悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
24 / 183

ささる

しおりを挟む



 家族皆の『ゆりちゃんを頼む!』を受けたカイが、僕を守るように、やさしく微笑んでくれる。

「頼んでくださったこと、身にあまる栄誉にございます。
 見事つとめを果たせるよう、ゆりさまに害をなすものを、せんめつして参ります」

 うやうやしく胸に手をあてるカイが、キリっとしてる。

 ……な、なんかちがう目的になってるよ!

 ときどき物騒なカイ!


「だ、だいじょぶだよ……! 光の魔力をわけてくれませんかって、お願いにゆくだけだよ!」

 あわあわする僕の後ろで

「よろしく頼む」

 ロドア家の皆が、うむうむしてる件について!
 





 背中からちょこっと闇がにじみそうなカイといっしょに、ちっちゃい魔法使いになった僕は、おでかけです!

 ふわふわ、ひらひら、ふりふりだよ。

「ほ、ほんとに、だいじょうぶ……?」

 心配な僕に、カイはほんのり朱い耳で、こっくりうなずいた。

「ゆりさま、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、お可愛らしいです!」

 拳をにぎるカイと一緒に、馬車の扉を開けてくれたロドア家の御者さんも拳をにぎってる。

「ユィリおぼっちゃまは、世界一、ぷにぷにでさあ!」

 ……うぅん?

 それはもしかして、真実かもしれないね! うん!

 カイが、御者さんに突っこんでいいのか、ほめたらいいのか、複雑な顔になってる。かわいい。


「じゃあ、出しますぜ、ユィリおぼっちゃま!」

「はあい! よろしくお願いしますー! お馬さんも、よろしくね」

 ヒヒン!

 首をなでなでしたら、つやつや栗毛の馬さんが、元気に鳴いてくれました。
 質素な、どこにでもある感じの馬車に乗りこんだら、出発だよ!

 びっくりするくらい揺れるけど、これは前の僕が慣れてるみたい。今の僕はちょっとびっくりだよ。おしりが浮いちゃう!

 ロドア家は下位貴族なので、王都の貴族街の端っこらへんに家があるんだよ。
 しばらく走ると王都の中央、にぎやかな市場が開かれる円形広場や繁華街があり、大きな時の鐘の塔が建ってる。
 高いから、どこからでも見えて目印にもなるんだよ。

 裕福な商人の家が並び、ふつうの平民の家が並び、あんまり豊かじゃない人たちの家が並ぶ王都の端を過ぎたら、一気に緑が増えてくる。

 ぴちちち鳥が鳴いてる。
 樹々の緑が揺れて、空が青くて、高くて、風がおいしい。

「おぉ!」

 窓から顔を出そうとしてしまう僕を、カイが後ろから抱っこしてくれる。

「あぶないです、ゆりさま」

「はぁい」

 なんでもないみたいに答えたけど、背中からつつまれるカイのぬくもりに、カイの香りに、どきどきしちゃう……!

 耳が熱いのです。

『カイが、かぷかぷ、かじってくれないかな……』

『僕、カイの水の魔力で、いつもより、ぷにぷにだよ。おいしいよ』

『今きっと、いちごだいふくだよ』

 とか思ってしまう僕は、えちえち令息なのかも……!

 きゃ──!


 もだもだしてたら、離宮に到着です!


「ゆりさま、お手をどうぞ」

 先に降りたカイが、手を差しだしてくれる。

 かっこよすぎて、めろめろしちゃう……!

 うっとりしてたら、ひょいと、おひめさま抱っこされてしまいました。


 きゃ──!


「か、かかかカイ!?」

 あわあわする僕に、カイが微笑む。

「ゆりさまは、病みあがりですから。ころぶと大変です」

 ………………。

 移動がカイの、おひめさま抱っことか、ありなの……!?

 …………………………。

 フードかぶってるしね。
 ちっちゃい魔法使いだしね。

 ……い、いいのかな……?

 あこがれの、おひめさま抱っこだよ……!

『歩けるよ、だいじょうぶ』とか、言いたくないよ──!


 カイが抱っこしてくれるのがうれしくて、ぎゅうっと抱きついてしまうのです。


 ぎゅうう

 抱きしめかえしてくれるカイが、やさしい……!


「はにゃー♡」

 カイのいー匂いで胸をいっぱいにしていたら


「……人の家の前で、何いちゃついてんだ……!」

 すんごい低い声がした。

 ぴょこんと跳びあがった僕は、あわあわ、ほんとはちっとも離れたくないカイの腕から降りる。


「あ、ご、ごめんなさい。えとえと、もしかして、ノゥス・ロベナさまですか!」

 ちょこっとフードをあげたみた僕の前で、すこし長めの藍の髪が春の風に流れた。

 切れあがる瞳は、陽のひかりだ。

 僕をにらみつけた、同い年くらいの少年が瞬いた。


「……あれ、お前、兄貴に振られた、元伴侶(予定)か」


 ぐさ──!

 なんか刺さった!







しおりを挟む
感想 396

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

処理中です...