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おかしい
しおりを挟むあこがれの人が彼氏になってくれて、電話番号を交換しちゃったなんて、夢みたい……!
メッセージアプリを開いて、『真紀』ながめるだけで、へにゃへにゃしちゃう……!
「じゃあ、また明日ね!」
ぎゅ
真紀に抱きついたら、照れくさそうに笑ってくれる。
「また明日」
微笑んでくれたら、天上にのぼる気がする。
「あ、クリーニング代……!」
あわてて財布を出そうとする俺に、真紀は首をふった。
「今度デートのときに、何かおごって」
秋の朝日に輝く髪で、笑ってくれた。
──でーと……!
ほ、ほんとに、彼氏だ……!
どきどきの胸が、破裂する。
「う、うん──!」
ぶんぶんうなずいて、燃える頬で手を振って満員電車を見送った瞬間
「ちょ、愛希、何やってんだよ──!」
幼なじみの友樹に肩をつかまれた。
「えへへへへ。彼氏ができちゃった!」
とろけて笑った俺は、あわあわ背を正す。
「そ、その、きもちわるいとか思うかもしれない、けど……」
「思うわけないだろ! 化石かよ!」
叫ばれた。
びっくりした。
「……う、うん。あの、幼なじみ、つづけてくれたら、うれしい」
ふわふわ熱くなる頬で笑ったら、友樹の顔が、ぐしゃりと歪んだ。
「昨日逢ったばっかだろ。告白って、なんで──」
悔しそうな友樹に首をかしげた俺は、胸を張る。
「恋は、落ちるものなんだよ。
友樹もさ、恋をしたらわかるって」
お兄さんになった気分で友樹の背を叩いたら、ものすごい目でにらまれた。
「してるよ!」
「……あ、あ、そっか、ご、ごめん。応援する……!」
……………………。
友樹の目に刺された。こわい。
めちゃくちゃかっこいー社会人な真紀と、高校生の俺が、おつきあいすることになったなんて、夢みたい!
頭も、心も、ぽわぽわしてる。
暇さえあればスマートフォンを開いて『真紀』なぞってしまう。
あまりメッセージを送ったら迷惑かな、思いつつも、どきどきしながら文字を打つ手は止まらない。
『おはよう、真紀ちゃん!
愛希だよ。真紀ちゃんの彼氏だよ♡』
告白から一夜明けて、目が覚めた次の瞬間、夢じゃないことを確かめるみたいに、ぽわぽわの寝ぐせの頭で送ってしまった。
ららぽるん!
真紀からのメッセージのときだけ鳴るようにした、大すきな恋の歌のイントロが流れた。
「きゃ──♡」
わくわくの頬で、画面を開く。
『……朝から、はずかしい』
真紀ちゃん、かわいー♡
『照れ屋さん♡♡♡』
『うざ』言われてしまいそうなのに、舞いあがった頭じゃ、気づけない。
真紀に逢った日から、ずっと、真紀のことばかりを考えて。
真紀で頭も心も、いっぱいになってしまう。
ぽわぽわした頭と心に『恋』が降る。
今までずっと苦痛で仕方なかった、早起きの満員電車が、至福になった。
最愛の真紀に、堂々と抱きついていい。
密着していい。
ほっそりした身体を抱きしめても、広い胸に顔をうずめても、誰にも何にも言われない……!
「真紀ちゃん、めちゃくちゃいー匂いする……!」
ぎゅむぎゅむしたら
「くるしい……! こら、尻をもむな……!」
しかられた。
おかしい。
彼氏なのに!
『今日も真紀ちゃん、さいっこーにかっこよかった!』
学校についたら、すぐにメッセージを送る。
マナーモードにしてあるから、真紀の着信音は鳴らない。
そのかわり、てのひらから響く鼓動みたいに、バイブがふるえる。
『愛希も可愛かった。尻をもむのは止めろ』
しかられた。
おかしい。
彼氏なのに!
ちょっとふくれる頬まで、熱くて。
どきどきが、あなたに向かって、駆けてゆく。
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