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後編
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「そんな! 悪役令嬢のアマーリエが隠しキャラのイケメン皇太子様とトゥルーエンドなんて! 認めないぃぃ。彼は私の最推しなのよ! このためにフィルを攻略して逆ハーエンドにしたのにっ」
そんな奇妙なセリフを叫びつつメアリーは私に掴みかかろうとしてきました。
勿論直ぐさま近衛兵に取り押さえられました。メアリーは羽交い絞めにされてもわたくしに掴みかかろうとジタバタ足掻いています。その根性は素晴らしいものですわね。
「逆ハー? メアリー……、君は何を言っているんだ?」
フィリップ王子はメアリーのあまりの豹変にショックを受けているみたいです。周囲の取り巻きの人達からも一体どうしてだと叫び声が上がっていました。
「お黙りなさい。あなた達はどこまで見苦しいのかしら。これが我が国の王太子候補とその側近とはあまりにもお粗末……。王太子の選定は良く考えなければならなくなったわね。そもそもアマーリエが侍女に命令して、あなたに花瓶の水をかけたというなら、どの侍女なのかしら? 高位の公爵令嬢であるアマーリエの命令であっても王宮の侍女達については私が管理責任を負うの。だからその侍女を処罰、指導しなければならないの。さあ、いつどこで誰だったか言いなさい。そして然るべき処罰をいたしましょう」
「あっ、いえ、あの。その……」
「そして、それが嘘であるならば、あなた達は王家に対する偽証罪で厳罰に処さなければなりませんよ」
王妃様の言葉にメアリーは青褪めて黙り込んだ。
「メアリー?」
フィリップ王子は奇妙な声を出して黙り込んで大人しくなったメアリーの顔を覗き込みました。
「まさか、今まで君が言っていたことは嘘だったのか?」
「……」
わたくしはぱらりと扇子を開いて口元を隠しました。
「そもそもフィリップ殿下の申し出はどれも確たる証拠もないものでしたわ。彼女が言い出しただけのことを真に受けるとは……」
「くっ……」
「その女を地下牢へ。騎士団による取り調べをなさい。この騒ぎの責任をとらせましょう」
王妃様の指示を受けてメアリーが引き起こされて連れ出されようとしていた。
「こんなことって……。認めないわ。私はヒロインなのよ! こんなことはおかしいわ。バッドエンドだってこんなことにならないもの!」
「さっきから何を訳が分からないことを言ってるのかしら?」
王妃様は額に手を遣りつつ、深い溜息をつかれました。
「は、母上。私はどうしたら……」
王妃様はおろおろとしているフィリップ王子を見ようともしません。他の誰も王子とは目を合わせようとしませんでした。
あれだけ叫んでいた取り巻きの子息達も王子から距離を取ろうとしています。なんてことでしょうね。あれだけ騒いだのだからフィリップを守らないのかしら。忠誠心のない者達を侍らして、次期為政者としての資格も気概もありませんわね。
あら、わたくしの皇太子様と比べては酷というものでした。
「そうだ。アマーリエと婚約すればいい!」
そう叫ぶと馬、……フィリップ王子はわたくしのほうに駆け寄ろうとしました。ですが――、
「な、邪魔だ! 私はこの国の第一王子だそ! そこを除け!」
私の前には騎士達が守るように立ち塞がったからです。
「アマーリエ様は我がスプリング国のカミル皇太子のご婚約者です。我々は皇太子の命を受けアマーリエ様をお守りしております」
「くっ」
フィリップの更なる馬鹿な行動で会場にいる貴族からは冷たい視線が送られています。
まあ、わたくしはどうでもいいですわ。もうこの国からは出ていくのですから。
小さい頃からフィリップ王子の我儘には振り回されましたが、従兄弟ということで大目に見てあげていたことも分かっていなかったようですわ。
とうとう耐え切れずフィリップ王子は会場から出て行ってしまいました。
王家主催の夜会なのに王子のお一人が不在で大丈夫でしょうか? でも私にとっては大きな利益ですわ。何たって他国の為政者が無能なほどこちらには利益がありますもの。うふふ。あのお茶会のとき、カミル皇太子殿下に思い切って話しかけて良かったわ。
ねえ。メアリー。私も最推しはカミル様でしたのよ。だから、あの顔合わせのお茶会では一番に駆け寄りましたわ。おほほほ。残念でしたわね。
婚約破棄ですか? これが普通ですよね。
了
◇◇◇あとがきめいたもの◇◇◇
お立ち寄りいただき、しおり、気に入り登録をありがとうございました!
