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「リザはクリスがローズを告発する事を事前に知っていたのか?」
飲み物を持ってパーティー会場を抜け出したリザとロイドは生徒会室へとやって来る。応接セットに座ると飲み物のグラスをテーブルに置いた。
「はい。レイモンド伝手でオリー様からお手紙をもらって」
レイモンドが「招待状」と言って渡してくれた封筒はオリーからの手紙で、クリストファーが卒業パーティーでローズを告発するので協力して欲しいと書いてあったのだ。
「…レイモンド」
ロイドが小さく呟く。
「はい?」
「リザは、レイモンドと一緒に外国に行くと聞いた」
視線をウロウロと彷徨わせながら言う。
「…その話」
「本当なのか!?」
「殿下?」
ソファから半ば立ち上がるようにロイドが言う。そして視線をテーブルへと落とした。
「猶予期間は終わった。リザが望むなら婚約解消に…応じる」
「…ロイド殿下、私がレイモンドと一緒に外国に行くの、嫌ですか?」
ロイドは視線を上げてリザを見る。
「リザが幸せに笑っていてくれるなら…」
そう言い掛けたロイドの言葉にリザが被せる様に言った。
「殿下の気持ちを聞いてるんです。私の幸せ云々は置いてといて、ロイド殿下が、嫌か、そうでないか」
「俺の、気持ち?」
「そうです」
ロイドはじっとリザを見ながら口を開く。
「……嫌だ」
リザが幸せそうに笑うのを見たい。できれば、近くで。
「…だが、俺は何もできない。今回クリスがローズを告発するのも、何も聞いてはいないし、何もできなかった。ただローズの言いなりになった…情けない男だ」
ロイドはテーブルに着いた手を握りしめる。
「クリス様は『事前にローズに悟られないよう殿下には何も言っていない』と言われていました。それに『殿下なら自分が壇上に立てば意図を察してくださる』とも」
「……」
「ローズの言いなりになろうとしてたのは、私がローズに何かをされないように、ですよね?」
卒業パーティーでの婚約破棄とリザの国外追放。それでローズの気が済んで、国外へ出たリザの存在を忘れてくれると良い。
ロイドはそう思っていた。
「リザが俺のせいで傷付けられるのを…まして命を狙われる処を…もう二度と見たくないんだ。ローズの言いなりになったのはリザのためじゃない。俺のためだ」
「殿下…」
「だから…俺にリザを止める資格はないんだ」
俯くロイド。
「殿下は考え過ぎなんですよ」
リザはあっけらかんと言う。
「考え過ぎ?」
「私だってクリス様とオリー様の案に乗っただけで、特に何もしてませんし、もし国外追放になったらレイモンドの居る国に行けば知り合いがいて淋しくないかな~くらいの軽い気持ちですよ。こうして国外追放がなくなったなら外国には行きませんし、普通に学園を卒業しますから」
「……」
眉を寄せてリザを見つめるロイドに、リザは笑い掛ける。
「と、言う訳で、猶予期間を延長します」
「延長?」
「今度は私が卒業するまで、一年間で」
「リザ…」
「…ロイド殿下全然気付いてくれませんけど、このドレス、黒じゃないんですよ?」
「え?」
リザはスカートを持ってロイドの方に示した後、立ち上がって窓際に行く。
「黒でも殿下とお揃いみたいでしたけど…光に当ててよく見て下さい。ホラ」
窓際でスカートを摘んで広げる。
日影では黒に見えたドレスが濃い紫である事が分かる。ロイドも立ち上がってリザの前に立つ。
「…俺の色?」
リザは頬を赤くして
「そうですよ」
と言う。
ロイドはふっと笑った。
ローズの中で見た笑顔より、本物の方が自然で素敵だわ。
ロイドはリザを抱きしめる。
「…今度こそ態度で示す」
「はい」
リザはロイドの背中に手を回して目を閉じた。
-----
卒業パーティー後
ランドルフ、エリック、クリストファーは口を揃えて「何故あんなにローズを好きだったのか自分でも分からない」と言った。
マークとゴヴァンは相変わらず「ローズは運命の乙女だ」と言っているらしい。ヒロインのために罪を犯して人生が狂った事に対するゲーム補正だろうとリザとロイドは思った。
ローズはマークとゴヴァンが捕縛された後、様々な証言により殺人教唆の罪で捕まり、国外追放になったそうだ。行方は知れない。
クリストファーはリザとロイドが転生者で、ここがゲームの世界であった事も全て忘れているようだった。
「サイモン殿下は?どうなっているの?」
定例茶会で王宮を訪れたリザが聞くと、最近よくリザに笑顔を見せるようになったロイドが困ったように笑った。
「…それが」
「リザはクリスがローズを告発する事を事前に知っていたのか?」
