【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ

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「……え……初対面、だけど……」

 戸惑うような真紀の瞳に厭悪がないことに、泣きたくなるくらい、ほっとした。

 背の高い真紀を見あげる俺の唇が、ふるえてる。


「二度目です!
 ……もう、逢えないかもしれない、から……だから……!」


「……え、と……きみから見たら、俺はおじさんなんじゃ……?」

 そらされる瞳に、握りこんだ指が、ふるえる。


「……俺なんて、子どもで……恋にならない……?」

 自分で言って、自分で泣きそうになった。


「……いや……その……」

 戸惑う真紀と、懸命な俺の後ろから、声が飛ぶ。


「きゃー! がんばって!」

「すごい、人が告白してるとこ、はじめて生で見た!」

「な、何やってんだよ、愛希──!」

「……満員電車だぞ。すげえな」


 耳まで燃えた。

 は、はずかしい……!

 夢中すぎて、気づいてなかった!


 差別されるんじゃないかとか、きもちわるいと思われるんじゃないかとか、そうっと見あげた皆の目は、びっくりと応援だった。
 いやそうに目をそらした人もいたけれど、でも

「がんばれ!」

 応援してくれる人がいる。

 泣きたくなって、あわてて目を拳でぬぐった。



「すきです! つきあってください!」

 頬が、熱い。

 鼓動が、燃える。


 まるくなった真紀の瞳が、照れくさそうに、そらされた。



 ──……あぁ、だめだ。

 はじめての恋が、散ってゆく。



 ……泣いたら、だめだ。

 ぎゅっと唇を噛んだら、つやつやの髪が、揺れる。


「……うん」



「きゃ──!」

 歓声が、聞こえた。

「おめでとう!」
「がんばったな!」

 肩をたたいてくれる人がいる。

 びっくりして、泣きたくなるから、笑った。



「あ、あの、俺、片白愛希です!」

「おぼえてる」

 ちいさな声に、鼓動が跳ねる。


「……よろしく、あき」

 大きな手が、俺の手をにぎってくれた。



「よ、よろしくお願いします、まきちゃん!」

「……は……!?」

 目をむいた真紀の耳が、真っ赤だ。


「えへへ。名前、おそろい。うれしかった」

 燃える頬で、笑う。

 ふわふわ栗色の髪が、揺れる。


「……愛希、いくつ」

 ぼそりと聞かれる。
 声まで、かっこいー。知ってた!


「15歳!
 高校1年生だよ。まきちゃんは?」

「……24。……9歳も違うのか……!
 待て、俺に3年も我慢しろって──!?」

 悲壮な顔になっても、かっこよすぎるかんばせを見あげる。



「……だめ……?」

 ぎゅう

 つながった手を、にぎる。

 ふうわり紅くなった真紀が、俺の手をにぎりかえしてくれた。


「……だめじゃない」

 ささやく吐息が、かすれてる。


「……まきちゃんも、俺のこと、いいなって思ってくれた、の……?
 よだれまみれにしちゃったのに……?」

 そうっと聞いたら、真紀が笑う。


「びっくりした。最初は気分がわるいのかと思って焦ったけど、満員電車で熟睡するなんて、すげえなって。
 ……揺れてるから、倒れないように抱きよせたら、よだれまみれにされるし」

 喉の奥で笑う真紀が、かっこよすぎて、つらい。


「ご、ごめんなさい……!」

 のびた長い指が、くしゃりと髪をなでてくれる。


「抱っこしてたら……ちっちゃくて、かわいくて、あったかくて……すきになってた」

 ささやきが、耳朶にふれる。


「今日、逢えるの、楽しみにしてた」

 ふうわり、ほんのり紅いまなじりで、笑ってくれる。


「告白してくれて、うれしかった。
 ……俺からは、絶対、無理だから。
 ありがとう」

 つながる手を、にぎってくれる。



「まきちゃん、だいすき──!」

 抱きついたら、抱きとめてくれた。



「まきちゃんは止めてくれ、はずかしい……!」


 真っ赤な耳で叫ぶ真紀ちゃんが、世界でいちばん、かっこかわいー!


 俺の彼氏になってくれるなんて、夢みたい……!






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