107 / 213
のれません
しおりを挟む皆で、ネメド王国ヴァデルザ領との国境に向かうことになりました。
「フィリ先生は、いらっしゃらないのですか?」
手を挙げるキーアに、ゼァル将軍が眉をあげる。
「先に行ってくれている。森に入っているかもしれない民の探索、保護と避難を」
なるほど。
既にご活躍中でした。
騎馬で、国境まで向かうことになったのだけれど、残念ながら前のキーアは両手にトマどーなつを持って頬張ることだけに一生懸命で、ニューキーアはロデア大公立学園の入学試験に合格することで精いっぱいだったので、乗馬スキルを磨く余裕はなかったのでした。
「……すみません、馬に乗れません……!」
申し訳なく挙手するキーアと一緒に、ネィトも手を挙げる。
「僕も、馬はちょっと、自信ないです……ごめんなさい」
「僕も乗れないので、どなたか乗せてください♡」
マェラの瞳が、輝いてる! やる気だ! 攻略対象の攻略をね。
「キーアは僕の馬にのせてあげる♡」
「俺が乗せる」
「え、ここは学園長の僕でしょ」
ルゥイとレォとハゥザ学園長が、バチバチしはじめて
「あー、もー、じゃんけんしろ」
ゼァル将軍の一声で、じゃんけんになりました。
この世界でも、ちょっと手の形とか違うけど、じゃんけんがあるんだよ!
「でりゃあぁあアァア──!」
「うぉおおお!」
「ふんぬうぅうう!」
じゃんけんの時の心構えじゃない気がする、たいへんな気魄で行われたじゃんけんで
「勝ったぁあアア──!」
ルゥイが拳を突きあげました。
さらさらはちみつポジなルゥイのキャラが、ちょっと崩壊してる気がするよ? 気のせいかな?
「じゃあネィトは俺が」
ひょいとレォに抱きあげられたネィトが
「ありがとう、レォさま」
ふつうにお辞儀してる。
『きゃー♡ きゃー♡』してないよ、ネィト! 悪役令息なのに!
心配するキーアの隣で、マェラのぴんくの目が輝いた。
「じゃあ僕は、ハゥザ学園長の馬に──」
腕に抱きつかれそうになったハゥザが、さっとマェラを避けてる!
「ガダ、乗せてあげて」
「ほーい!」
「わー♡ ガダ先輩、よろしくお願いしまーす! マェラです♡」
切り替えの早いマェラ! さすが主人公!
というわけで、キーアはルゥイが乗っけてくれました。
「だいじょうぶ? こわくない?」
「びっくりするほど高いし、思ったよりずっと揺れるけど、ルゥイと一緒だから。へいき」
ふわふわ熱い頬で笑ったら、とろけるはちみつみたいにほわほわ朱いまなじりでルゥイが笑ってくれる。
前のキーアの記憶によると、ロデア大公国はネメド王国の王兄が身分制度に反対して興した国、ということになっているし、その通りなのだけれど。
大陸一のかんばせの平民(男)とネメド国王(男)の間に生まれた第一子である王兄が、王の血を継ぎながらも蔑まれ、差別されつづけ、王兄であるにも関わらず、魔物のはびこる大陸の魔界とも呼ばれるヴァデルザ領の隣の領地に押しこめられたことに憤激して興した国が、ロデア大公国だ。
無くなっても痛くも痒くもない僻地で、特筆する産業も農産物も特産品も何もなかったために、激おこな王兄が離反して国を興しても『ああ、はいはい、ご勝手にどうぞ』スルーされたらしい。
『下賤な民の血と王の血を継ぐ穢らわしい存在を国外追放できて、うれしーな!』喜ばれる事態だったという。ひどすぎる。
泣きながら離反した王兄は、ひどい差別に苦しんでいた下位貴族や領民たちと一緒に、ロデア大公国を興したんだよ。
何にもなかった荒れ地を開墾し、今までなかった場所に宿場町をつくり交易網を整備し、顔面力を駆使して外交も頑張った結果、ちゃんと大陸で国として認められるようになりました。
というわけで大公家は、すさまじい顔面力を誇り、ロデア大公国は大陸三大不思議のひとつである、なぜか魔物が湧くネメド王国ヴァデルザ領と隣接している。
ネメド王国ヴァデルザ領は、敵国ドディア帝国とは地獄の天蓋とまで呼ばれるエベレストを超えるような山々に隔てられているので、ドディア帝国側では被害がないらしいけれど、森で繋がっているロデア大公国には、ヴァデルザ領主のすさまじい狩りをくぐり抜けた魔物が逃げてくることがあるのです。
とくに秋から冬にかけては、厳しすぎるヴァデルザ領の冬から逃れてくるためなのか、食糧を求めてなのか、ロデア大公国に逃げてくる魔物がいる。
毎年の恒例行事みたいに、騎士団と魔導士団が魔物討伐に向かうことになっていて、それがBLゲームの最終イベントに組み込まれたみたいだよ。
今は春なので、ロデア大公立学園も始まったばかりなので、かなり異例です。
「ひどい立地だけど、ネメド王国のヴァデルザ領で魔物が湧くのを討伐し続けてくれているから、ロデア大公国の被害はこれだけで済んでるんだよね」
ルゥイの馬に乗っけてもらったキーアは、後ろを見あげる。
あったかいルゥイのぬくもりと、ルゥイのとろける香りに包まれて、頬が熱くなってしまうのは、攻略対象効果なので、どうか、ゆるしてください。
ほわほわ朱いまなじりで、ルゥイが頭をなでなでしてくれると、やっぱりうれしくて、ふわふわ笑ってしまうのです。
1,187
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
もふもふ獣人転生
* ゆるゆ
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
もふもふ獣人リトと、攻略対象の凛々しいジゼの両片思い? なお話です。
本編、完結済です。
魔法学校編、はじめました!
リクエストのお話や舞踏会編を読まなくても、本編→魔法学校編、でお話がつながるように書いています。
リトとジゼの動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントなくてもどなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
第12回BL大賞さまで奨励賞をいただきました。
読んでくださった方、応援してくださった皆さまのおかげです。ほんとうにありがとうございました!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる