悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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もっちもっち

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 たっぷたっぷ、ふっにゃふっにゃ、もっちもっち悪役令息、爆誕だよ!

 ちょこっと、よれよれしてるけど、まあだいじょうぶ!

 みずみずしくなって、いいんじゃないかな!

 
 元々だいふくな僕は、たぷたぷしてても、いつもより水分多めだなっていう感じなのだけれど、でも

「ゆりさま、ほんとうに、ほんとうにごめんなさい……!」

 カイが泣いちゃう……!


「僕がわるかったんだよ。カイは何にもわるくない」

 抱っこして、カイのちっちゃい頭をなでなでするのですが、すんすん鼻をすするカイが、めちゃくちゃ可愛いのですが、カイの涙目が止まらないよー!

 いっしょうけんめい魔素を集めてみたけど、やっぱり、集まらないんだよ。
 大気中の酸素を集めてみましょう、イメージで! って、無理じゃない?

 15年も、おさぼりしてしまった修練は、なかなかうまくいかないみたいです……


 ……ということは?

「……や、やっぱり、光の魔力もらうべき……? やだー! たすけて、ロドお兄ちゃん!」

 頼ってみました!

 ロドア邸の執務室で、当主補佐のお仕事をしていたはずのロドお兄ちゃんが、爆速で駆けてきてくれる。

「ゆりちゃん、今、僕を呼んだよねぇええ──!」

 とろけそうに笑ってくれるロドお兄ちゃん!

 すごい耳だよ!

 ふつうにしてると、しゅっとした、かっこいーお兄ちゃんなのですが、僕の前だと、せっかくのお顔が溶けてるような……?

 気のせいかな?

 ちょっと心配になりながら、僕はお兄ちゃんを見あげる。

「あの、ロドお兄ちゃん、僕、光の魔力がほしいみたいなの」

 ロドお兄ちゃんの涼やかな眉が、へにょりと下がった。

「あぁあゆりちゃん! 今すぐたすけてあげたいのに、僕の魔法は闇なんだよ──!」

 知ってる。

 ロドお兄ちゃんは、ぜったい闇だと思った!

 だって、ときどき背中から噴いてる!
 ……カイもだけど。だからカイが水は意外だったけど。

「……今、失礼なことを思わなかったかな? 闇はやさしい力なんだからね!」

「もちろんだよ、やさしいロドお兄ちゃん!」

 きゅ、と両手をにぎってみました。


「あぁああ! ゆりちゃん……! なんてかわい──!」

 ぎゅむぎゅむ、僕を抱っこして、とろけたロドお兄ちゃんが、ちょろ……やさしいです!


「光魔法を使えるのは王族だけって聞いたけど、何もあの人じゃなくても、他にも王族いるよね? 遠縁のおじいちゃんとか、誰かいませんか!」

 血が繋がってれば、血のうすーい人とか、ちょこっと光魔法が使える人でいいんだよー!
 おじいちゃんだと、えちえちな感じにもならないし、よいのでは??

 期待で見あげる僕に、ロドお兄ちゃんは吐息した。

「魔力譲渡ができるほど光の魔力が高い人となると、ほぼ直系だね。光の魔力が最も強い人が王になるから。次代の最も強い者が王太子なんだよ」

 ……な、なるほど……

「うぅ。もちょっと弱い人で、誰かは?」

 いるでしょう!
 きっと!

 期待に満ち満ちて見あげたら、ロドお兄ちゃんは目をそらした。

「……ゆりちゃんに絶対近づけたくないような素行のわるいのが王立魔法学園に通ってる」

「……な、なるほど……?」


 伴侶(予定)契約を一方的に破棄した王太子か、素行の大変よろしくない人、2択なの……?

 き、きびしくない──!?


「あまり紹介したくないし、逢わせたくないし、今は魔法学園に行くべきじゃない。
 ゆりちゃんは、大変な大怪我で療養中なんだから!」

「……な、なるほど……?」

 そういうことになってるから、魔法学園にも行けないんだね。

 やっぱり僕、みずみずしい大福のままでいいんじゃないかな!


「ゆりさま、ごめんなさい……!」

 あぁああ、カイが泣いちゃう……!


「し、仕方ない。そ、素行のわるいほうのお家に行ってみよう……!」


 ど、どきどきするよ……!

 ……そ、素行が、よくない……


『うおりゃあぁあ!』

『誰が魔力なんかやるかぁあ──!』

『帰れ、だいふく──!』

 とか言われちゃう?



 こ、こわい……!

 で、でも、カイが泣いちゃうから、が、がんばって、みる、よ……!


 ぉー……!

 決意の声も、ちっちゃいよ!


 きゃ──!






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