この作品もとてもよくある婚約破棄ものです。
ふと実際の王族の悩みに身分にあった結婚相手だったというのをどこかで読んだことがあって書いてみたものです。王族とか高位貴族限定のお茶会という名の婚活を設定として書いてみました。フリードリヒ二世の存命のときも身分が良くても年齢がとか身長がとかいろいろあって中々難しかったようです。エリザベート皇后の歴史物にも描かれていましたし。
どの時代もですが、セレブに限らず結婚相手を探すのは大変かなとしみじみ思っております。現代もいろいろと世間を騒がせていらっしゃいますしね。
マリーアントワネットもマリア・テレジア女帝から輿入れした後もいろいろと心配されていましたしね。どうあっても心配の種は尽きぬということでしょうか。
それではここまでお付き合いいただきありがとうございました。また他の作品もどうぞよろしくお願いいたします。(ぺこり)
そんな奇妙なセリフを叫びつつメアリーは私に掴みかかろうとしてきました。
勿論直ぐさま近衛兵に取り押さえられました。メアリーは羽交い絞めにされてもわたくしに掴みかかろうとジタバタ足掻いています。その根性は素晴らしいものですわね。
「逆ハー? メアリー……、君は何を言っているんだ?」
フィリップ王子はメアリーのあまりの豹変にショックを受けているみたいです。周囲の取り巻きの人達からも一体どうしてだと叫び声が上がっていました。
「お黙りなさい。あなた達はどこまで見苦しいのかしら。これが我が国の王太子候補とその側近とはあまりにもお粗末……。王太子の選定は良く考えなければならなくなったわね。そもそもアマーリエが侍女に命令して、あなたに花瓶の水をかけたというなら、どの侍女なのかしら? 高位の公爵令嬢であるアマーリエの命令であっても王宮の侍女達については私が管理責任を負うの。だからその侍女を処罰、指導しなければならないの。さあ、いつどこで誰だったか言いなさい。そして然るべき処罰をいたしましょう」
「あっ、いえ、あの。その……」
「そして、それが嘘であるならば、あなた達は王家に対する偽証罪で厳罰に処さなければなりませんよ」
王妃様の言葉にメアリーは青褪めて黙り込んだ。
「メアリー?」
フィリップ王子は奇妙な声を出して黙り込んで大人しくなったメアリーの顔を覗き込みました。
「まさか、今まで君が言っていたことは嘘だったのか?」
「……」
わたくしはぱらりと扇子を開いて口元を隠しました。
「そもそもフィリップ殿下の申し出はどれも確たる証拠もないものでしたわ。彼女が言い出しただけのことを真に受けるとは……」
「くっ……」
「その女を地下牢へ。騎士団による取り調べをなさい。この騒ぎの責任をとらせましょう」
王妃様の指示を受けてメアリーが引き起こされて連れ出されようとしていた。
「こんなことって……。認めないわ。私はヒロインなのよ! こんなことはおかしいわ。バッドエンドだってこんなことにならないもの!」
「さっきから何を訳が分からないことを言ってるのかしら?」
王妃様は額に手を遣りつつ、深い溜息をつかれました。
「は、母上。私はどうしたら……」
王妃様はおろおろとしているフィリップ王子を見ようともしません。他の誰も王子とは目を合わせようとしませんでした。
あれだけ叫んでいた取り巻きの子息達も王子から距離を取ろうとしています。なんてことでしょうね。あれだけ騒いだのだからフィリップを守らないのかしら。忠誠心のない者達を侍らして、次期為政者としての資格も気概もありませんわね。
あら、わたくしの皇太子様と比べては酷というものでした。
「そうだ。アマーリエと婚約すればいい!」
そう叫ぶと馬、……フィリップ王子はわたくしのほうに駆け寄ろうとしました。ですが――、
「な、邪魔だ! 私はこの国の第一王子だそ! そこを除け!」
私の前には騎士達が守るように立ち塞がったからです。
「アマーリエ様は我がスプリング国のカミル皇太子のご婚約者です。我々は皇太子の命を受けアマーリエ様をお守りしております」
「くっ」
フィリップの更なる馬鹿な行動で会場にいる貴族からは冷たい視線が送られています。
まあ、わたくしはどうでもいいですわ。もうこの国からは出ていくのですから。
小さい頃からフィリップ王子の我儘には振り回されましたが、従兄弟ということで大目に見てあげていたことも分かっていなかったようですわ。
とうとう耐え切れずフィリップ王子は会場から出て行ってしまいました。
王家主催の夜会なのに王子のお一人が不在で大丈夫でしょうか? でも私にとっては大きな利益ですわ。何たって他国の為政者が無能なほどこちらには利益がありますもの。うふふ。あのお茶会のとき、カミル皇太子殿下に思い切って話しかけて良かったわ。
ねえ。メアリー。私も最推しはカミル様でしたのよ。だから、あの顔合わせのお茶会では一番に駆け寄りましたわ。おほほほ。残念でしたわね。
婚約破棄ですか? これが普通ですよね。
了
◇◇◇あとがきめいたもの◇◇◇
お立ち寄りいただき、しおり、気に入り登録をありがとうございました!
この作品もとてもよくある婚約破棄ものです。
ふと実際の王族の悩みに身分にあった結婚相手だったというのをどこかで読んだことがあって書いてみたものです。王族とか高位貴族限定のお茶会という名の婚活を設定として書いてみました。フリードリヒ二世の存命のときも身分が良くても年齢がとか身長がとかいろいろあって中々難しかったようです。エリザベート皇后の歴史物にも描かれていましたし。
どの時代もですが、セレブに限らず結婚相手を探すのは大変かなとしみじみ思っております。現代もいろいろと世間を騒がせていらっしゃいますしね。
マリーアントワネットもマリア・テレジア女帝から輿入れした後もいろいろと心配されていましたしね。どうあっても心配の種は尽きぬということでしょうか。
それではここまでお付き合いいただきありがとうございました。また他の作品もどうぞよろしくお願いいたします。(ぺこり)
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