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アリシアが目を覚ますとジーンが心配そうに覗き込んでいた。
「痛っ!」
起き上がろうとして、右腕に痛みが走る。
「腕に打撲と裂傷がある。他に怪我はないようだが…大丈夫か?」
「うん…」
「濡れたせいと傷のせいで熱が出てるんだ。もう少し眠った方が良い」
ジーンがアリシアの頭を撫でる。
「…ジーン」
「ん?」
ジーンが優しい表情でアリシアを見る。
「…ジーンは、私の婚約者の役が終わったら…どうするの?」
「俺は、まあそのままグレッグの執事になるつもりだが…アリシアこそ、好きな奴に…告白するのか?」
「え?好きな!?何!?あ、痛っ!」
アリシアは慌てて起き上がろうとして右手に力を入れて、痛みにベッドに倒れ込んだ。
「アリシア?大丈夫か?」
「…まっ、ままま、待って。痛たた。ジーン、え?私の好きな?何?」
「アリシアの『真実の愛』を貫きたい相手が…いるんだろう?」
「えっ。あの…?」
ジーンが辛そうな顔をしてアリシアを見る。途端にアリシアは悟った。
「ごっ誤解!それは誤解!!」
左手を顔の前で振る。首も振る。全力だった。
「誤解?」
アリシアは上目遣いにジーンを見た。
「…私が好きなの、ジーンだ、もん」
頬を赤くして言うアリシアに、ジーンは目を瞬かせた。
「アリシアってジーンを好きなの?」
アリシアの部屋の外でドア越しに聞き耳を立てながらグレッグが小声で言う。
グレッグの側に立っているホリーは「ええ」と小さく頷いた。
「グレッグ様、盗み聞きとは…お行儀悪いですわよ」
グレッグとホリーの後ろでケイトが呆れた様に言う。その隣ではダイアナとホリーの侍女が笑っている。
「だって入るタイミング失ったでしょ。完全に。じゃあ何でジーンと婚約する話が出た時そう言わなかったんだ?」
「アリシア、ジーン様がダイアナと好き合ってると思ってて」
ホリーが言うと、ダイアナが驚いて「私!?」と声を上げる。
「夜、逢引きしてるの見たって言ってました。もう誤解は解けてるようですけど、それでそれこそ言うタイミングを逃したんじゃないかと」
「なるほど」
「逢引き…」
頷くグレッグと、おののくダイアナ。
その時、アリシアの部屋のドアが開いた。
「…聞こえてるぞ、グレッグ」
-----
アリシアは裂傷を八針縫合し、毎日の消毒も必要なため、議会への出席は延期してもらうよう王都の父公爵に要請し、別荘への滞在を延ばす事にした。
その夜、グレッグの部屋でジーンは言った。グレッグ、ジーン、ホリーがソファに座り、侍女たちが部屋の隅に控えている。
「あの馬車から、故意に馬に何かを当てられたように思う」
「故意に?」
「アリシアは馬車が石を跳ねたと思っているようだが、俺は馬を…アリシアを狙ったと思う」
「アリシアを…」
ホリーと、隅に控えた侍女たちが息を飲む。
「湖に落とす気はなかったかも知れないが、少なくとも落馬させて負傷させる位は狙っていたかと」
「誰が何のために?」
グレッグとジーンは考え込む。
「アリシアを王都に戻らせたくなかった?」
ホリーが言う。
「…議会に出席させたくなかったのか?」
グレッグが言うと、皆が頷く。
「有り得るが、何故?」
ジーンが言うと、ホリーは
「王太子妃の座を狙う令嬢や家かも」
と言い、続ける。
「今、セルダ殿下の婚約者が未定の状態だから、王太子妃を狙ってる令嬢や、その家は活発に動いてるみたいだし」
「なるほど…アリシアが万一翻意して『やっぱり王太子妃になりたい』と言い出せば、すんなりとそうなるだろうからな。足止めと脅しを兼ねて、か」
「馬車に家紋とか…ある訳ないか」
「手掛かりになりそうなものはなかったな。ごく普通の馬車だった」
ジーンが顎に手を当てて頷くと、グレッグは呆れたように
「…そんなになりたいモンかね」
と言う。アリシアが自由もなく勉強を追われていたのを知っているからこそ、信じられない。
「女の子はお姫様になりたいものですから」
ホリーが言うと、グレッグはじっとホリーを見つめる。
「ホリーも?」
「え?」
「ホリーも『お姫様』に憧れる?」
「…憧れます。けど、実際王太子妃になりたいかと言われれば、それは違いますけど」
「そういうもの?」
グレッグの言葉にホリーは頷く。
「そう言えば、アリシアもパリヤ殿下との婚約が決まった時『王子さまと結婚したらお姫さまになれる』って喜んでたな…」
ジーンが遠い目をして呟いた。
アリシアが目を覚ますとジーンが心配そうに覗き込んでいた。
