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アリシアが3年生の冬期、教室移動中の廊下で
「アリシア、あれ見て」
ホリーが二階の窓から階下の庭を指差した。
「え?」
アリシアがホリーが指差す先を見ると、庭の隅にある大きな木の影に人がいるのが見えた。
「パリヤ殿下?」
王族特有の紫色の髪がチラッと見える。
「そう。パリヤ殿下と…もう一人見える?」
「よく見えないけど…この寒いのに殿下は外で何してるのかしら?…ん?あれ?女の子?」
パリヤが動いた拍子に薄いピンクの髪の毛が見えた。パリヤより背が低いらしく、頭の上部と制服のスカートが見えただけだったが、女子生徒のようだ。
「そうなの。最近パリヤ殿下、よくああして特定の女生徒と話してるらしいの」
ホリーが深刻な様子で言う。
「え?」
「話しをしているだけ、みたいではあるんだけど…寒い中いつも二人きりでああして木の影や庭のベンチや…図書室の隅におられたりするから…生徒の間で噂になってるみたい」
男女が二人きりで長い時間を過ごすのは良くない。ましてどちらかに婚約者がいればなおさらだ。
アリシアは女生徒を見ようと目を凝らした。あまりあからさまに様子を窺う所をアリシアも周りに見せる訳にはいかない。
「…よく見えないわね。誰なの?」
「マリーナ・ザイル男爵令嬢みたい」
「貴族なの?貴族令嬢なら上位貴族と噂になるのが自分にとっても相手にとってもいかに不名誉か、知らない訳じゃないでしょう?」
小声で言うアリシアに、ホリーは肩を竦めて見せた。
-----
マリーナの父であるザイル男爵は元々商人で、没落し市井で働いていた男爵令嬢であるマリーナの母と結婚し、男爵となった人物で、両親共貴族のしきたりに詳しくないようだった。
「忠告を…した方が良いのかしら」
寮の部屋でアリシアは頭を抱えた。部屋に来ていたホリーもため息を吐く。
「マリーナ様、あまり学園の貴族令嬢と仲良くなっていないみたい。友人は貴族でない子ばかりで、そういう事を教えてくれそうな身近な人もいないみたい」
「そうなのね。殿下もマリーナ様も隣のクラスだから交友関係はよく知らないから…」
「私もだけど、隣のクラスの『アリシア様親衛隊』のメンバーから聞いたの」
「『アリシア様親衛隊』!?何それ!?」
「あら、当事者は知らないのね。あ、大丈夫よ。隊員は女生徒ばかりだから」
違う方向で衝撃を受けるアリシア。儚げで美しい侯爵令嬢は、王太子の婚約者のため男子生徒は遠巻きにしているが、女子生徒にはとても人気があるらしい。
「えええ~」
「メンバーの子が、『殿下がアリシア様というものがありながら特定の女生徒と親しくしている』『アリシア様が悲しまれるのは嫌だから早く何とかして』って言って来たの。私も実際に目撃したのは今日が初めてだけど」
「親衛隊とか恥ずかしいんですがー」
アリシアが言うとホリーは「まあまあ」と宥める。
「卒業まであと一年とちょっとじゃない。黙認して、黙認」
「…それにしても、殿下に先に話してみるべきかしら」
アリシアはため息を吐いた。
-----
「マリーナ・ザイル男爵令嬢と殿下が特別に仲が良いと噂になっているのをご存知ですか?」
冬期が終わった休暇中、王宮でのパリヤとのお茶会の席で、アリシアは思い切ってその話題を出してみた。
学園ではクラスも違うし、周りに人がいつも居るし、話す機会が見つからなかったのだ。
「マリーナ?」
パリヤは一瞬怪訝な顔をしたが、すぐにアルカイックスマイルを浮かべる。
「マリーナとはクラス委員長と副委員長で話す機会が多いだけだよ」
「そうですか…でも噂になってはマリーナ様の名誉も傷付きますし、気を付けられた方が宜しいかと…」
「そうだね」
アリシアの言葉に被せるようにパリヤは言った。
感情の読めない笑顔のままだ。
これ以上聞く気はないって事ね。
アリシアは小さくため息を吐いた。
そのまま当たり障りない話をして、お茶会を終えてウィルフィス邸に帰る。
「はあ…」
ダイアナに着替えさせてもらいながら思わずため息が漏れた。
「どうなさいました?アリシア様、王宮で何か?」
「うん…パリヤ殿下にお話聞いてもらえなくて…」
「殿下に?何かあったのですか?」
アリシアはダイアナにパリヤとマリーナの事を話した。
「殿下の行動は軽率ですわ!」
ダイアナは少し怒っている。
「殿下に聞いていただけないなら、今度はマリーナ様へお話しなくちゃだけど、ちょっと憂鬱で…」
アリシアはますます大きなため息を吐いた。
その夜、夜中に目が覚めたアリシアはそのまま寝付けなくなり、今日はいい天気だったので星が見えるかと思い、ガウンを羽織ってバルコニーへ出た。
「寒…」
その時庭で何か光ったのが見えた。
暗がりに目を凝らして見ると、誰かが灯りを持って歩いているようだ。
あれは…ジーンとダイアナ…?
