悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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ささる




 家族皆の『ゆりちゃんを頼む!』を受けたカイが、僕を守るように、やさしく微笑んでくれる。

「頼んでくださったこと、身にあまる栄誉にございます。
 見事つとめを果たせるよう、ゆりさまに害をなすものを、せんめつして参ります」

 うやうやしく胸に手をあてるカイが、キリっとしてる。

 ……な、なんかちがう目的になってるよ!

 ときどき物騒なカイ!


「だ、だいじょぶだよ……! 光の魔力をわけてくれませんかって、お願いにゆくだけだよ!」

 あわあわする僕の後ろで

「よろしく頼む」

 ロドア家の皆が、うむうむしてる件について!
 





 背中からちょこっと闇がにじみそうなカイといっしょに、ちっちゃい魔法使いになった僕は、おでかけです!

 ふわふわ、ひらひら、ふりふりだよ。

「ほ、ほんとに、だいじょうぶ……?」

 心配な僕に、カイはほんのり朱い耳で、こっくりうなずいた。

「ゆりさま、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、お可愛らしいです!」

 拳をにぎるカイと一緒に、馬車の扉を開けてくれたロドア家の御者さんも拳をにぎってる。

「ユィリおぼっちゃまは、世界一、ぷにぷにでさあ!」

 ……うぅん?

 それはもしかして、真実かもしれないね! うん!

 カイが、御者さんに突っこんでいいのか、ほめたらいいのか、複雑な顔になってる。かわいい。


「じゃあ、出しますぜ、ユィリおぼっちゃま!」

「はあい! よろしくお願いしますー! お馬さんも、よろしくね」

 ヒヒン!

 首をなでなでしたら、つやつや栗毛の馬さんが、元気に鳴いてくれました。
 質素な、どこにでもある感じの馬車に乗りこんだら、出発だよ!

 びっくりするくらい揺れるけど、これは前の僕が慣れてるみたい。今の僕はちょっとびっくりだよ。おしりが浮いちゃう!

 ロドア家は下位貴族なので、王都の貴族街の端っこらへんに家があるんだよ。
 しばらく走ると王都の中央、にぎやかな市場が開かれる円形広場や繁華街があり、大きな時の鐘の塔が建ってる。
 高いから、どこからでも見えて目印にもなるんだよ。

 裕福な商人の家が並び、ふつうの平民の家が並び、あんまり豊かじゃない人たちの家が並ぶ王都の端を過ぎたら、一気に緑が増えてくる。

 ぴちちち鳥が鳴いてる。
 樹々の緑が揺れて、空が青くて、高くて、風がおいしい。

「おぉ!」

 窓から顔を出そうとしてしまう僕を、カイが後ろから抱っこしてくれる。

「あぶないです、ゆりさま」

「はぁい」

 なんでもないみたいに答えたけど、背中からつつまれるカイのぬくもりに、カイの香りに、どきどきしちゃう……!

 耳が熱いのです。

『カイが、かぷかぷ、かじってくれないかな……』

『僕、カイの水の魔力で、いつもより、ぷにぷにだよ。おいしいよ』

『今きっと、いちごだいふくだよ』

 とか思ってしまう僕は、えちえち令息なのかも……!

 きゃ──!


 もだもだしてたら、離宮に到着です!


「ゆりさま、お手をどうぞ」

 先に降りたカイが、手を差しだしてくれる。

 かっこよすぎて、めろめろしちゃう……!

 うっとりしてたら、ひょいと、おひめさま抱っこされてしまいました。


 きゃ──!


「か、かかかカイ!?」

 あわあわする僕に、カイが微笑む。

「ゆりさまは、病みあがりですから。ころぶと大変です」

 ………………。

 移動がカイの、おひめさま抱っことか、ありなの……!?

 …………………………。

 フードかぶってるしね。
 ちっちゃい魔法使いだしね。

 ……い、いいのかな……?

 あこがれの、おひめさま抱っこだよ……!

『歩けるよ、だいじょうぶ』とか、言いたくないよ──!


 カイが抱っこしてくれるのがうれしくて、ぎゅうっと抱きついてしまうのです。


 ぎゅうう

 抱きしめかえしてくれるカイが、やさしい……!


「はにゃー♡」

 カイのいー匂いで胸をいっぱいにしていたら


「……人の家の前で、何いちゃついてんだ……!」

 すんごい低い声がした。

 ぴょこんと跳びあがった僕は、あわあわ、ほんとはちっとも離れたくないカイの腕から降りる。


「あ、ご、ごめんなさい。えとえと、もしかして、ノゥス・ロベナさまですか!」

 ちょこっとフードをあげたみた僕の前で、すこし長めの藍の髪が春の風に流れた。

 切れあがる瞳は、陽のひかりだ。

 僕をにらみつけた、同い年くらいの少年が瞬いた。


「……あれ、お前、兄貴に振られた、元伴侶(予定)か」


 ぐさ──!

 なんか刺さった!







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