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まほーつかい
しおりを挟む光の魔力をわけてもらうために、粗暴らしい王族さんに逢いにゆくよ!
というわけで、僕の従僕なカイといっしょに、馬車でお出かけなのです。
『出歩いてるじゃん!』
『元気じゃん!』
『大怪我してないじゃん!』
『うそつき!』
ロドお兄ちゃんとサザお兄ちゃんが糾弾されたら大変なので、こっそりなのです。
見られても大丈夫なように、悪役令息っぽい真っ暗なローブを着てみたら、あやしさ満開だよ!
「あわわわわ! 今にも悪役令息な物語がはじまりそう! きけん!」
そう、僕は、悪役令息になりたいのではなく、悪役令息を改めたいのです──!
「あわわわわ」
あわあわしてたら、しゃっとカイが出してくれたのは、可愛い白のローブでした。
ふりふり。
ひらひら。
きゅるきゅる。
「……え……これ……?」
「ぜひお召しになってください!」
カイの目が、きらきらしてる……!
「う、うぅん……? 王族さんを訪問するのに、これって、ありなの、かな……?」
「ありだよ!」
「おおありだよ──!」
「ぜひ着て、ゆりちゃん──!」
お兄ちゃんたちだけじゃなく、両親までやってきて両手をにぎってくれたので、着てみることにしました。
「おぉお……?」
ひらっひら、ふりっふりの、魔法少女みたいなローブだよ……!
フードを目深にかぶったら、ちっちゃい魔法使いみたいになりました。
「こ、これ、だ、だいじょうぶ……?」
心配で見あげたら、お兄ちゃんたちと両親とカイが、泣いてる。
「ゆりちゃん、かわい──!」
「きゃ──!」
「ぐぅ……!」
家族(カイ含む)には、評判がよいみたいです?
そして、ほめられるとすぐ調子に乗る僕!
悪役令息みたいだから、改めようと思うのに、家族が「かわいい」って言ってくれたら、ぷにぷにほっぺが、ぽわぽわしちゃう!
「えへへ。僕、まほーつかい!」
きゅ、と両手をかかげたら、お見送りに来てくれた、おじいちゃん魔導士が頭をぽふぽふしてくれました。
「気をつけて、行ってくるのですぞ。
くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも、魔力をもらいすぎませんようにな!」
くれぐれも3回言われました。
信用のない僕!
ちょっとしょんぼりだよ。
カイと一緒に乗りこむ馬車は、家紋のない、質素な辻馬車っぽい馬車なのです。
そんな馬車が常備してあるロドア家。
あやしいよね。
悪役令息のお家だしね!
でも、ふつうに商談に使ったりするのに便利だから置いてあるみたいだよ。平民さんはこっちの馬車のほうが気兼ねがないから喜んでくれるんだって。
よかった。悪徳なお家じゃなくて!
「ゆりちゃんが、お出かけするなら、僕も行くぅううう──!」
ぷよぷよの僕に抱きついてくるロドお兄ちゃんが、おかあさんに止められてる。
「大切な商談があるから! ゆりちゃんのおやつが買えなくなったらどうするの!」
「あ、大変──!」
ロドお兄ちゃんが、理性を取り戻してくれました。僕のおやつで!
……ロドア家、だいじょぶなのかな……? 心配になってきたよ!
「ゆりちゃんのおやつが途切れないように、僕、がんばるからね!」
なるほど、ロドお兄ちゃんと、おかあさんのがんばりのおかげで、僕のぷにぷに大福は維持されているのですね!
あまいの、貴重だからね。
はちみつとか、とっても高いみたい。
僕をあまやかすために、浪費はげしいロドア家……!
ごめんなさい……!
でもはちみつ、うれしい!
悪役令息っぽい……! でもここは改めたくないよう……! ごめんなさい! ゆるして!
あまいものが食べられなくなったら、僕、はかなくなっちゃう……!
「いつもありがとー、ロドおにいちゃん、おかあさん」
きゅ、と両手をにぎって感謝を表してみたら
「はにゃー♡」
ふたりが溶けてる。かわいい。
「おとうさんと俺は、おかあさんとロド兄の応援があるから! ゆりちゃんは頼むぞ、カイ!」
サザお兄ちゃんの応援を受けたカイが、うやうやしく胸に手をあてる。
さらさらの夜の髪が流れて、今日もカイが、めちゃくちゃかっこい──! です!
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