【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ

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うさちゃんとリルとトェルとももちゃんのしあわせ暮らし

いらっしゃい

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 水の精霊ミーレを連れてきた僕とリィフェルとうさちゃんを、ももちゃんは緑の葉をさやさや揺らして迎えてくれた。

「わあ──!
 すごい! 清淨だよ!? 魔界なのに!」

 辺りを清らに染めあげる、ももちゃんの周りの魔界の植物が苦しそうじゃないことにも、ミーレは目をみはった。

「……どうして……魔界なのに……誰も苦しくないなんて……」

 ももちゃんを見あげた僕は、微笑んだ。

「精桃の樹です。
 精霊界で、緑のきみにもらった精桃の種を僕が植えて、おとうさんの月の水で芽吹いて、精霊界で育って、瘴気を放つようになったからって、魔界に」

「ほへえ」

 ミーレが、あんぐりしてる。

「精霊も魔界の生き物も、ももちゃんは誰も傷つけない」

 大きく育ったももちゃんの幹に、そっとふれたミーレは、僕を振りかえる。

「トェルみたいだな」

「……え……?」

「精霊も、魔界の生き物も、誰も傷つけない。
 精霊界で育って、今は魔界で暮らしてる」

 ふうわりミーレが笑う。

「俺を救ってくれて、ありがとう」

 胸に手をあてるミーレに、僕は首をふる。

「うさちゃんです。
 うさちゃんにちゃんと謝ってくれて、ありがとう」

「きゅ!」

 みんなで笑ったら、仲なおりです!



 ももちゃんの傍に建つ、ちいさな手づくりの庵にやさしく目をほそめたミーレは、辺りを見回して首をかしげた。

「水場は?」

 僕はリィフェルを見あげる。

「魔界の泉は真っ暗なんだ。トェルにも、ももちゃんにも、つらそうだから、精霊界から水を汲んできて、私が月の水に」

 ぽかんとミーレが口を開けた。

「月の水──! 魔界で──!?」

「トェルも私も飲むから」

「いやいやいや、えぇえぇえ──!?」

 だいぶ変わっているみたいです?



「あー、じゃあここに、泉でも作ってみましょうか」

 魔界の大地を、とんとんしていたミーレが顔をあげる。

「泉……? つくれるの?」

 ぽかんとする僕に、ミーレは胸を張る。

「これでもまあまあ、俺は力の強い水の精なんだ」

「水のきみの、ひ孫さんだろう」

 リィフェルの言葉に、ミーレが目をむいた。

「ご存知で!?
 いっぱいいるし、精霊界では最下層って思われてる門にいるから、あんまり誰も知らないんだけど」

「他の水の精と、力が全然ちがうから」

 リィフェルの言葉に、うれしそうに照れくさそうに、ミーレが笑う。


 いたましそうに、リィフェルはつぶやいた。

「……身内だからこそ、水のきみは、ミーレを魔界に落としたんだろうな」

「身内から魔族と通じるものが出るのが許せなかったみたいです」

 肩を落としたミーレに、リィフェルは心配そうに眉を寄せる。


「……精霊界に、帰りたいか?」

 さみしそうにミーレは目を伏せた。


「……帰る場所は、もうないです。
 だからここで一発、泉を湧かせられたら、この近くで暮らしてもいいですか」

 息をのんだ僕は、リィフェルを見あげる。


 今まで落ちてきた精霊たちは、みんなすぐに精霊界に帰って行った。
 お礼は言ってくれたけれど『魔界はおぞましい』目からも態度からも、にじみでていた。


『魔界で暮らしたい』

 言ってくれた精霊は、はじめてだ。



 リィフェルが、笑ってくれる。


「きゅ!」

 うさちゃんの、ちいさな角が、きらきらしてる。


 ももちゃんの緑の葉っぱが、さやさや揺れた。



「泉が湧かなくても、歓迎します!」

 みんなで、笑った。





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