃんって呼んでいるの。本人からも了承を得ているのよ」

「……愛称で呼ぶなんてアーシアと随分仲が良いようね」

「えーと。仲が良いとかでなく。そうねえ。今は戦友のような感じね。この前のほら、海の式典のときにうちの別荘に遊びに来てくれて色々話をしたけれど」

「アーシアのお家の別荘に遊びにですって?」

「ええ。泊まってもらったのよ。お友達なんて初めてだし。二人きりでのんびりしてて楽しかった……ちょっとジョーゼットどうしたのよ?」

「アーシアとルーク様がいらっしゃる別荘に、それにアーシアと夏の浜辺で戯れるなんて……。それもアーシアとそ二人だけで……」

 ――そこなの? 喰いつくとこ。違うでしょ?

 ジョーゼットは口に手を押し当ててぶつぶつ繰り返して言っていた。それも可愛いらしいの。

「そんなに海辺が好きならジョーゼットも是非いらして? でも私もいつまで侯爵家にいられるか分からないし。ルークお兄様もいらしたけれどお仕事が忙しくて、もっぱら私とガブちゃんだけで遊んでて……。ああ、そうでは無くて、私はいずれは庶民に戻ることになるからね。王太子様の婚約者候補なんてとんでもないの」

 ――目指せ炬燵でみかん。半裸でアイスなのよ。

「うふふ。まあ、嬉しいわ。アーシア、絶対よ。だけど庶民といっても、ミーシャ商会ほどのところでしたら、その内王宮で取り立てられて準貴族になるかもしれなくてよ? 今も出入りをなさってるし。それに……」

「それに何なの?」

「このことはルーク様には?」

「話したけど全然聞いてくれなかったの。だから、困っているのよ」

 私がそう言うと花が綻ぶようにジョーゼットが微笑んだ。

「ルーク様なら、きっとそうね……」

「だから、早く発覚して欲しいのだけど。ふふ。やっとジョーゼットが笑ってくれたわね」

    私は超絶可愛いジョーゼットの頬に両手を添えるとこつんと額と額を押し当てて呟いた。

「あーあ。さっさと庶民に戻りたい」

「まあ、アーシアったら……」

  何故かジョーゼットは顔を真っ赤にしていた。え? 何かまずかったかしら? でも、額をごっつんこするのは仲直りの定番よね。何故かは分からないけれどジョーゼットを泣かせた訳だしね。

「でも、どうして取り違えなんて思いついたの? そのガブリエラさんとそもそもどうやってお知り合いに?」

「あー、それなんだけど。知り合ったのは学園のお茶会に彼女が招かれていて、話かけられたの。彼女はプリムラ学園の生徒会の一員で招かれていたようね」

 私が病気で死にかけたとき日本でやってた乙女ゲームの『ゆるハー』という世界に良く似ていることを思い出して、彼女がそのゲームのヒロインだったなんて言える訳ない。

「……ガブリエラさんは知ってて、私には言えないのですの?」

 何故だか、さっきまで頬を染めてご機嫌だったジョーゼットが今度は頬を膨らませてご機嫌斜めになったのよ。可愛いけど。

「えっとその……」

「もう、知りませんわ。アーシアったら。お友達と思っていましたのに」

「あ、ごめんなさい。その説明が難しくて」

 私は何か誤解されてると思い低姿勢で謝るとジョーゼットは機嫌を直した。

「いつかお話してくださるわね?」

 小首を傾げて強請られると私は肯くしかなかった。でも絶対頭がおかしくなったと思われるに違いないわよ。この辺もガブちゃんに相談しないと……。

「さあ、そろそろ館に戻らないと随分遠くにきましたもの」

「寒い? 高原だから夕方になると肌寒いわよね」

 肩を震わせたジョーゼットに私は上着を脱いでかけてあげるとジョーゼットの機嫌が直ったので私は安堵した。

「ありがとう。アーシア」

 皆のところに戻ると何故かきゃあきゃあと私達を見て奇声を上げたのよ。何故なの。ドレスは薄くて寒いのよ。肩が出てるじゃない。ほら、私は男性用だしね。上着を脱いだぐらいでは大丈夫なの。女の子は身体は冷やしちゃだめよ。



 それから私達は星を眺めたり、昼間は高原を散策という優雅なこれぞバカンスというのを満喫したの。本当に素晴らしかった。高原では乗馬もしたけど暴走なんてしなかったのよ。でも何故か丘の上でジョーゼットと一緒に乗って朝駆けしちゃったけどね。朝日に輝く高原の風景も素晴らしかった。

「アーシア様、もう一度その白馬の馬に乗って丘の向こうからこちらにいらしてくださいな」

 何度かそんなことを他のご令嬢方から頼まれたので何回かこなしたわ。何なの。一体。





 そうして今度こそ楽しいバカンスを満喫した私は再び侯爵家に戻ってきた。巷では私の代わりにムチ打ち猛獣使いの貴公子として社交界のゴシップ欄で騒がれていたルークお兄様は元気に領地の経営もこなされ、開港した港の運営も今のところ順調だった。

 そして、教えて頂いたことはあの事件は王弟派の陰謀に巻き込まれていたということだった。

「だから、今は陛下とアベル様の方で対応してくださっている。だからといってお前も十分気を付けることだ。例え特殊な技能があってもな」

 にやりと笑うルークお兄様に私は一応心配してくれているのだと不思議に思った。

「ルークお兄様意外です。私など手駒のようにてっきり思われていると……」

「自分が手駒になるほど使えるとでも思っていたのか?」

 これでもかという冷たい視線を受けたけれどにやりと笑うお兄様にもしかして、私のことを少しは大事に思ってくれているような気がしてきた。

「改めて王太子様の婚約者候補のことは私には畏れ多いことです。それに私はこの家の者ではありませんがその時までお兄様のサポートをさせていただきます。それがせめての恩返しです」

 ルークお兄様には怪訝な顔をされてしまったけれど今の私の正直な気持ちを口にしてみた。言わないと伝わらないしね。


 そして、学園に戻る準備をしているとガブちゃんからの訪問を受けたのよ。

    ――取り違えの証拠を見つけたという連絡と共に。
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