僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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ちっちゃいよ

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 薬草を見せてもらったら、特徴と種類と、どこに生えているのかを、しっかり覚え……られないので!

 僕の脳みそ、そんなに、すごくないのです。
 あんまりよくない頭をおぎなうのは、技術なんだよ。

「おじいちゃん、うしゅい、きの、いた、くだしゃい。ひっきぐ、かして、くだしゃい」

 羊皮紙はとても高価なので、何かを書きたいときは、薄い木の板を買って、筆記具をお借りするのです。
 使う書液の価格も込みで売ってくれるんだよ。

 この書液がちょっと高いんだけど、薬草を間違ってしまっては、おかねにならないので、ここは雪山から飛び降りる覚悟で、奮発するのです!

「おうおう、書けるのか、すごいな、ちっちゃいの」

 びっくりしたみたいに、おじいちゃんの目がまるくなる。

 ちっちゃいよ!
 でも、僕には、名前もちゃんと、あるのです。

 僕は、とんがり帽子のおじいちゃんを見あげる。

「ぼく、ぽて」

 微笑んだおじいちゃんの、白いおひげが、ほわほわ揺れる。

「ほうほう。かわいー名前じゃの。ぽてくんか。わしは、ホー。薬草組合をやっとる」

「ホーおじいちゃん」

 微笑んだおじいちゃんが、おひげをしごきながら、うなずいてくれる。
 受けつけの机の後ろから、ごそごそ薄い木の板を取りだした。

「これが木の板と、筆記具じゃ。
 銅貨2枚じゃの。こっちの、おっきいのは銅貨5枚じゃ。おっきい方が、お得じゃぞ」

 大きさを比べた僕は、こっくりうなずく。
 ちいさいのの3倍はあると思うけど、おねだんは、おかね6まいじゃなくて、5まい!

 お得なのです!

「むーちゃん、おかね、5まぃ、かりても、いー?」

「もちろん。借りるんじゃなくて、あげる」

 微笑んだムニャが、おかねを、じゃらじゃら出してくれるのに、ぶんぶん僕は首をふる。

「だめ!」

 もらうのは、だめ!

 しかし、ムニャがふところから出してくれた、おかねを5枚、ありがたく受けとった。

「ありがとぅ、むーちゃん。ちゃんと、かえしゅ、かりゃ、ちょっと、まっててね」

 眉をさげたムニャが、ちょっと考えるように小首をかしげる。

「ぽて先生に、授業料をお支払いする、というのは?
 それなら正当な対価だよ」

 ??

「むーちゃん、むちゅかしぃ」

 眉をさげる僕に、ムニャとおじいちゃんが笑った。

「ちっこいから、もらっちゃって、いーんじゃないかのー」

 ホーおじいちゃんが、いけない、ささやきを……!

「だめ!」

 ふるふる首をふった僕は、おじいちゃんに5枚のお金を渡す。

「ほい、まいどあり。そこの机と椅子を使っていーぞ」

 薬草組合の玄関の近くにある円卓と椅子を示してくれる。

「ありがとぅ、ホーおじいちゃん」

 おっきな机と、おっきな椅子を見あげる僕を、ムニャが抱っこしてくれた。
 ちょこんと、僕を椅子に座らせてくれる。

「えへへ。ありがとう、むーちゃん」

「どういたしまして」

 微笑んで椅子を引いたムニャが、僕の隣に座る。

 僕はさっそく、買ってもらった大きな木の板に『むーちゃんに、5まい』書きこんだ。
 薄い茶色の書液で書いた文字が、しばらくすると、あざやかな夜色に変わってゆく。

 薬草の絵を写すだけだと思っていたらしいムニャの、切れ長の夜の瞳がまるくなる。

「ぽては字を読めるだけじゃない、書けるのか!」

 びっくりしたらしいムニャに、誇らしく僕は胸を張る。

「いらぃ、うけゆの、よみ、かき、だぃじ!」

 あんぐり僕を見つめたムニャが、つぶやいた。

「……ぽて、天才?」

 そうっと、ささやくムニャに、首をふる。

「ひんみん、ひっしで、じ、おぼえゆの。いらぃ、うけられなぃ、と、ごはん、ない」

「……無神経なことを言って、ごめんなさい」

 うなだれるムニャに、首をふる。

「いやあ、それでも、ほとんどの人は受けつけの人に読んでもらったりするものじゃよ。よく覚えたなあ、ちっこいの」

 おじいちゃんのしわの手が、僕の頭をなでてくれる。

「ぽて、でしゅ」

「おお、そうそう、最近、人の名前が覚えられんでなあ」

 白いおひげをしごくおじいちゃんの白い眉が、しょんぼり下がる。

「なゆほろ。ごめんなしゃい?」

「いやいや、こちらこそ?」

 ふたりで顔をのぞきこんで、笑う。

「ゆっくり写してゆくといい。こっちが薬草、こっちが依頼」

 貴重な羊皮紙に描かれた絵と依頼を見せてくれた。

「ありがとぅ、ホーおじいちゃん」

「ほっほっほ。お茶は銅貨3枚じゃぞ」

 さっくり勧誘を混ぜてくる、ホーおじいちゃんが、つよい……!

「ああ、じゃあ……」

 にこにこ、ふところから、おかねを取りだそうとするムニャを、ちいさな僕の手が止める。


「むーちゃん、だめ! しぇつやく、だぃじ!」

 この調子で、じゃらじゃら使っちゃったら、あっという間に、おかねが0枚に……!

「ほっほっほ。真である。しかし、うちの稼ぎには、ならんのう」

 残念そうにおじいちゃんが眉をさげて、皆で笑った。










 ────────────────


 ずっと読んでくださって、ありがとうございます!

 お気に入りに入れてくださった方、いいねや、エールや、ご感想で応援してくださった方に、感謝の気もちでいっぱいです。

 あふれる、ありがとうございますをこめて、むーちゃん と ぽて の動画を作りました!

 インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
 プロフのwebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!

 ほのぼの、のどかなスローライフで、ぽて と むーちゃんが、しあわせに暮らしてゆく感じのお話です。

 読んでくださる、あなたさまが、ちょこっとでも楽しんでくださったら、とても、とてもうれしいです!




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