【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ

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ららぽるん!

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 お昼休みのチャイムが鳴ったら、お弁当とスマートフォンをつかんだ俺は、屋上へと駆けた。
 気もちいい春の陽射しを弾く画面のマナーモードを解除する。

『お昼ごはん、真紀ちゃん、何食べた?
 俺はね、屋上でお弁当。昨日の夜に作ったんだ。オムライス弁当だよ!』

 ららぽるん!

 着信音に鼓動が跳ねる。
 スマートフォンをのぞきこむ頬が熱い。

『へえ、えらいな』

『えへへ。真紀ちゃんにも、ご飯つくってあげる!』


 ららぽるん!

『たのしみ』

『ほ、ほんとに!? うれしい!
 真紀ちゃん、今日のお昼は?』


 ららぽるん!

『出先で立ち食いのたぬき。意外にうまい』


 返してくれるメッセージ、ひとつひとつに、とろけてしまう。


「えへへへへえ」

 スマートフォンばっかり気にするようになった俺に、一緒に屋上でパンをかじる友樹は、渋い顔だ。


「……わるい社会人に、だまされてんじゃねえの?」

「俺から告白したのに?」

 きょとんとしたら、友樹はもっと渋い顔になった。


「気をつけろよ! まだ15歳なんだからな!
 色々したらだめだから!」

 真っ赤な顔で叫ばれた。


「い、いろいろ……!」

 きゃ──!


『真紀ちゃん、真紀ちゃん、彼氏だよ! いろいろするんだよ! どうしよう!
 きゃ──!』


 ららぽるん!

『俺を犯罪者にする気か──! 3年我慢しろ──!』


 しかられた。

 スマートフォンから顔をあげた俺は、笑う。


「真紀ちゃん、やさしい、誠実な人だよ」

「そうだとしても、相手は大人なんだぞ。
 高校生なんて、まだ15歳の子どもなんて、若いだけだろ。すぐつまんなくなるんじゃねえの?」


 ぶっすりした友樹の言葉が、胸に刺さる。


 ……つまらない、かな。

 うっとうしい、かな。

 ……うざい……?


 考えたら、泣いてしまいそうだったから



『真紀ちゃん、だいすき』



 ららぽるん!



『……俺も。愛希がすき』



 ──あぁ

 うれしいときも、涙はこぼれるんだね。



 メッセージを抱きしめる指が、ふるえてる。



 まだ、逢ったばかりなのに


 あなたのことを

 揺れる髪とか

 めちゃくちゃいい匂いがするとか

 やさしい瞳とか

 身体の芯に響く声とか

 そっけないのに、やさしいメッセージしか、知らないのに



 あなたを、すきになるには


 もう、充分なんだ。











 * * *





 満員電車は、苦痛だ。

「あっ、すみませぇん!」

 ちっとも『すまない』と思ってないだろう! という、にやにやした顔で、しなだれかかられるとか、もう真剣に勘弁してほしい。

『またまたあ、真紀ってば、もてて、うれしいんじゃないの?
 かわいー子に、寄りかかられるとか、最高じゃん!』

『じゃあ、お前がなってみろ、麗乃!
 初対面の、よく知らない人に寄りかかられるとか、きもちわ……自粛する』

 いとこの麗乃にからかわれたことまで思いだして、余計に気分が落ちこんだ。


「きゃー、かっこいー!」

「やばくない?」

「声かける?」

「きゃ──!」

『いや、もう、顔のことはいいから』言いたくなる。

 ほんとうは目深にキャップをかぶって、マスクと眼鏡で出勤したいが『真紀のその顔面力で、営業を頼みたい!』麗乃に泣いてすがられたので、髪や顔が崩れるといけないから、仕方なく顔をさらして出勤しているが、毎朝これか……!

 こっちは出勤なんだよ。
 この顔面は仕事に使うんだよ。

 やめてくれ……!


 うんざりする、暖房で蒸し暑い秋の満員電車で、かわいーのが流れてきた。

「……ぃーにぉぃ……」

 人に、ことんと寄りかかって、寝た──!


「……え……? だ、だいじょうぶか……!?」

 気分がわるいんじゃと思って心配したが、やすらかに寝てる。立ったまま。


 ……何だこの子!

 びっくりした。


 また『すいませぇん』かと思ったら、青城高校の制服だ。男子校だ。

 しかも、真剣に寝てる……!


「ぐぅ」


 気持ちよさそうだ。

 ちっちゃい。

 あったかい。


 なんだこの子、いー匂いがする。


「……ん……」

 人の胸を枕にして、居心地よいところにおでこをすりつけるとか、他の人にされたら『ぐぃいいい』押しのけそうなのに。



 ふわふわの栗色の髪が、あごの下で揺れた。


 くすぐったい。


 まつげ、ながい。


 なんだこの、かわいー子。


 めちゃくちゃ、いー匂いがする……!



 知らない間に、抱っこしてた。


 ……だって、寝てるから。

 ほら、崩れ落ちたら危ないし。

 そう、危険な高校生を保護してるだけだ、やましい気もちなんて、全然──

 …………ない? ほんとうに……?



 とくん



 胸が、音をたてる。




 とくん



 目を開いてほしくて


 俺を、映してほしくて



 どきどきする。









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