【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ

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でーと!

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 * * *


 金曜の夜、ベッドに寝転んだ俺は、スマートフォンを起動する。

『真紀ちゃん、お仕事、疲れてる?』

 だいすきな彼氏の真紀に、メッセージを送信するたび、どきどきする。


 ららぽるん!

『つかれるよ。どした』

『疲れてるんだったら、いいの! ごめん!』


 ららぽるん!

『どした?』


 熱い頬で、硬い画面にふれる。

『……でーと、したい……
 お、おごってあげるから!』

 りすが、ちっちゃな手をにぎるスタンプをいっしょに送る。






 ……うざいって、思われる……?

 いやがられちゃうかな……?

『ららぽるん!』鳴るのを待つ指が、どきどきで、ふるえてる。


 ららぽるん!

『どこ行く? あさっての日曜でいい? 何時?』


 18回、文字を確認した。

 頬が、燃える。

 飛び跳ねたベッドが、きしむ。


「きゃ──!」

 生まれて、はじめての、でーとです……!






「でーと……!
 なななななななな何を着て行こう──!?
 きゃ──!」

 ばたばたした。

 あわあわした……!


「……愛希ちゃん、もう夜中だから……」

 夜中なので大変に気まずい事態になった時のために出動を求められたのだろう、お父さんが眉を下げてる。


「お父さん、日曜日にはじめてのデートなんだけど!
 どんな服を着て行ったらいいかな!?」

 リサーチしてみた!

「……は……!?
 そ、そういうのは、お母さんに聞いた方が……」

 もごもごしてる。

「お父さんの意見を聞きたい!」

 素直に言ってみたら『ぱぁあ』音をたてるように、僕によく似た、お父さんの顔が明るくなった。

「そ、そうか……!
 うぅーん、はじめてのデートか……
 お父さん何着て行ったかな……白いシャツにベージュのチノパンだった気がする」

「反応は!?」

 前のめりで聞いてみた。


「……びみょう……?」

「泣いちゃう!」

 うむうむお父さんが、うなずいた。


「相手のこのみに合わせて自分の服を変えるというのは、いいなと思ってもらう、ひとつの手なんだけれど、そうして自分を装って、ほんとうの自分が出せなくなることが、一番さみしいと思うんだ」

 お父さんの大きな手が、ぽんぽん頭をなでてくれる。


「だから愛希は、自分が着たいと思うものを着なさい。
 最近はスカートも流行ってるんだろう?
 愛希なら、とっても似合うと思うぞ!」

 お父さんが、勇者です。

「愛希ちゃん、スカート着たいの!?
 お母さんと服、買いに行く!?」

 心配でこっそり聞いていてくれたのだろう、でもこっそりしきれなくなったらしい、お母さんの目が、きらきらしてる。




 自分が、いちばん着たくて、いちばん可愛く見える服を。

 クローゼットの中身とにらめっこした俺は、ちょっと寒くなってきたので、ふあふあの白のパーカーに、デニムを合わせてみました。
 ほわほわの白のマフラーつき!

「かわいい?」

「めちゃくちゃ!」

 真夜中なのに、両親が親指を立ててくれました。




『お弁当をつくってあげる!』

 メッセージを送ってしまったので、日曜の朝早くから、お父さんに手伝ってもらって、お重のお弁当を作りました!
 運動会みたい。すごい!

「がんばれー。味見は任せろ!」

 ねむたそうな、お母さんは、応援してくれました。ありがとう。




「い、いいいいいいいってきます!」

 ふるえる手をあげたら、ちょっと寂しそうな笑顔の両親が見送ってくれる。

「愛希ちゃんも、もう恋人ができる歳なんだなあ」

「今度、家に連れてきなさいね」


 とくりと鼓動が音を立てる。


 ……言えるかな。

 真紀ちゃんは、来てくれるかな。



 いつかきっと、胸を張って紹介したい。


 今は、正式には法律が認めてくれないけれど。
 それでもいつかきっと、みんなで世界を変えて

 真紀ちゃんと、伴侶になりたい。


 まだ逢ったばかりなのに

 こんな風に思えるなんて。



 これがきっと

 恋なんだ。



 いつか、きっと


「ちゃんと紹介するからね!」





 包んだお重を手に持った俺は、片手でハンドルをにぎって自転車で駅まで走る。

 いつもの時間の、いつもの電車、日曜日はぎゅうぎゅうの満員電車じゃないけれど、お出かけする人でいっぱいだ。

「真紀ちゃん!」

 電車に乗ったら、すぐわかる。

 いちばん、かっこいいから。


 いつもスーツでパリッとかっこいい真紀ちゃんの私服──!

 白いシャツの上にざっくり羽織られた黒の薄手のローゲージニットと、ふわふわの白いマフラー、黒のデニムという何でもないでたちなのに、真紀ちゃんがすると、めまいがするほどかっこいい……!


「真紀ちゃんが、かっこよすぎて、つらい……!」

 燃える頬で、もだもだする俺に

「……こっちのセリフなんだけど。
 可愛すぎだろ……!」

 ほんのり赤い耳で言ってくれる真紀ちゃんが、尊すぎて倒れそうです──!

 きゃ──♡







────────────────


ずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございますー!

『視点変わるの楽しいですか?』 とインスタとYoutubeで伺って、たくさんの方が『楽しい!』と答えてくださったので、真紀ちゃん視点をねじこみました!(笑)
あわあわリスのスタンプもつくって載せてみました(笑)

ふとっぱらな愛希ちゃん(笑)の動画をインスタとYouTubeにあげたので、もしよかったら!

読んでいて『楽しい!』と思っていただけるようなお話が書けたらいいなと思って、がんばりますー!

お気に入りや、いいねやエール、ご感想で応援してくださる皆さま、読んでくださるあなたさまに、心から、ありがとうございます!



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