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中編
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「は、母上……」
フィリップ殿下が驚いて一歩下がりました。
でもすぐ気を取り直して、わたくしの後ろに現れた王妃様に向かって申し立てました。
「母上、彼女は私の運命の女性であるメアリーに対しての嫌がらせをしていたのです! そのような女と結婚なんてしたくありません! だから彼女との婚約をここで破棄して、メアリーと結婚します!」
「んまあぁぁ! あなたはアマーリエに対して言いがかりを……」
「え? は、母上?」
「本当に何という馬鹿なことを言うのかしら。ごめんなさいね。アマーリエ。不肖の息子が不快な思いをさせたわ」
「王妃様! その人は私を苛めたのですよ! フィルの婚約者だからと女官に命令して花瓶の水を私にかけてドレスを破って笑っていたのです!」
――花瓶に水ですって? ……それにわたくしはそもそも……。
そう思いましたが、何のことやら分からず黙っておりました。だって、王妃様がいらした時点でわたくしには関わりのないのですもの。
「……。女、私はあなたに発言を許してはおりませんよ。不敬な。それこそこの国の王妃に対して無礼です。そもそもアマーリエはフィリップの婚約者ではありません」
「なっ!」
「ええ?!」
メアリーとフィリップ王子が驚いて私をご覧になりました。私は黙って彼らを眺めていました。あまりにも馬鹿らしくて。
「何だと? 夜会ではいつもアマーリエのエスコートをさせられていたじゃないか。だが、小さいときのお茶会で婚約者だと紹介されたはずだ。第一王子、つまり私の……」
「ああ、あの十年ほど前の王宮のお茶会ね。あれは、そう、確かにアマーリエは第一皇子と婚約したわ」
王妃様の言葉にフィリップ王子は勝ち誇ったようにわたくしを睨みました。
「ほらみろ」
「ほらみろじゃありません。あれは我が国の持ち回りで開催した王族を含む近隣諸国の高位貴族の子弟のお見合いパーティです。どことも特に王族はお相手探しには苦労してますからね。あのときアマーリエは私が申し込むより早くお隣のスプリング国の第一皇子に見初められて婚約してしまったのよ。本当に残念だわ。現に一昨日までアマーリエは花嫁修業として隣国でいたのです」
「は?」
そう言ったフィリップ王子はとても間抜けな顔をしています。メアリーも同様です。王子の周囲の取り巻きはまだ状況が飲み込めていません。
「そもそもアマーリエはあなたと従姉妹です。王家としても血が近いので婚約者候補にはなりえません。だけどあなたにはいろいろあって婚約者が決まらなかったのでアマーリエが我が国にいるときはあなたと一緒にいてくれるようにお願いしていました。なんと言っても、アマーリエが適齢期の令嬢の中では一番身分が高いし、何もかも弁えているので安心できますからね」
「はっ、え?」
フィリップ王子は相変わらず状況が呑み込め無いのかまだ間抜けた顔をしています。こうしてみるとやっぱりあの時頑張って良かったと感じました。だってわたくしの皇太子様にはそんな隙はありませんもの。
王妃様は苦い表情をされました。
「そもそも、アマーリエは今回は婚姻の準備のためにこちらに里帰りしたけれど、直ぐまた隣国に帰るのよ。なんたって直に皇太子との結婚式を控えていますからね。あなたも早く結婚式の話を進めたかったわ。まさか、こんなことになるなんて……」
「そんな……、アマーリエと婚約してないとか……。母上」
王妃様はフィリップ王子を残念な子どもを見るような表情を浮かべていました。
「そして、フィリップ。あなたは昨年やっとスノートン国の王女と婚約が内定したところです。こんなことをしでかすなんて……、これがスノートン国に知れたらとんでもない醜聞になるわ」
フィリップ王子とメアリーの顔色が青くなったり赤くなったりしてこんなことでなければ見ものでしたわ。
フィリップ殿下が驚いて一歩下がりました。
でもすぐ気を取り直して、わたくしの後ろに現れた王妃様に向かって申し立てました。
「母上、彼女は私の運命の女性であるメアリーに対しての嫌がらせをしていたのです! そのような女と結婚なんてしたくありません! だから彼女との婚約をここで破棄して、メアリーと結婚します!」
「んまあぁぁ! あなたはアマーリエに対して言いがかりを……」
「え? は、母上?」
「本当に何という馬鹿なことを言うのかしら。ごめんなさいね。アマーリエ。不肖の息子が不快な思いをさせたわ」
「王妃様! その人は私を苛めたのですよ! フィルの婚約者だからと女官に命令して花瓶の水を私にかけてドレスを破って笑っていたのです!」
――花瓶に水ですって? ……それにわたくしはそもそも……。
そう思いましたが、何のことやら分からず黙っておりました。だって、王妃様がいらした時点でわたくしには関わりのないのですもの。
「……。女、私はあなたに発言を許してはおりませんよ。不敬な。それこそこの国の王妃に対して無礼です。そもそもアマーリエはフィリップの婚約者ではありません」
「なっ!」
「ええ?!」
メアリーとフィリップ王子が驚いて私をご覧になりました。私は黙って彼らを眺めていました。あまりにも馬鹿らしくて。
「何だと? 夜会ではいつもアマーリエのエスコートをさせられていたじゃないか。だが、小さいときのお茶会で婚約者だと紹介されたはずだ。第一王子、つまり私の……」
「ああ、あの十年ほど前の王宮のお茶会ね。あれは、そう、確かにアマーリエは第一皇子と婚約したわ」
王妃様の言葉にフィリップ王子は勝ち誇ったようにわたくしを睨みました。
「ほらみろ」
「ほらみろじゃありません。あれは我が国の持ち回りで開催した王族を含む近隣諸国の高位貴族の子弟のお見合いパーティです。どことも特に王族はお相手探しには苦労してますからね。あのときアマーリエは私が申し込むより早くお隣のスプリング国の第一皇子に見初められて婚約してしまったのよ。本当に残念だわ。現に一昨日までアマーリエは花嫁修業として隣国でいたのです」
「は?」
そう言ったフィリップ王子はとても間抜けな顔をしています。メアリーも同様です。王子の周囲の取り巻きはまだ状況が飲み込めていません。
「そもそもアマーリエはあなたと従姉妹です。王家としても血が近いので婚約者候補にはなりえません。だけどあなたにはいろいろあって婚約者が決まらなかったのでアマーリエが我が国にいるときはあなたと一緒にいてくれるようにお願いしていました。なんと言っても、アマーリエが適齢期の令嬢の中では一番身分が高いし、何もかも弁えているので安心できますからね」
「はっ、え?」
フィリップ王子は相変わらず状況が呑み込め無いのかまだ間抜けた顔をしています。こうしてみるとやっぱりあの時頑張って良かったと感じました。だってわたくしの皇太子様にはそんな隙はありませんもの。
王妃様は苦い表情をされました。
「そもそも、アマーリエは今回は婚姻の準備のためにこちらに里帰りしたけれど、直ぐまた隣国に帰るのよ。なんたって直に皇太子との結婚式を控えていますからね。あなたも早く結婚式の話を進めたかったわ。まさか、こんなことになるなんて……」
「そんな……、アマーリエと婚約してないとか……。母上」
王妃様はフィリップ王子を残念な子どもを見るような表情を浮かべていました。
「そして、フィリップ。あなたは昨年やっとスノートン国の王女と婚約が内定したところです。こんなことをしでかすなんて……、これがスノートン国に知れたらとんでもない醜聞になるわ」
フィリップ王子とメアリーの顔色が青くなったり赤くなったりしてこんなことでなければ見ものでしたわ。
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