【完結】きみの騎士

  *  ゆるゆ

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ふふん

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「きみみたいな子どもが?
 男の子は大変だね」

 リイは鼻を鳴らす。


「女の子だって大変だよ」

「違いない」

 笑った青年の灰の瞳が細くなる。


「僕たちが捜しているのは人形のように麗しい、蒼と碧の目をした、君と同い歳ぐらいの少年だ。
 いや、ぱっと見、少女に見えると思う。
 見かけたら是非知らせて欲しい」

 ちょっと眉を上げたリイは、首を傾げる。

「迷子?」

「そうなんだ。
 我々が一瞬気を抜いた隙に抜け出してしまわれてね」

 リイは眉を顰める。


「それって、監禁?」

「貴様、無礼だぞ!
 こちらのお方は――!」

「止めなさい」

 剣を抜く男を、再び青年は止めた。


「大切にお守りしているんだ。
 尊い御身だから」

 リイはぎゅっと唇を噛んだ。


「きみよりも、ずっとね」

 青年の唇が弧を描いた瞬間、リイの首には抜身の剣が突きつけられていた。

 月明りに銀にきらめく刃が、肌を撫でる。


 油断していた。
 動けなかった。

 大失態だ。


「ルフィス様!
 出て来てくださらなければ、平民の子の首を刎ねます!」

 大声で呼ばわる青年に眉を顰めたリイは、青年の注意が洞窟へと向かった瞬間、青年の腹に拳を叩き込み、その腕の中から抜け出した。


「ぐはっ……!」

「貴様――!」

 剣を抜き、振りかざす男たちを嘲笑うように、リイは駆ける。

 幾度も襲いくる鋼の刃を、ひらり、ひらりと躱すリイに、闇鎧たちが目を剥いた。


「な、んだ、このガキ――!」

「速い――!」

 男たちを麓の方へと誘導しながら、リイは逃げる。

 短剣は持っているが、貴族を傷つけると後がまずい。

 全員ついて来ているか確かめながら、森の木々の幹を蹴り、枝を掴み、宙を舞うように跳ぶリイに、男たちが息を呑む。


「……まさか、精霊……?」

「け、剣を引け!」

 青年の声に、躊躇いながら男たちが剣を下ろす。


 随分と麓の方へと降りさせられ、洞窟の方を見上げた青年の顔が歪んだ。

「しまった!」

 人の気配のしなくなった洞窟に闇鎧たちが茫然としている間に、リイの身体は夜の山に溶ける。


「しまった……!」

 二度目のしまったを背で聞き、ちいさく笑ったリイは、山の奥のルフィスの気配を辿るように、夜を駆けた。





 枯れ葉を踏みしめるちいさな足音を聞き分けたリイは、ルフィスのもとへと向かう。

「リイだよ」

 囁きとともに笑ったら、ビクンと震えたちいさな身体が跳び上がる。


「リイ……!」

 押さえた悲鳴の涙声に、リイはルフィスを抱きしめる。


「怖い思いをさせて、ごめん」

「リイ、怪我は!?」

「大丈夫!」

 笑ったら、蒼碧の瞳が泣きだした。









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