アリシアが3年生の冬期、教室移動中の廊下で
「アリシア、あれ見て」
ホリーが二階の窓から階下の庭を指差した。
「え?」
アリシアがホリーが指差す先を見ると、庭の隅にある大きな木の影に人がいるのが見えた。
「パリヤ殿下?」
王族特有の紫色の髪がチラッと見える。
「そう。パリヤ殿下と…もう一人見える?」
「よく見えないけど…この寒いのに殿下は外で何してるのかしら?…ん?あれ?女の子?」
パリヤが動いた拍子に薄いピンクの髪の毛が見えた。パリヤより背が低いらしく、頭の上部と制服のスカートが見えただけだったが、女子生徒のようだ。
「そうなの。最近パリヤ殿下、よくああして特定の女生徒と話してるらしいの」
ホリーが深刻な様子で言う。
「え?」
「話しをしているだけ、みたいではあるんだけど…寒い中いつも二人きりでああして木の影や庭のベンチや…図書室の隅におられたりするから…生徒の間で噂になってるみたい」
男女が二人きりで長い時間を過ごすのは良くない。ましてどちらかに婚約者がいればなおさらだ。
アリシアは女生徒を見ようと目を凝らした。あまりあからさまに様子を窺う所をアリシアも周りに見せる訳にはいかない。
「…よく見えないわね。誰なの?」
「マリーナ・ザイル男爵令嬢みたい」
「貴族なの?貴族令嬢なら上位貴族と噂になるのが自分にとっても相手にとってもいかに不名誉か、知らない訳じゃないでしょう?」
小声で言うアリシアに、ホリーは肩を竦めて見せた。
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マリーナの父であるザイル男爵は元々商人で、没落し市井で働いていた男爵令嬢であるマリーナの母と結婚し、男爵となった人物で、両親共貴族のしきたりに詳しくないようだった。
「忠告を…した方が良いのかしら」
寮の部屋でアリシアは頭を抱えた。部屋に来ていたホリーもため息を吐く。
「マリーナ様、あまり学園の貴族令嬢と仲良くなっていないみたい。友人は貴族でない子ばかりで、そういう事を教えてくれそうな身近な人もいないみたい」
「そうなのね。殿下もマリーナ様も隣のクラスだから交友関係はよく知らないから…」
「私もだけど、隣のクラスの『アリシア様親衛隊』のメンバーから聞いたの」
「『アリシア様親衛隊』!?何それ!?」
「あら、当事者は知らないのね。あ、大丈夫よ。隊員は女生徒ばかりだから」
違う方向で衝撃を受けるアリシア。儚げで美しい侯爵令嬢は、王太子の婚約者のため男子生徒は遠巻きにしているが、女子生徒にはとても人気があるらしい。
「えええ~」
「メンバーの子が、『殿下がアリシア様というものがありながら特定の女生徒と親しくしている』『アリシア様が悲しまれるのは嫌だから早く何とかして』って言って来たの。私も実際に目撃したのは今日が初めてだけど」
「親衛隊とか恥ずかしいんですがー」
アリシアが言うとホリーは「まあまあ」と宥める。
「卒業まであと一年とちょっとじゃない。黙認して、黙認」
「…それにしても、殿下に先に話してみるべきかしら」
アリシアはため息を吐いた。
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「マリーナ・ザイル男爵令嬢と殿下が特別に仲が良いと噂になっているのをご存知ですか?」
冬期が終わった休暇中、王宮でのパリヤとのお茶会の席で、アリシアは思い切ってその話題を出してみた。
学園ではクラスも違うし、周りに人がいつも居るし、話す機会が見つからなかったのだ。
「マリーナ?」
パリヤは一瞬怪訝な顔をしたが、すぐにアルカイックスマイルを浮かべる。
「マリーナとはクラス委員長と副委員長で話す機会が多いだけだよ」
「そうですか…でも噂になってはマリーナ様の名誉も傷付きますし、気を付けられた方が宜しいかと…」
「そうだね」
アリシアの言葉に被せるようにパリヤは言った。
感情の読めない笑顔のままだ。
これ以上聞く気はないって事ね。
アリシアは小さくため息を吐いた。
そのまま当たり障りない話をして、お茶会を終えてウィルフィス邸に帰る。
「はあ…」
ダイアナに着替えさせてもらいながら思わずため息が漏れた。
「どうなさいました?アリシア様、王宮で何か?」
「うん…パリヤ殿下にお話聞いてもらえなくて…」
「殿下に?何かあったのですか?」
アリシアはダイアナにパリヤとマリーナの事を話した。
「殿下の行動は軽率ですわ!」
ダイアナは少し怒っている。
「殿下に聞いていただけないなら、今度はマリーナ様へお話しなくちゃだけど、ちょっと憂鬱で…」
アリシアはますます大きなため息を吐いた。
その夜、夜中に目が覚めたアリシアはそのまま寝付けなくなり、今日はいい天気だったので星が見えるかと思い、ガウンを羽織ってバルコニーへ出た。
「寒…」
その時庭で何か光ったのが見えた。
暗がりに目を凝らして見ると、誰かが灯りを持って歩いているようだ。
あれは…ジーンとダイアナ…?
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