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びび?
しおりを挟む胸を叩いて笑ったら、いっしょのことを思いだしたのだろう、セゥスの瞳が揺れた。
「……一生ユィリを守ると誓ったのに……あんなにちいさなユィリと結んだ伴侶(予定)契約を、僕は……」
泣きだしそうなセゥスを抱きしめる。
「僕も間違えたから、いっしょ。セゥスはもう泣かなくていいの。ね?」
なでなでしたら、セゥスのちいさな頭が僕の胸にうまる。
こぼれる涙は、かわいそうで、なぐさめてあげたいのに。
──僕のために、あなたが泣いてくれる。
それは、ひそやかな、しあわせなのです。
「ごめんね、セゥス」
ちっちゃな頭を抱っこしたら、涙に濡れる若葉の瞳が瞬いた。
『いちゃいちゃするんじゃない!』
しかられるかと思ったけれど、僕とセゥスを見つめたセァナは、しずかに口を開いた。
「……私に刃向かったことなど、なかったセゥスが、ユィリくんのことには、とても……とても抵抗したんだ」
セァナがひとつ、息を吸う。
「──セゥスが間違ったのは、私のせいだ。
私が、間違った。……すまなかった」
押しだすようなセァナの声がふるえた。
『間違いを認める』ことが、何より難しい、何よりも屈辱なことなのだろうに。
胸に手をあててくれる。
心からの謝罪を示してくれる。
「セァナさまの、お気もちを、とてもうれしく思います」
微笑んだら、セァナは目をふせる。
「政略で結ばれる伴侶でも……こんなに想いあえることがあるんだね」
瞬いた僕は、ささやく。
「セァナさまも、そうでしょう?」
ぎゅ、と唇をかむセァナの頬が赤く染まった。
僕の胸でぐすぐすしていたセゥスが、顔をあげる。
「……おとうさまも、そんな顔をなさることがあるんですね……」
びっくりしてる!
「見なくていい!」
叫んだセァナの耳まで、真っ赤だ。
ずっと僕たちをしずかに見守ってくれていた海とカイまで、楽しそうに肩を揺らして笑ってる。
馬車が駆ける。
深い森の向こうに、白く輝く広大な邸が見えてくる。
「ようこそお越しくださいました、ユィリ・ロドアさま。
おかえりなさいませ、セァナさま、セゥスさま」
うやうやしく胸に手をあてて、かるく膝を折って迎えてくれたのは、きれいな白髪のおじいちゃんだ。
「フォクト家の家令長を務めております、コホと申します。お連れさまも皆さま、どうぞこちらへ」
つややかな闇の衣がひるがえる。
コホの後につづいて、呼ばれた順番に僕、セァナ、セゥス、海とカイが広やかな邸に足を踏み入れた。
玄関ホールは見あげるほど大きい。
色硝子で彩られた窓が、陽のひかりを透かした。
奥にはやわらかな曲線をえがく階段があって、ふかふかの藍のじゅうたんに、足が沈む。
開かれた扉の向こうでは従僕さんたちが並んで膝を折ってくれた。
『きゃ──!』
緊張で、ぷるぷるになりそうな僕を励ますように、後ろのセゥスが微笑んでくれる。
きゅ、とちいさな手をにぎった僕は、顔をあげる。
そう、僕は、りにゅーある、つよつよユィリ!
びびっても、がんばるよ!
とは言っても、足はちょっぴり、ぷるぷるしてる。
おっかなびっくり、ついてゆく僕……!
僕がちゃんとついてきているか、ほんのすこしだけ身体を傾けて確認するコホの目が、やさしいのに笑っていない気がするのです……!
きゃ──!
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