悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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らすぼす?

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 びくんと震えてしまった僕に、コホの目が、ちっちゃい子を見る目になった気がする……!

 所作のひとつひとつが洗練されて微塵の隙もないコホが、玄関ホールの向こうにある来賓の間に僕たちを通してくれた。

 キンキンギラギラの飾りにあふれているのかと思ったら、部屋のなかは落ち着いた雰囲気だった。

 大きな飴色の円卓が置かれていて、臙脂のビロードの椅子が6脚置かれている。
 冬の部屋をあたためるための魔導具暖炉があって、ゆたかな緑の森と愛らしい鳥の絵が飾られていた。

 華やかなのは、窓だ。
 玄関ホールでも見た色硝子が、さえずる鳥をえがいて、絵画の鳥と鳴き交わすように、きらめいた。

 ふかふかそうなビロードの椅子を、コホが僕のために引いてくれる。
 いちおう僕が、お客さんなので、2番目に上座の席だ。

 最も上座につくのだろうラスボスおばあちゃんの隣の席だよ……!
 き、緊張する……!

『きゃ──!』

 あわあわしながら

「ありがとう」

 微笑んで座った僕は

『ふ、ふかふかすぎる……! きゃ──!』

 叫ばないように、あわあわ口を閉じた。

 がんばったけど、顔には出ていたのだろう、セァナが微笑ましそうに口元をゆるめて、セゥスが微笑んでくれた。

 い、いちおう、まだ、失敗は、していないみたいです……!



 セァナとセゥスにも椅子をひいてくれたコホが、海にも椅子を勧める。

「どうぞ」

「いや、俺はゆりの、おつきだから」

 ていねいに断る海くんと一緒にカイも壁際に立つ。

「わたくしも、ゆりさまの従僕ですので」

「かしこまりました」

 コホが胸に手をあてた瞬間を見計らうように、しずかに扉がノックされる。お茶とお菓子のタワーを従僕さんたちが運んできてくれた。
 音をたてずに僕たちの前に置かれたお茶から、とてもいい香りがする。

「どうぞ召しあがってくださいませ。
 フォクト家当主セゼァ・フォクトさまは、間もなくお越しになります」

 ぴしりと背筋が固まった。

 いちおう王配になるべく貴族の振るまいも、お勉強した僕は、分かっているのです。

 これは、ひっかけだと!

『わー! いー香り! お茶が冷めちゃうし、お菓子も焼きたてじゃなくなっちゃうし、勧めてもらったし、いっただっきまーす!』もぐもぐした瞬間、お終いだ。

 基本的な礼儀作法も知らない、ざんねんな子の烙印を押されちゃう!

 ここは

「ありがとう」

 微笑んで、手をつけない、一択です!

 セァナがちょっと目を見開いて、セゥスが微笑む。

「ユィリはよく勉強してくれたから」

 セァナは、目をふせた。


「……ユィリくんが頑張っていることを見ようともせずに……ごめんなさ──」

 謝ろうとしたセァナを遮るように、扉が開いた。


「フォクト家の者が、謝るな、セァナ」

 大地の底から響くような声だった。


 びくりとふるえた僕は、そうっと声のあるじを見あげる。

 白の混じる青い髪が、吹きこむ風に流れた。
 つりあがる緑の瞳の色だけは、セァナとセゥスとおそろいだ。

 ふたりと血がつながっていることが、瞳の色だけしか重ならない、いかしめい筋骨隆々の男性が扉を塞ぐように立っていた。


 ちっちゃい頃の記憶が、よみがえる。

 そう、あのときも、いかめしいお顔で見おろされるだけで、ぷるぷるして泣きそうになっちゃった……!


 こわーい、ラスボスおばあちゃん、降臨です!






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