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ごめんなさい!
紀太の記憶がよみがえったのが大公歴175年、春のロデア大公国建国日を過ぎたから今は176年だ。
176年経っても受け継がれ続ける、大陸に誇れるルゥイのかんばせを見あげるキーアの目がうっとりしてしまうのは、仕方ないともいえる。
身分にうるちゃい王も、ころっとひと目でやられてしまうかんばせ!
ぽわんと熱い頬でみあげるキーアの頭を、ルゥイのごつごつの手がなでなでしてくれる。
「できれば大陸最強と謳われるヴァデルザ領主に魔物の殲滅をお願いしたいところだけれど、魔物も生き物だし、人間を攻撃しないものもいるからね。うまく共存できればいいんだけど」
吐息するルゥイの眉に苦渋が滲んで、キーアは微笑んだ。
「ルゥイ、やさしいね」
きゅっと手綱をとるルゥイの手を握ってしまう。
背中から、ルゥイがぎゅっと抱きしめてくれる。
「惚れなおした?」
「うん!」
思いっきり、うなずいてしまいました……!
ルゥイ大すきなの、全肯定だよ!
はずかしい!
もだもだするキーアを抱っこするルゥイの腕がぎゅうぎゅうして
「はぁア──!?」
隣を騎馬で駆けてるレォの目が、吊りあがってる。
「きーちゃん、ひどい!」
レォに抱っこされた悪役令息ネィトが涙目だ。
ちゃんとしようと思ったそばから、攻略対象の魅力に即行やられてしまう伴侶(予定)でごめんなさい!
顔も名前も声もないモブに、攻略対象の輝きとぬくもりといー匂いは、紀太の記憶が強いからなのか、なんかもう、抗えないんだよ、ごめんね、ネィト──!
「ご、ごめんなさい!」
あわあわ謝ったキーアは、首をかしげる。
……あれ? おかしいな。
攻略対象なレォに抱っこされて、馬に乗るという垂涎のシチュエーション、スチル確実なおいしい展開なのに、ネィトが『きゃー♡ きゃー♡』してないよ?
目が潤んでるけど、うれしいわけじゃなくて、キーアを糾弾する涙目なような……?
「場所、代われ、ルゥイ!」
長い青磁の髪をなびかせて叫ぶレォに、ルゥイはたのしげに眉をあげる。
「ふふふん。僕のじゃんけんの強さをあまく見たね、レォ」
勝負強くて圧勝なルゥイ。
さすが人気投票第一位。はちみつポジは揺るがない。
この魔物討伐イベントは、紀太の記憶によると、BLゲームのラストイベントだ。
これで恋愛ハッピーエンドになるか友情エンドになるかが決定されてしまう。
悪役令息との決闘でたまる経験値で、主人公のレベルMax、魔法科の場合は魔術と魔力Max、騎士科の場合は武術と勇敢Maxだと魔物の討伐が成功して、恋愛ハッピーエンドへ!
パラメータがMaxに到達していない、ハッピーエンド条件をクリアしていない、悪役令息との決闘にすべて勝利していない場合は、友情エンド、または大団円エンド、もしくは敗北エンドになるという切ない仕様だった。
敗北した場合は、隠しキャラの将軍ゼァルと大魔法使いのフィリがたすけに来てくれてスチルも出るので、紀太にとってはごほうびエンドでした!
今は春だし、ロデア大公立学園も始まったばかりだし、主人公マェラは今回失敗しても、冬にやってくるだろう討伐イベントでリベンジできると思う。
BLゲームなら、敗北しても『スチル回収! わーい!』で済むけれど。
この世界は現実だ。
ちゃんと痛いし、血も出るし、死んでしまう。
魔物の討伐に失敗したら、騎士団にも魔導士団にも、民にも死傷者が出てしまうかもしれない。
そうならないように
「俺、めちゃめちゃがんばる!」
ちっちゃな拳を握るキーアに、皆の目が生あたたかくなってる。やさしい。
キーアの髪がもしょもしょして
『ぼ、僕も、がんばる!』
闇さまも、ちっちゃな拳をにぎってくれる。かわいー!
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