転生令嬢と王子の恋人

ねーさん

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 ロイドがサイモンに面会の申し入れをすると、直ぐに返事が届く。そしてサイモンがリザとロイドがお茶会をしている中庭に現れた。
「リザ嬢、久しいな」
 サイモンは用意された席に着くとリザに笑顔を向けた。
 リザは思わず顔の前で手を合わせた。
「…麗しくて尊い」
「拝むな」
 ロイドが呆れたように言うと、サイモンは笑って言った。
「やはりロイドにはそのポーズの意味がわかるのだな」
「サイモン殿下は、私たちが転生者である事やゲームの事を覚えておいでなのですか?」
「ああ。あのパーティーの時、私も倒れたが意識を完全に失くした訳ではないからな」
「そうなんですか?」
「身体は動かなかったし、目も開かなかったが、薄く意識はあった。リザ嬢とロイド、ランドルフ…マスターとやらの会話も聞こえていたし」
「あの場面で意識を失くした者にはその間に記憶の改編、ゲーム補正が行われたのでしょうか?」
「おそらくそうだろう」
 ロイドの言葉にサイモンは頷いた。

「それでは…ローズさんの事は…?」
 リザがおずおずと言う。
 サイモンにはゲーム補正が掛かっていないと言う事は、ローズを好きな気持ちもそのままなのではないか、とリザは思う。
 サイモンは大きく息を吐いた。
「ローズ・エンジェル男爵令嬢…いやもう男爵令嬢ではないな。ローズに対する『好意』はなくなった」
 サイモンの言葉にリザは思わず「良かった…」と呟いた。
 これでサイモン殿下の不必要な苦しみは取り除かれたんだわ。
 そう思ってサイモンとロイドを見ると、二人とも複雑な顔をしている。
「…何か、問題が?」
 リザが問うと、サイモンは苦笑いし、遠くを見る目をして言った。
「問題と言う訳ではないが…オリーが私を好きではなくなった」

-----

 卒業したオリーは王太子妃教育のためにほぼ毎日王宮に来ているので、リザは勉強終わりのオリーを訪ねた。
 応接室でお茶を飲みながらオリーは言う。
「私がサイモン殿下をお慕いしていたのも『ゲームの強制力』だったのかしら?」
 人差し指を顎に当てて小首を傾げる。
「しかし…ヒロインが入学する前からオリー様はサイモン殿下をお好きだったのでは?」
「そうなのよね…」
 オリーは「はあ~」とため息を吐く。
「…サイモン殿下が美しすぎるのがいけないと思うの」
「え?」
「女の私よりお美しいのよ。あんな綺麗な人が私の婚約者だなんて!困っちゃうわよ」
 オリーは両手で顔を覆う。
「…オリー様?」

「……」
 暫く沈黙した後、顔を覆ったままオリーは言う。
「……がうの」
「え?」
「違うの…」
 顔を覆った手の下から、涙がポトリと落ちた。
「オリー様」
 リザは立ち上がると、オリーの隣へ移動する。
 震える声でオリーは話し出した。
「…サイモン殿下は、小さい頃から『完璧』な人だったわ」

 小さい頃、王子、王女の遊び相手として王宮に来ていたオリーだが、六歳年上のサイモンとは殆ど話した事もなかった。
 同じ歳のロイドや他の貴族と遊んでいる様子を眺めているサイモンは子供心にとても「大人」だったのだ。
 14歳の時、オリーは立太子したサイモンの婚約者に選ばれる。
 当時すでに20歳になっていたサイモンは、挨拶に行ったオリーの手を取り口付けると、笑顔で
「オリーが婚約者で嬉しいよ」
 と言った。
 サイモンにとってはまだ子供だろう、オリーを淑女として扱い
「早くオリーが学園を卒業すると良いのにな」
 と笑う。
 オリーは当然そんなサイモンを慕っていたのだ。

「私、他の事は忘れたの。リザ様やロイド殿下、ローズさんが転生してこの世界に来た事も、ゲームの事も、サイモン殿下に説明されても『そうなのね』って思うだけなの」
 オリーは顔を覆ったままだ。涙が後から後からスカートに落ちている。
「はい」
 リザはオリーの肩を抱く。
「…なのに、覚えているのよ」
 オリーは震える声で振り絞る様に言った。
「サイモン殿下と…ローズさんが初めて会った時の事」


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