悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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もう

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 ふかふかの椅子から立ちあがった僕は、どきどきしながら、ぷるぷるしないように身体に力をこめた。
 背の高いフォクト家の当主、セゼァを見あげる。

「お久しぶりでございます、セゼァ・フォクトさま。ふたたび、おめもじ叶いましたこと、わたくしとロドア家の誉れにございます。
 ユィリ・ロドアにございます」

 胸に手をあて、やわらかに膝を折る。

 貴族の最高位であるフォクト家当主のセゼァには、王族よりは控えめに、自分より身分の高い貴族に敬礼するのよりは深く、流れるように、なめらかに、角度も所作も、指先まで、かんぺきに!

 最近、全然してなかったから、よれっとしちゃうかと思ったけど、来る前にカイと一緒に特訓したので、なんとかできたみたいです。よかった……!

 セァナが目を見開いて、セゥスが誇らしそうに微笑んで、セゼァは鼻を鳴らした。

「ふん!」

 おおう。

 分かっていたけれど、塩対応だ。
 さすがラスボスだよ。あたりまえだよ。


「セゥスと、よりを戻したいそうだな?」

 荒々しい所作で、足を組んでビロードの椅子に座るセゼァだけれど、音がしない。

 最高位の貴族として、かんぺきに振るまえるのだろうセゼァの仕草は、来客に対する己の感情を示すものだ。

 どーん! と足を組んで座るというのは

『お前、むかちゅくんだよ! さっさと帰れば?』という意味なのです……!

 きゃ──!


 そして当主が椅子に座ったからといって、当主の許可なく勝手に座ったら『基本の礼儀作法も知らない、あんぽんたんな子』の印を、おでこに押されちゃうんだよ。

 こくりと喉を鳴らした僕が、口を開くより早かった。


「ユィリと、もう一度、伴侶(予定)になりたいと懇願したのは、わたくしです、おばあさま」

 セゥスに視線をやったセゼァは、眉も動かさずに告げる。

「発言を許可していない」

 凍てつく声だった。

 ぷるぷるしそうなのを我慢していたことも忘れた僕は、ぴょこんと跳びあがる。

「セゼァさま、セゥスさまは王陛下の血をひく、第一位王位継承者であらせられます。
 あまりに不敬な発言、どうか、お改めください!」

 叫んだ。

「……ユィリ……」

 目を見開くセゥスを、背にかばう。


「契約を破棄されましたが、もう二度と結べませんが、それでもセゥスは僕の愛する伴侶(予定)です!」

 もう、セゥスを傷つけさせない──!


 両手をひろげてセゥスを守って前に立つ僕に、セゼァの切れ長の瞳が、かすかに見開かれた。

「もっちもっちしてるだけかと思っていたが。根性は、ついたらしいな。──だが不敬だぞ」

 ふんと鼻を鳴らすセゼァに、僕は叫ぶ。


「もう、セゥスを傷つけないで──!」

 緑の魔力が、僕の身体からこぼれてく。
 舞いあがる闇の髪に、セゼァは息をのんだ。


「……魔力が……」

 むんと僕は胸を張る。

「使えるようになりました。
 ちょっと激おこに、なっちゃいましたが、あなたを癒すために来たんです、セゼァさま」

 本来の目的を思いだしたよ!

 そうでした。
 ラスボスだって思ってたから、つい喧嘩を売っちゃったけど、喧嘩を売りに来たのではなく、お金をもらいに来たのでした!


 僕、初動を思いきり失敗したみたいです。

 きゃ──!





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