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はじめて
しおりを挟む不思議な赤い石が暖炉で燃えて、僕の冷え切った身体を溶かすように、ぬくめてくれる。
ムニャがやさしく、こすってくれるたび、僕の身体は熱を思いだしたように、ぽかぽかしはじめた。
抱っこしてくれたら、ムニャのやさしい香りにつつまれたら、胸も、ほっぺも、ほんのり熱い。
「んー、ちょっと、ぬくもってきた?」
首をかしげるムニャに、うなずく。
「あい」
「もうお風呂に入っても、いいかな。
ひとりで入れる? 手伝おうか?」
心配そうにのぞきこむムニャに、僕はちいさな胸を張る。
「ぼく、できゆ!」
なんでもひとりで、してきたのです。
お洗濯も、お掃除も、炊事も、薬草つみも、できるよ!
むんと誇らしく反りかえる僕に、ムニャが笑ってくれる。
「えらいね、ぽて」
僕の頭を、なでてくれる。
「ほわぁ……!」
びっくりして見あげたら、ふしぎそうにムニャが首をかしげる。
ほんのさっきまで冷え冷えだったのに、火照る頬で、どきどきする胸で、笑う。
「ほめて、もらたの、なでなでも、はじめて……!」
くしゃりとムニャのちいさな顔がゆがんだ。
「これからは、いっぱい、いっぱいほめるよ、ぽて」
やさしく抱きしめてくれる腕が、ふるえてる。
「ぼくも! ぼくも、むーちゃん、ほめて、あげゆ!」
ぎゅう
抱っこしたら、くすぐったそうに赤い頬で笑ってくれる。
「ありがとう、ぽて。お風呂でゆっくり、あたたまってね」
頭をなでなでしてくれる指が、くすぐったくて、とびきり、うれしい。
ちいさな胸も、ほっぺも、あちあちだ。
「あい! むーちゃんは?」
「後で入るよ」
微笑んでくれるムニャの手も、僕の手とおなじくらい、冷たい。
「むーちゃん、つべたぃよ。いっしょに、はいろ?」
はずかしそうに赤くなったムニャは、僕を抱きあげてくれた。
「そうだね、心配だし、一緒に入ろうか」
うなずくムニャのまなじりが、朱い。
「うん! ぼく、ぼくね、むーちゃん、あらって、あげゆ!」
あかぎれの、ちいさな指で、ムニャの手をにぎる。
くすぐったそうに微笑んだムニャの指が、僕の手をにぎり返してくれる。
「じゃあ僕も、ぽてを洗ってあげるね」
「ぼくは、ぉとなだから、ひとりで、あらえゆの!」
夜の瞳が、まるくなる。
くすくす声をたててムニャが笑った。
「そうか、えらいね、ぽて」
『えらいね』
一度もかけてもらえることのなかった言葉が、耳から胸に、指先にまで、しみてゆく。
「ほ、ほめて、もらうの、うれしぃ……」
あちあちの耳で、笑う。
「むーちゃんも、いっぱい、ほめて、あげゆ!」
手をのばしたら、僕の手の下になるように、首をさげてくれる。
さらさらの髪を、なでさせてくれる。
「えへへ」
あちあちのほっぺで笑ったら、星の瞳が、揺れる。
抱きしめてくれる、ムニャの腕が、ふるえてる。
「ふたりで、生きていこうね」
ささやきが、僕の胸に、やさしく落ちる。
ムニャと、ふたりで、生きる。
とくとく鼓動が音をたてて、駆けてゆく。
「あい!」
僕、こんなに笑ったこと、なかったよ、むーちゃん。
僕をひろってくれて、抱っこしてくれて、なでなでしてくれて、ありがとう、むーちゃん。
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