飲み物を持ってパーティー会場を抜け出したリザとロイドは生徒会室へとやって来る。応接セットに座ると飲み物のグラスをテーブルに置いた。
「はい。レイモンド伝手でオリー様からお手紙をもらって」
レイモンドが「招待状」と言って渡してくれた封筒はオリーからの手紙で、クリストファーが卒業パーティーでローズを告発するので協力して欲しいと書いてあったのだ。
「…レイモンド」
ロイドが小さく呟く。
「はい?」
「リザは、レイモンドと一緒に外国に行くと聞いた」
視線をウロウロと彷徨わせながら言う。
「…その話」
「本当なのか!?」
「殿下?」
ソファから半ば立ち上がるようにロイドが言う。そして視線をテーブルへと落とした。
「猶予期間は終わった。リザが望むなら婚約解消に…応じる」
「…ロイド殿下、私がレイモンドと一緒に外国に行くの、嫌ですか?」
ロイドは視線を上げてリザを見る。
「リザが幸せに笑っていてくれるなら…」
そう言い掛けたロイドの言葉にリザが被せる様に言った。
「殿下の気持ちを聞いてるんです。私の幸せ云々は置いてといて、ロイド殿下が、嫌か、そうでないか」
「俺の、気持ち?」
「そうです」
ロイドはじっとリザを見ながら口を開く。
「……嫌だ」
リザが幸せそうに笑うのを見たい。できれば、近くで。
「…だが、俺は何もできない。今回クリスがローズを告発するのも、何も聞いてはいないし、何もできなかった。ただローズの言いなりになった…情けない男だ」
ロイドはテーブルに着いた手を握りしめる。
「クリス様は『事前にローズに悟られないよう殿下には何も言っていない』と言われていました。それに『殿下なら自分が壇上に立てば意図を察してくださる』とも」
「……」
「ローズの言いなりになろうとしてたのは、私がローズに何かをされないように、ですよね?」
卒業パーティーでの婚約破棄とリザの国外追放。それでローズの気が済んで、国外へ出たリザの存在を忘れてくれると良い。
ロイドはそう思っていた。
「リザが俺のせいで傷付けられるのを…まして命を狙われる処を…もう二度と見たくないんだ。ローズの言いなりになったのはリザのためじゃない。俺のためだ」
「殿下…」
「だから…俺にリザを止める資格はないんだ」
俯くロイド。
「殿下は考え過ぎなんですよ」
リザはあっけらかんと言う。
「考え過ぎ?」
「私だってクリス様とオリー様の案に乗っただけで、特に何もしてませんし、もし国外追放になったらレイモンドの居る国に行けば知り合いがいて淋しくないかな~くらいの軽い気持ちですよ。こうして国外追放がなくなったなら外国には行きませんし、普通に学園を卒業しますから」
「……」
眉を寄せてリザを見つめるロイドに、リザは笑い掛ける。
「と、言う訳で、猶予期間を延長します」
「延長?」
「今度は私が卒業するまで、一年間で」
「リザ…」
「…ロイド殿下全然気付いてくれませんけど、このドレス、黒じゃないんですよ?」
「え?」
リザはスカートを持ってロイドの方に示した後、立ち上がって窓際に行く。
「黒でも殿下とお揃いみたいでしたけど…光に当ててよく見て下さい。ホラ」
窓際でスカートを摘んで広げる。
日影では黒に見えたドレスが濃い紫である事が分かる。ロイドも立ち上がってリザの前に立つ。
「…俺の色?」
リザは頬を赤くして
「そうですよ」
と言う。
ロイドはふっと笑った。
ローズの中で見た笑顔より、本物の方が自然で素敵だわ。
ロイドはリザを抱きしめる。
「…今度こそ態度で示す」
「はい」
リザはロイドの背中に手を回して目を閉じた。
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卒業パーティー後
ランドルフ、エリック、クリストファーは口を揃えて「何故あんなにローズを好きだったのか自分でも分からない」と言った。
マークとゴヴァンは相変わらず「ローズは運命の乙女だ」と言っているらしい。ヒロインのために罪を犯して人生が狂った事に対するゲーム補正だろうとリザとロイドは思った。
ローズはマークとゴヴァンが捕縛された後、様々な証言により殺人教唆の罪で捕まり、国外追放になったそうだ。行方は知れない。
クリストファーはリザとロイドが転生者で、ここがゲームの世界であった事も全て忘れているようだった。
「サイモン殿下は?どうなっているの?」
定例茶会で王宮を訪れたリザが聞くと、最近よくリザに笑顔を見せるようになったロイドが困ったように笑った。
「…それが」
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