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むり!
カイに魔力を流してもらった僕の身体は、ふしぎだ。
水のなかに入っているみたいに、ふわふわ、ゆらゆらしてる。
指先から、水があふれるような気さえする。
「ふしぎ」
自分の手をかざしたら、指を重ねてくれたカイが微笑んだ。
「俺も、ゆりさまに魔力を流すのが、こんなに気持ちいいなんて、知りませんでした」
ちゅうっと首に口づけてくれたら、うっとりしてしまうように、なってしまいましたよ……!
どどどどどうしよう!
悪役令息じゃなくて、えちえち令息じゃない!?
きゃ──!
あわあわしてたら、身体がたぷたぷしてる。
だいふくが、よりもっちりに!
水分多めだよ。
お砂糖を足さなきゃだよ。
「せんせー、僕、たぷたぷになっちゃった!」
翌朝、家庭教師に来てくれたおじいちゃん魔導士に相談する前から、たっぷたっぷ、よたよた歩いている僕を見た、しわの向こうのおじいちゃんの鋭い目が、カイを刺してる。
「……魔力を流したな?」
「ぴーぴー」
あさっての方を向いて、カイが口笛を吹いてる!
「こりゃ!」
おじいちゃんに、しかられたカイが、しょんぼりしてる。
「……申しわけありません。ユィリおぼっちゃまに、魔力の感覚を理解していただきたく、ちょこっと魔力を注ぐつもりが……その……あまりに心地よくて、たっぷり──」
「こりゃ──!」
しかられたカイが、涙目だ。
「も、申しわけございません!」
ひと言も『僕にねだられたから仕方なく』言わなかったカイに、飛びあがる。
「ち、違うんです、おじいちゃん! 僕が、魔素の感覚を教えてほしいって、カイにお願いしたんです。カイは、わるくありません!」
あわあわカイを守るように両腕を広げる僕のだいふくな顔を、心配そうなおじいちゃんがのぞきこむ。
「ユィリおぼっちゃま、気分がわるいとか、頭がぐらぐらするとか、いつもと違う感覚は?」
「たぷたぷです!」
今も指から、ぴゅーって水が出そうな感じがするよ。
「水の魔力が多過ぎるのですじゃ。いけません。魔力を放出しようにも、ユィリおぼっちゃまは、水の魔法を使えない」
「あぅう」
治癒魔法しか使えない僕。
ちょこっとしたすり傷しか治せないということは、ちょこっとしたすり傷をしちゃった人を探さなきゃ?
た、たいへん!
「なんてことをしたのじゃ!」
おじいちゃんが、おこです……!
「ほんとうに申しわけなく……ゆりさま……!」
泣きだしそうなカイを抱きしめる。
「カイは僕のおねだりに応えてくれただけだよ! 僕がいけなかったの。ごめんなさい……!」
僕も、号泣だよ!
いつもやさしいおじいちゃんが、激おこになるほど、いけないことだったんだね……!
「こんなにおやさしい、ゆりさまに、わたくしは何ということを……!」
泣きだした僕とカイに、おじいちゃんは、もしゃもしゃの白い眉をさげた。
「知らなかったとはいえ、命に関わることもあるのですぞ。重々気をつけるように!」
激おこタイム、終了してくれたみたいです。やさしい。
「はい!」
僕もカイも一緒に反省しました。
「ごめんね、カイ」
「わたくしが悪かったのです、申しわけございません、ユィリおぼっちゃま……!」
泣いちゃうカイの頭をなでなでしてたら、おじいちゃんは吐息した。
「仕方ありませんのう。ここは光の魔力を補充して、治癒魔法を使って放出するしかありませんのじゃ」
「おねがいします!」
首をだした僕に、おじいちゃん魔導士は首をふる。
「ロベナ王国で光魔法を使えるのは、王族だけ。だからこそ王族でいられるのですじゃ」
…………………………。
「…………え…………?」
とっても、とっても、いやな予感がするよ……?
「ユィリおぼっちゃまの、水の魔力過多を何とかできるのは、クソ王太子殿下ということになりますのう」
「えぇえぇ──!」
おじいちゃんも、クソって言った!
ちがう!
伴侶(予定)契約を破棄してきたセゥス王太子に『ちょっと光の魔力を分けてください』って言うの?
首に、ちゅうされて、魔力を補充してもらうの?
「むり──!」
泣いちゃう!
たぶん、向こうだって、絶対いやがる!
「僕、たぷたぷのままでいいですぅう──!」
水分多めの、しっとり大福だよ!
お砂糖足したら、ぷるぷるで、おいしいよ! たぶん!
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※第3話を少し修正しました。
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※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
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※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。