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もえる
しおりを挟む「……え……初対面、だけど……」
戸惑うような真紀の瞳に厭悪がないことに、泣きたくなるくらい、ほっとした。
背の高い真紀を見あげる俺の唇が、ふるえてる。
「二度目です!
……もう、逢えないかもしれない、から……だから……!」
「……え、と……きみから見たら、俺はおじさんなんじゃ……?」
そらされる瞳に、握りこんだ指が、ふるえる。
「……俺なんて、子どもで……恋にならない……?」
自分で言って、自分で泣きそうになった。
「……いや……その……」
戸惑う真紀と、懸命な俺の後ろから、声が飛ぶ。
「きゃー! がんばって!」
「すごい、人が告白してるとこ、はじめて生で見た!」
「な、何やってんだよ、愛希──!」
「……満員電車だぞ。すげえな」
耳まで燃えた。
は、はずかしい……!
夢中すぎて、気づいてなかった!
差別されるんじゃないかとか、きもちわるいと思われるんじゃないかとか、そうっと見あげた皆の目は、びっくりと応援だった。
いやそうに目をそらした人もいたけれど、でも
「がんばれ!」
応援してくれる人がいる。
泣きたくなって、あわてて目を拳でぬぐった。
「すきです! つきあってください!」
頬が、熱い。
鼓動が、燃える。
まるくなった真紀の瞳が、照れくさそうに、そらされた。
──……あぁ、だめだ。
はじめての恋が、散ってゆく。
……泣いたら、だめだ。
ぎゅっと唇を噛んだら、つやつやの髪が、揺れる。
「……うん」
「きゃ──!」
歓声が、聞こえた。
「おめでとう!」
「がんばったな!」
肩をたたいてくれる人がいる。
びっくりして、泣きたくなるから、笑った。
「あ、あの、俺、片白愛希です!」
「おぼえてる」
ちいさな声に、鼓動が跳ねる。
「……よろしく、あき」
大きな手が、俺の手をにぎってくれた。
「よ、よろしくお願いします、まきちゃん!」
「……は……!?」
目をむいた真紀の耳が、真っ赤だ。
「えへへ。名前、おそろい。うれしかった」
燃える頬で、笑う。
ふわふわ栗色の髪が、揺れる。
「……愛希、いくつ」
ぼそりと聞かれる。
声まで、かっこいー。知ってた!
「15歳!
高校1年生だよ。まきちゃんは?」
「……24。……9歳も違うのか……!
待て、俺に3年も我慢しろって──!?」
悲壮な顔になっても、かっこよすぎるかんばせを見あげる。
「……だめ……?」
ぎゅう
つながった手を、にぎる。
ふうわり紅くなった真紀が、俺の手をにぎりかえしてくれた。
「……だめじゃない」
ささやく吐息が、かすれてる。
「……まきちゃんも、俺のこと、いいなって思ってくれた、の……?
よだれまみれにしちゃったのに……?」
そうっと聞いたら、真紀が笑う。
「びっくりした。最初は気分がわるいのかと思って焦ったけど、満員電車で熟睡するなんて、すげえなって。
……揺れてるから、倒れないように抱きよせたら、よだれまみれにされるし」
喉の奥で笑う真紀が、かっこよすぎて、つらい。
「ご、ごめんなさい……!」
のびた長い指が、くしゃりと髪をなでてくれる。
「抱っこしてたら……ちっちゃくて、かわいくて、あったかくて……すきになってた」
ささやきが、耳朶にふれる。
「今日、逢えるの、楽しみにしてた」
ふうわり、ほんのり紅いまなじりで、笑ってくれる。
「告白してくれて、うれしかった。
……俺からは、絶対、無理だから。
ありがとう」
つながる手を、にぎってくれる。
「まきちゃん、だいすき──!」
抱きついたら、抱きとめてくれた。
「まきちゃんは止めてくれ、はずかしい……!」
真っ赤な耳で叫ぶ真紀ちゃんが、世界でいちばん、かっこかわいー!
俺の彼氏になってくれるなんて、夢みたい……!
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