「痛っ!」
起き上がろうとして、右腕に痛みが走る。
「腕に打撲と裂傷がある。他に怪我はないようだが…大丈夫か?」
「うん…」
「濡れたせいと傷のせいで熱が出てるんだ。もう少し眠った方が良い」
ジーンがアリシアの頭を撫でる。
「…ジーン」
「ん?」
ジーンが優しい表情でアリシアを見る。
「…ジーンは、私の婚約者の役が終わったら…どうするの?」
「俺は、まあそのままグレッグの執事になるつもりだが…アリシアこそ、好きな奴に…告白するのか?」
「え?好きな!?何!?あ、痛っ!」
アリシアは慌てて起き上がろうとして右手に力を入れて、痛みにベッドに倒れ込んだ。
「アリシア?大丈夫か?」
「…まっ、ままま、待って。痛たた。ジーン、え?私の好きな?何?」
「アリシアの『真実の愛』を貫きたい相手が…いるんだろう?」
「えっ。あの…?」
ジーンが辛そうな顔をしてアリシアを見る。途端にアリシアは悟った。
「ごっ誤解!それは誤解!!」
左手を顔の前で振る。首も振る。全力だった。
「誤解?」
アリシアは上目遣いにジーンを見た。
「…私が好きなの、ジーンだ、もん」
頬を赤くして言うアリシアに、ジーンは目を瞬かせた。
「アリシアってジーンを好きなの?」
アリシアの部屋の外でドア越しに聞き耳を立てながらグレッグが小声で言う。
グレッグの側に立っているホリーは「ええ」と小さく頷いた。
「グレッグ様、盗み聞きとは…お行儀悪いですわよ」
グレッグとホリーの後ろでケイトが呆れた様に言う。その隣ではダイアナとホリーの侍女が笑っている。
「だって入るタイミング失ったでしょ。完全に。じゃあ何でジーンと婚約する話が出た時そう言わなかったんだ?」
「アリシア、ジーン様がダイアナと好き合ってると思ってて」
ホリーが言うと、ダイアナが驚いて「私!?」と声を上げる。
「夜、逢引きしてるの見たって言ってました。もう誤解は解けてるようですけど、それでそれこそ言うタイミングを逃したんじゃないかと」
「なるほど」
「逢引き…」
頷くグレッグと、おののくダイアナ。
その時、アリシアの部屋のドアが開いた。
「…聞こえてるぞ、グレッグ」
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アリシアは裂傷を八針縫合し、毎日の消毒も必要なため、議会への出席は延期してもらうよう王都の父公爵に要請し、別荘への滞在を延ばす事にした。
その夜、グレッグの部屋でジーンは言った。グレッグ、ジーン、ホリーがソファに座り、侍女たちが部屋の隅に控えている。
「あの馬車から、故意に馬に何かを当てられたように思う」
「故意に?」
「アリシアは馬車が石を跳ねたと思っているようだが、俺は馬を…アリシアを狙ったと思う」
「アリシアを…」
ホリーと、隅に控えた侍女たちが息を飲む。
「湖に落とす気はなかったかも知れないが、少なくとも落馬させて負傷させる位は狙っていたかと」
「誰が何のために?」
グレッグとジーンは考え込む。
「アリシアを王都に戻らせたくなかった?」
ホリーが言う。
「…議会に出席させたくなかったのか?」
グレッグが言うと、皆が頷く。
「有り得るが、何故?」
ジーンが言うと、ホリーは
「王太子妃の座を狙う令嬢や家かも」
と言い、続ける。
「今、セルダ殿下の婚約者が未定の状態だから、王太子妃を狙ってる令嬢や、その家は活発に動いてるみたいだし」
「なるほど…アリシアが万一翻意して『やっぱり王太子妃になりたい』と言い出せば、すんなりとそうなるだろうからな。足止めと脅しを兼ねて、か」
「馬車に家紋とか…ある訳ないか」
「手掛かりになりそうなものはなかったな。ごく普通の馬車だった」
ジーンが顎に手を当てて頷くと、グレッグは呆れたように
「…そんなになりたいモンかね」
と言う。アリシアが自由もなく勉強を追われていたのを知っているからこそ、信じられない。
「女の子はお姫様になりたいものですから」
ホリーが言うと、グレッグはじっとホリーを見つめる。
「ホリーも?」
「え?」
「ホリーも『お姫様』に憧れる?」
「…憧れます。けど、実際王太子妃になりたいかと言われれば、それは違いますけど」
「そういうもの?」
グレッグの言葉にホリーは頷く。
「そう言えば、アリシアもパリヤ殿下との婚約が決まった時『王子さまと結婚したらお姫さまになれる』って喜んでたな…」
ジーンが遠い目をして呟いた。
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