21 / 148
もっちもっち
しおりを挟むたっぷたっぷ、ふっにゃふっにゃ、もっちもっち悪役令息、爆誕だよ!
ちょこっと、よれよれしてるけど、まあだいじょうぶ!
みずみずしくなって、いいんじゃないかな!
元々だいふくな僕は、たぷたぷしてても、いつもより水分多めだなっていう感じなのだけれど、でも
「ゆりさま、ほんとうに、ほんとうにごめんなさい……!」
カイが泣いちゃう……!
「僕がわるかったんだよ。カイは何にもわるくない」
抱っこして、カイのちっちゃい頭をなでなでするのですが、すんすん鼻をすするカイが、めちゃくちゃ可愛いのですが、カイの涙目が止まらないよー!
いっしょうけんめい魔素を集めてみたけど、やっぱり、集まらないんだよ。
大気中の酸素を集めてみましょう、イメージで! って、無理じゃない?
15年も、おさぼりしてしまった修練は、なかなかうまくいかないみたいです……
……ということは?
「……や、やっぱり、光の魔力もらうべき……? やだー! たすけて、ロドお兄ちゃん!」
頼ってみました!
ロドア邸の執務室で、当主補佐のお仕事をしていたはずのロドお兄ちゃんが、爆速で駆けてきてくれる。
「ゆりちゃん、今、僕を呼んだよねぇええ──!」
とろけそうに笑ってくれるロドお兄ちゃん!
すごい耳だよ!
ふつうにしてると、しゅっとした、かっこいーお兄ちゃんなのですが、僕の前だと、せっかくのお顔が溶けてるような……?
気のせいかな?
ちょっと心配になりながら、僕はお兄ちゃんを見あげる。
「あの、ロドお兄ちゃん、僕、光の魔力がほしいみたいなの」
ロドお兄ちゃんの涼やかな眉が、へにょりと下がった。
「あぁあゆりちゃん! 今すぐたすけてあげたいのに、僕の魔法は闇なんだよ──!」
知ってる。
ロドお兄ちゃんは、ぜったい闇だと思った!
だって、ときどき背中から噴いてる!
……カイもだけど。だからカイが水は意外だったけど。
「……今、失礼なことを思わなかったかな? 闇はやさしい力なんだからね!」
「もちろんだよ、やさしいロドお兄ちゃん!」
きゅ、と両手をにぎってみました。
「あぁああ! ゆりちゃん……! なんてかわい──!」
ぎゅむぎゅむ、僕を抱っこして、とろけたロドお兄ちゃんが、ちょろ……やさしいです!
「光魔法を使えるのは王族だけって聞いたけど、何もあの人じゃなくても、他にも王族いるよね? 遠縁のおじいちゃんとか、誰かいませんか!」
血が繋がってれば、血のうすーい人とか、ちょこっと光魔法が使える人でいいんだよー!
おじいちゃんだと、えちえちな感じにもならないし、よいのでは??
期待で見あげる僕に、ロドお兄ちゃんは吐息した。
「魔力譲渡ができるほど光の魔力が高い人となると、ほぼ直系だね。光の魔力が最も強い人が王になるから。次代の最も強い者が王太子なんだよ」
……な、なるほど……
「うぅ。もちょっと弱い人で、誰かは?」
いるでしょう!
きっと!
期待に満ち満ちて見あげたら、ロドお兄ちゃんは目をそらした。
「……ゆりちゃんに絶対近づけたくないような素行のわるいのが王立魔法学園に通ってる」
「……な、なるほど……?」
伴侶(予定)契約を一方的に破棄した王太子か、素行の大変よろしくない人、2択なの……?
き、きびしくない──!?
「あまり紹介したくないし、逢わせたくないし、今は魔法学園に行くべきじゃない。
ゆりちゃんは、大変な大怪我で療養中なんだから!」
「……な、なるほど……?」
そういうことになってるから、魔法学園にも行けないんだね。
やっぱり僕、みずみずしい大福のままでいいんじゃないかな!
「ゆりさま、ごめんなさい……!」
あぁああ、カイが泣いちゃう……!
「し、仕方ない。そ、素行のわるいほうのお家に行ってみよう……!」
ど、どきどきするよ……!
……そ、素行が、よくない……
『うおりゃあぁあ!』
『誰が魔力なんかやるかぁあ──!』
『帰れ、だいふく──!』
とか言われちゃう?
こ、こわい……!
で、でも、カイが泣いちゃうから、が、がんばって、みる、よ……!
ぉー……!
決意の声も、ちっちゃいよ!
きゃ──!
2,464
あなたにおすすめの小説
夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。
伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。
子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。
ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。
――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか?
失望と涙の中で、千尋は気づく。
「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」
針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。
やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。
そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。
涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。
※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。
※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた
谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。
就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。
お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中!
液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。
完結しました *・゚
2025.5.10 少し修正しました。
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。
ivy
BL
⭐︎毎朝更新⭐︎
兄の身代わりで望まれぬ結婚を押しつけられたライネル。
冷たく「帰れ」と言われても、帰る家なんてない!
仕方なく寂れた村をもらい受け、前世の記憶を活かして“投資”で村おこしに挑戦することに。
宝石をぽりぽり食べるマスコット少年や、クセの強い職人たちに囲まれて、にぎやかな日々が始まる。
一方、彼を追い出したはずの旦那様は、いつの間にかライネルのがんばりに心を奪われていき──?
「村おこしと恋愛、どっちも想定外!?」
コミカルだけど甘い、投資×BLラブコメディ。
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる