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うさちゃんとリルとトェルとももちゃんのしあわせ暮らし
できた!
しおりを挟む水の精霊ミーレが、ももちゃんの周りの大地をくまなく、手のひらで、つま先で、とんとんしてる。
踊っているみたいで、ぱちぱち拍手する僕に、くすぐったそうにミーレが笑った。
後ろからついてゆく、うさちゃんの角が、きらきらしてる。
「うさちゃん、ももちゃん、この辺がいいと思うんだけど、どうかな」
ミーレが止まったのは、ももちゃんにも庵にも近い、魔界の植物があまり植わっていない、ぽかりとした空き地だった。
魔界の植物が生きるには瘴気が薄いのか、辛いのかもしれない。
だからこそ、きっと清淨な泉になれるかも?
紅い目を閉じた、うさちゃんの角が、きらきらしてる。
ももちゃんの、緑の葉っぱが、さやさや揺れた。
「いいみたい!」
手をたたいた僕に、ミーレが笑う。
「よし! じゃあ、ここにしよう!
1回作ると動かしにくいよ。
ほんとに、ここでいい?」
うさちゃんも、ももちゃんも、見守ってくれていたリィフェルも僕も、うなずいた。
「お願いします!」
「がんばるよ──!」
笑ったミーレの身体が、舞いあがる。
水の衣が螺旋をえがいて、細い指先から水が踊った。
清かな楽の音を聞くようだった。
ミーレが足を踏み鳴らすたび、指を天にかかげるたび、ミーレの祈りに応えるように、透きとおる水が舞いあがる。
ちいさな、ひとしずくが、清らな細い流れになり、魔界の濃密な瘴気さえも癒すように、やわらかな波をえがいて落ちてゆく。
「わあ──!」
歓声をあげる僕の唇を、リィフェルの手のひらが覆った。
「しー。
大変な集中がいる、とても難しい儀式なんだ。
……ももちゃんが清めてくれているとはいえ、魔界の最深部で、こんな術が使えるなんて……」
「ミーレ、すごい……!」
ささやく僕に、リィフェルはうなずく。
「……だからこそ、水のきみは許せなかったのかもしれないな……
次代の水のきみと期待していたひ孫が、門にゆき……魔族と交わり、魔族を愛するなんて」
「めちゃくちゃ集中、途切れるんで──!」
真っ赤になったミーレの叫びに、リィフェルと一緒に、あわあわ口をつぐんで、みんなで笑った。
うさちゃんの角がきらきらして、ももちゃんの緑の葉が、さやさや揺れる。
紅い頬で、集中を取り戻したらしいミーレの指から、つま先から、水が舞う。
どこまでも透きとおる水が、魔界の大地に、ちいさな泉をつくってゆく。
『わぁあ──!』
歓声も拍手も、だめなので、翼をぱたぱたさせて見守る僕に、ミーレが笑う。
「できたよ──!」
精霊の力を使い果たしたのだろう、ぐらりと、かしいで倒れゆく身体を抱きとめたのは──リィフェルじゃなかった。
「……何やってんの、こんなとこで」
低く、甘い声だった。
一度聞いたら忘れられない声で、一度目にしたら心を奪われてしまうような瞳で、舞い降りた魔族が、倒れたミーレを抱きあげる。
「門には来ないし、守護帥に聞いたら、もごもごするし、脅して口を割らせたら、あんぽんたんに魔界の最下層に落とされたって、一刻で死ぬって言うし──!」
つややかな声が、ふるえてる。
リィフェルと顔を見合わせた僕は、微笑む。
「よかったね、ミーレ」
リィフェルも微笑んで、うさちゃんの角がきらきらして、ももちゃんの緑の葉っぱがさやさや揺れた。
真っ赤になったミーレが、魔族のうなじに腕を回す。
「……探してくれて、ありがとう。
見つけてくれるまで、ずっと魔界で暮らそうって思ってたのに……」
「……帰る?」
目を伏せる魔族に、ミーレは首をふる。
「帰らない」
ふたりのささやきが、溶けてゆく。
大きなてのひらで僕の目を覆ってくれる、おとうさんに、熱い頬で、笑った。
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