悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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むり!




 カイに魔力を流してもらった僕の身体は、ふしぎだ。

 水のなかに入っているみたいに、ふわふわ、ゆらゆらしてる。

 指先から、水があふれるような気さえする。


「ふしぎ」

 自分の手をかざしたら、指を重ねてくれたカイが微笑んだ。

「俺も、ゆりさまに魔力を流すのが、こんなに気持ちいいなんて、知りませんでした」

 ちゅうっと首に口づけてくれたら、うっとりしてしまうように、なってしまいましたよ……!

 どどどどどうしよう!

 悪役令息じゃなくて、えちえち令息じゃない!?

 きゃ──!


 あわあわしてたら、身体がたぷたぷしてる。

 だいふくが、よりもっちりに!

 水分多めだよ。
 お砂糖を足さなきゃだよ。





「せんせー、僕、たぷたぷになっちゃった!」

 翌朝、家庭教師に来てくれたおじいちゃん魔導士に相談する前から、たっぷたっぷ、よたよた歩いている僕を見た、しわの向こうのおじいちゃんの鋭い目が、カイを刺してる。

「……魔力を流したな?」

「ぴーぴー」

 あさっての方を向いて、カイが口笛を吹いてる!

「こりゃ!」

 おじいちゃんに、しかられたカイが、しょんぼりしてる。

「……申しわけありません。ユィリおぼっちゃまに、魔力の感覚を理解していただきたく、ちょこっと魔力を注ぐつもりが……その……あまりに心地よくて、たっぷり──」

「こりゃ──!」

 しかられたカイが、涙目だ。

「も、申しわけございません!」

 ひと言も『僕にねだられたから仕方なく』言わなかったカイに、飛びあがる。

「ち、違うんです、おじいちゃん! 僕が、魔素の感覚を教えてほしいって、カイにお願いしたんです。カイは、わるくありません!」

 あわあわカイを守るように両腕を広げる僕のだいふくな顔を、心配そうなおじいちゃんがのぞきこむ。

「ユィリおぼっちゃま、気分がわるいとか、頭がぐらぐらするとか、いつもと違う感覚は?」

「たぷたぷです!」

 今も指から、ぴゅーって水が出そうな感じがするよ。

「水の魔力が多過ぎるのですじゃ。いけません。魔力を放出しようにも、ユィリおぼっちゃまは、水の魔法を使えない」

「あぅう」

 治癒魔法しか使えない僕。

 ちょこっとしたすり傷しか治せないということは、ちょこっとしたすり傷をしちゃった人を探さなきゃ?

 た、たいへん!


「なんてことをしたのじゃ!」

 おじいちゃんが、おこです……!

「ほんとうに申しわけなく……ゆりさま……!」

 泣きだしそうなカイを抱きしめる。


「カイは僕のおねだりに応えてくれただけだよ! 僕がいけなかったの。ごめんなさい……!」

 僕も、号泣だよ!
 いつもやさしいおじいちゃんが、激おこになるほど、いけないことだったんだね……!

「こんなにおやさしい、ゆりさまに、わたくしは何ということを……!」

 泣きだした僕とカイに、おじいちゃんは、もしゃもしゃの白い眉をさげた。


「知らなかったとはいえ、命に関わることもあるのですぞ。重々気をつけるように!」

 激おこタイム、終了してくれたみたいです。やさしい。

「はい!」

 僕もカイも一緒に反省しました。


「ごめんね、カイ」

「わたくしが悪かったのです、申しわけございません、ユィリおぼっちゃま……!」

 泣いちゃうカイの頭をなでなでしてたら、おじいちゃんは吐息した。


「仕方ありませんのう。ここは光の魔力を補充して、治癒魔法を使って放出するしかありませんのじゃ」

「おねがいします!」

 首をだした僕に、おじいちゃん魔導士は首をふる。


「ロベナ王国で光魔法を使えるのは、王族だけ。だからこそ王族でいられるのですじゃ」

 …………………………。

「…………え…………?」

 とっても、とっても、いやな予感がするよ……?


「ユィリおぼっちゃまの、水の魔力過多を何とかできるのは、クソ王太子殿下ということになりますのう」


「えぇえぇ──!」

 おじいちゃんも、クソって言った!

 ちがう!

 伴侶(予定)契約を破棄してきたセゥス王太子に『ちょっと光の魔力を分けてください』って言うの?

 首に、ちゅうされて、魔力を補充してもらうの?


「むり──!」

 泣いちゃう!



 たぶん、向こうだって、絶対いやがる!

「僕、たぷたぷのままでいいですぅう──!」


 水分多めの、しっとり大福だよ!

 お砂糖足したら、ぷるぷるで、おいしいよ! たぶん!









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