1 / 3
前編
しおりを挟む
「公爵令嬢アマーリエ・ソルシェル・スージー・モーランド。お前との婚約を破棄する!」
「あら、フィリップ殿下。わたくしの名前を初めてフルネームで言えましたわね」
「な、何だと! 王太子に対してそのような言葉は不敬にもほどがあるぞ!」
「そうです! フィルに不敬ですよ!」
王家主催の夜会でこの国の第一王子とその取り巻き連中に絡まれました。わたくしは先程ご紹介いただいた公爵令嬢のアマーリエと申します。
わたくしはぱらりと扇子を広げると口元を隠しました。あくまで優雅にです。
「理由をお聞かせていただいてもよろしいですか?」
「ふん。お前は私の運命の女性であるメアリーに対して酷い苛めをしていたのだ。それは高位の貴族令嬢としてあるまじき問題だろう。そんな女は王太子の私に相応しくないのだ。ここでお前のその罪を明らかにしてやろう」
「わたくしが苛めていたというのは殿下の腕にだらしなくしな垂れてかかっている女性のことですか? でも、今までわたくしはその方にはお目にかかったことはございませんわ」
「なっ、そのような嘘を言うとは呆れた奴だな! どこまでお前は傲慢なんだ」
「嘘ではございません」
「お前には私の愛しいメアリーの持ち物を壊したり、階段から突き落としたりという罪状があるんだぞ!」
「怖かったですわ。ぐすっ」
そう言ってメアリーは怯えるようにフィリップ王子にますます擦り寄っていました。フィリップ王子は満更でもないようです。鼻の下が伸びてイケメンが残念ですわね。
「ああ、私の可愛いメアリー。可哀想にこんなに怯えてしまっているではないか。ここで私があいつを断罪してやるから安心するのだ」
フィリップ王子はメアリーの身体を触りながら話かけています。
きゃなんてメアリーが喜んでいました。余所でやってくださいね。
メアリーはピンクブロンドの可愛い方です。そして、どちらかと言うとちっぱ……、色々と幼い感じのお顔と体です。そう言えばお判りかしら?
「そうだ。そうだ! アマーリエには断罪を! 婚約破棄だ! 許すまじ!」
第一王子様達の周囲には数名の側近候補達が取り囲んで足を踏み鳴らしながら声高に叫んでおりました。
そして口々にわたくしに向かって名前を呼び捨てて叫んでおりましたの。わたくしの方が身分は上ですのよ。呆れて周囲の方々も彼らを見ているのがお分かりにならないのかしら?
側近の方々は宰相様の子息様、魔導師長の令息、騎士団長の令息といった面々です。それぞれタイプの違うイケメン達ですがどなたもメアリーの味方のようでした。
正直こうなるのは予測していましたので驚くことのものではありませんけれど。
「持ち物とはどのようなものでしょうか? わたくしは何度も申し上げますが、そちらの女性とは今日が初対面だと思いますわ」
「ほほう。言い逃れようとするのか。こちらには証拠があるのだぞ!」
フィリップ殿下が胸を張って自信満々に言い放った。
「ここに出せ!」
フィリップ王子に指示されて、取り巻き達が出したのはインクで汚れた安物のドレスとか文房具など。
「これはメアリーの物でお前が壊したのだ。覚えがあるだろう!」
勿論見覚えあるはずはありません。メアリーの自作自演なのは間違いないのです。
「いいえ、全く見たことはありませんわ」
「嘘を言うな! ここに動かぬ証拠があるんだ。言い逃れをするな。それに私に会いに王宮に来ていたメアリーに対しての数々の陰湿な嫌がらせもある!」
「そうです! 私はフィルに呼ばれて王宮に会いに行ってたのにそこのアマーリエさんにドレスが安物だと言われインクをかけられたり、花瓶の水をかけられたりしました!」
「……」
わたしは身に覚えのない数々のことを訴えられて呆れて言葉が出ませんでしたわ。それに王子に対して公の場で愛称を呼び捨てするとはどこまで常識がない方なのかしらね。
「ふん。私の婚約者だと権力を振りかざしてみっともないものだな!」
蛆……、いえ、フィリップ殿下が吐き捨てるよう怒鳴っています。
「まああぁ。これは何事です!?」
そこに私を庇うように肩に手に置いて現れたのは――。
「あら、フィリップ殿下。わたくしの名前を初めてフルネームで言えましたわね」
「な、何だと! 王太子に対してそのような言葉は不敬にもほどがあるぞ!」
「そうです! フィルに不敬ですよ!」
王家主催の夜会でこの国の第一王子とその取り巻き連中に絡まれました。わたくしは先程ご紹介いただいた公爵令嬢のアマーリエと申します。
わたくしはぱらりと扇子を広げると口元を隠しました。あくまで優雅にです。
「理由をお聞かせていただいてもよろしいですか?」
「ふん。お前は私の運命の女性であるメアリーに対して酷い苛めをしていたのだ。それは高位の貴族令嬢としてあるまじき問題だろう。そんな女は王太子の私に相応しくないのだ。ここでお前のその罪を明らかにしてやろう」
「わたくしが苛めていたというのは殿下の腕にだらしなくしな垂れてかかっている女性のことですか? でも、今までわたくしはその方にはお目にかかったことはございませんわ」
「なっ、そのような嘘を言うとは呆れた奴だな! どこまでお前は傲慢なんだ」
「嘘ではございません」
「お前には私の愛しいメアリーの持ち物を壊したり、階段から突き落としたりという罪状があるんだぞ!」
「怖かったですわ。ぐすっ」
そう言ってメアリーは怯えるようにフィリップ王子にますます擦り寄っていました。フィリップ王子は満更でもないようです。鼻の下が伸びてイケメンが残念ですわね。
「ああ、私の可愛いメアリー。可哀想にこんなに怯えてしまっているではないか。ここで私があいつを断罪してやるから安心するのだ」
フィリップ王子はメアリーの身体を触りながら話かけています。
きゃなんてメアリーが喜んでいました。余所でやってくださいね。
メアリーはピンクブロンドの可愛い方です。そして、どちらかと言うとちっぱ……、色々と幼い感じのお顔と体です。そう言えばお判りかしら?
「そうだ。そうだ! アマーリエには断罪を! 婚約破棄だ! 許すまじ!」
第一王子様達の周囲には数名の側近候補達が取り囲んで足を踏み鳴らしながら声高に叫んでおりました。
そして口々にわたくしに向かって名前を呼び捨てて叫んでおりましたの。わたくしの方が身分は上ですのよ。呆れて周囲の方々も彼らを見ているのがお分かりにならないのかしら?
側近の方々は宰相様の子息様、魔導師長の令息、騎士団長の令息といった面々です。それぞれタイプの違うイケメン達ですがどなたもメアリーの味方のようでした。
正直こうなるのは予測していましたので驚くことのものではありませんけれど。
「持ち物とはどのようなものでしょうか? わたくしは何度も申し上げますが、そちらの女性とは今日が初対面だと思いますわ」
「ほほう。言い逃れようとするのか。こちらには証拠があるのだぞ!」
フィリップ殿下が胸を張って自信満々に言い放った。
「ここに出せ!」
フィリップ王子に指示されて、取り巻き達が出したのはインクで汚れた安物のドレスとか文房具など。
「これはメアリーの物でお前が壊したのだ。覚えがあるだろう!」
勿論見覚えあるはずはありません。メアリーの自作自演なのは間違いないのです。
「いいえ、全く見たことはありませんわ」
「嘘を言うな! ここに動かぬ証拠があるんだ。言い逃れをするな。それに私に会いに王宮に来ていたメアリーに対しての数々の陰湿な嫌がらせもある!」
「そうです! 私はフィルに呼ばれて王宮に会いに行ってたのにそこのアマーリエさんにドレスが安物だと言われインクをかけられたり、花瓶の水をかけられたりしました!」
「……」
わたしは身に覚えのない数々のことを訴えられて呆れて言葉が出ませんでしたわ。それに王子に対して公の場で愛称を呼び捨てするとはどこまで常識がない方なのかしらね。
「ふん。私の婚約者だと権力を振りかざしてみっともないものだな!」
蛆……、いえ、フィリップ殿下が吐き捨てるよう怒鳴っています。
「まああぁ。これは何事です!?」
そこに私を庇うように肩に手に置いて現れたのは――。
683
あなたにおすすめの小説
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
残念ですが、その婚約破棄宣言は失敗です
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【婚約破棄宣言は、計画的に】
今夜は伯爵令息ブライアンと、同じく伯爵令嬢キャサリンの婚約お披露目パーティーだった。しかしブライアンが伴ってきた女性は、かねてより噂のあった子爵家令嬢だった。ブライアンはキャサリンに声高く婚約破棄宣言を突きつけたのだが、思わぬ事態に直面することになる――
* あっさり終わります
* 他サイトでも投稿中
無表情な奴と結婚したくない?大丈夫ですよ、貴方の前だけですから
榎夜
恋愛
「スカーレット!貴様のような感情のない女となんて結婚できるか!婚約破棄だ!」
......そう言われましても、貴方が私をこうしたのでしょう?
まぁ、別に構いませんわ。
これからは好きにしてもいいですよね。
婚約破棄された悪役令嬢はヒロインの激昂を目の当たりにする
蛇娥リコ
恋愛
婚約発表するはずの舞踏会で婚約破棄された悪役令嬢は冤罪で非難される。
婚約破棄したばかりの目の前で、プロポーズを始めた王子に呆れて立ち去ろうとした悪役令嬢だったが、ヒロインは怒鳴り声を上げた。
一回書いてみたかった悪役令嬢婚約破棄もの。
婚約破棄の途中ですが、特殊清掃代を頂戴します
来住野つかさ
恋愛
学院の卒業式で、ミルティーナ・バース侯爵令嬢は今まさに婚約破棄を宣言されたところだった。長年王子妃教育に取り組んだというのに、婚約者のアルジャーノン王子殿下はあっさりと可愛らしい男爵令嬢と学院内でせっせと不貞を働く。あちこちの場所を汚しながら。······ああ、汚い!
よくある婚約破棄ものです。昨日友人と掃除と幻臭の話をしていてうっかり思いついた、短いお話になります。地の文がない形で書き進めているので、読みにくかったらごめんなさい。
タイトルにある「特殊清掃」は現代でよく使われる意味合いとは違いますので、あらかじめご了承下さい(オプション的、プラス料金的な感じで付けました)。
※この作品は他サイト様にも掲載しています。
とある婚約破棄の事情
あかし瑞穂
恋愛
「そんな卑怯な女を王妃にする訳にはいかない。お前との婚約はこの場で破棄する!」
平民の女子生徒に嫌がらせをしたとして、婚約者のディラン王子から婚約破棄されたディーナ=ラインハルト伯爵令嬢。ここまでは、よくある婚約破棄だけど……?
悪役令嬢婚約破棄のちょっとした裏事情。
*小説家になろうでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる