20 / 30
20
しおりを挟む
啓生に抱きついたまま、昼過ぎまで眠った俺はそれでもはっきりとしない頭で起きて啓生の上からどけた。
「おはよ、啓生さん。風都さん、宗治郎さん」
「おはよう、咲ちゃん。んふふ、まだお眠みたいだねぇ。かぁわいい」
よしよしと頭を撫でられるとまた寝そうになるからその手を振り払う。
それすら楽しそうに笑うから、啓生の感覚が分からない。
「あさごはん……ごめんなさい」
「いえ。どうか謝らないでくださいませ。咲也様の体が休息を必要としていたのですよ。なので、そちらを優先するのは当然のことです」
「そう、なんだ……ねぇ、啓生さん」
さっき、ぼんやりとした頭で話していた事を、聞いてみようと思った。
それは、俺にとても関係深いことだったから。
「なぁに、咲ちゃん」
「ひーとが、くるの?」
「そうだねぇ。たぶん、来るだろうね。今までも、軽いのは来てたと思うんだけど、咲ちゃんの場合、体が出来上がってなかったっていうのも有るだろうね」
うん? と俺が首をかしげると、啓生はあぁ、と納得したように声を出した。
「抑制剤を飲んでたのに、どうして発情期が来るかってことかな? 抑制剤も完全に抑えてくれるようなものじゃないしね。発情期自体が強くなれば、抑制剤も効かなくなるし仕方がないよ」
「そういう、ものなの?」
アルファオメガのそういうものっていうのは、良くわからない。
けど、この体の怠さとかを考えると、そうなのかもしれない。
「そういうものなの。でも、まだ多分こないからちゃんと病院行って検査しようね」
「う、ん……けいせい、さんも」
「あ、はは、うん、僕もだねぇ」
その反応を見て、あ、と唐突に目が冷めた。
それは、啓生の事が気になったからかもしれない。
そう言えば、知りたかったんだ。
「啓生さん、なんで病院嫌いなの?」
「あ、ぱっちりだ。え、そんなに知りたいの?」
えぇ、とちょっと困惑気味だ。
でも、苦手なものなんて何にもないよって言う感じの啓生が、どうして病院だけ苦手そうにしているのか不思議でしょうがない。
「知りたい。啓生さんについてもっと知りたい」
「そんなキラキラしたお目々で僕をみないでよぉ……」
本当に困ったような啓生は、それでも仕方がないなぁと話し始めた。
「病院、ねぇ……僕、あんまり病院にいいイメージなくて」
「そう、なの? 病院、あんまり行ったことないから俺は何ともないけど」
「四方のアルファは、ある意味特別で昔から実験体とか被検体にしか見られていないんだよね」
「……え?」
「しかも、かかりつけの医者っていうのが雪藤のアルファだから遠慮が無いし」
「雪藤の……えぇ?」
ちらりと風都と宗治郎を見たら、ふたりともにこりと笑うだけだ。
確かに、雪藤の人は遠慮がないけど。
そもそも特別なアルファってなんだろう? 四方ってだけじゃないのかな?
「さぁ、昼食になさいましょう。そろそろお腹もすきましたでしょう?」
そっと机に出された料理の匂いに、ぐぅっと忘れていたかのようにお腹が鳴った。
あぁ、とその音を聞いて自分がお腹が空いていたことに気がついた。
それはそうだ。起きて、朝ご飯を食べていなかったんだから。
「あれ、啓生さんは?」
「僕はもう食べたからね」
そう言って時計を見ると、それは昼ご飯には遅い時間だった。
「あ……ごめんなさい」
「あはは、僕もごめんね。先に食べちゃってて」
その代わり、と啓生は出てきたスプーンを手に取った。
リゾットが一口分、掬われて差し出される。
「はい、あーん」
「いや、自分でって、前にもやったような……」
「咲ちゃん? ほら、あーん、だよ?」
これを諦めてくれないことはもう分かってて、そしてそのスプーンも帰ってこないことは分かっていた。
だから、大人しく口を開いた。
そこにニコニコしながら、啓生が差し出してくる。
「どう? おいしい?」
「ん……おいしいです」
「だって、良かったねそーじろー」
「えぇ、とても」
わりと、宗治郎がご飯を作っている確率が高い気がする。
風都も料理をするけれど、啓生がしている姿を見たことはない。
ちなみに言えば、俺は料理のりの字すらない。
その点は、啓生に拾われて良かったと思う。でも、啓生と出会わなくても料理は覚えていたようなそんな予感がある。
宗治郎の作ってくれる料理が不味かったことは一度もないし、そう言えば尚志の作ってくれた料理も美味しかった。
俺はあまり、味に拘りがないのかもしれない。
「啓生さんも」
そう、俺は付け合せのサラダに乗っていたプチトマトを差し出す。
ちなみに、俺はトマトが苦手だ。
「え、僕はいいよ? 咲ちゃんが食べて?」
「俺は、だめなの?」
「だめじゃないけど、うーん……一個だけね? これは咲ちゃんに食べてほしくて作ってるものだからね」
そう言って、俺が差し出したトマトをぱくりと食べてしまった。
トマトが減ったことにホッとする。
啓生はそれも分かっているのか、苦笑いしているけど。
「もー、可愛いなぁ」
「え、なんで?」
ただ、嫌いなものを食べてもらっただけなんだけど。
どこが可愛いと刺さったのか分からないな。
「僕の番は何をしてても可愛いんだよ?」
「いや、知らないけど」
「ん、ふふ~。僕だけが知ってればいいことだもんね、大丈夫」
そういう度、俺を抱きしめて大好きって体いっぱい伝えてくるから、俺はどうしていいのかわからない。
けど、嫌じゃないから抵抗もしない。それどころか、その腕の中が世界で一番安全な場所だと思うから。
「さぁ、咲ちゃん。食べちゃおっか」
「うん……その、食べなきゃだめ?」
「まぁ、食べなくても死なないけどね。でも、食べてくれたほうが僕は嬉しいよ?」
「そう……分かった」
食べなくていいのなら、と思ってしまう。
啓生がトマトと他の野菜を一緒にフォークに刺すからそれを食べなきゃいけなくなった。
食べなくていいのなら、食べてくれればいいのに。
目を閉じて食べるけど、あまり他の野菜が味を消してくれることはなくて、眉間にシワが寄ってしまう。
「咲ちゃん、嫌いなものはわかりやすいね」
「嫌いじゃない、苦手なだけ」
「そう? まぁ、嫌いじゃないならいいけど……あと、苦手なものが有ったら先に言ってね?」
うん、と一つ頷く。でも、それを伝えたところで、何が変わるわけでもないと思ってた。
でも、うなずいてからハッとして気が付いた。
そう、自分の中で信じられていなかった部分。
俺は、何も変わらないと思ってた。信じていなかった。
だって、それは俺には叶えられてこなかったものだから。
「啓生さんは、何で俺のお願いを聞いてくれるの?」
「何で、かぁ……難しいね?」
「難しい? でも、俺は……無償で誰かの願いを叶えたいとは思えない」
対価があったところで、願いを聞き入れられないのであれば、対価を払う必要も、そして願いを口にする必要もない。
だから、願うことを諦めていた。叶えられないのであれば、意味がない。
「あー、うん? そうね、そうか……どう言えば咲ちゃんが分かりやすい例えがあるのかわからないなぁ」
「啓生様が悩むとは珍しい事ですね」
「僕を悩ませるの何て、咲ちゃんぐらいだよ」
「俺、そんな難しい奴じゃないよ」
「そうだね。咲ちゃんは咲ちゃんが生きてきた分だけの価値観があるんだものね」
「うん?」
「何でもないよ。ともかく僕は咲ちゃんの願いなら何でも叶えたくなっちゃうの。アルファで番だからね」
「アルファで番だから……じゃあ、俺が分からないのも仕方がないのかな」
「そうだよ。だから、仕方がないんだよ」
ほっとしたように息を吐きながら啓生が抱きしめてくる。
一日に何度も何度も、それこそ特別だと言う様に抱き締めてくるから、それすら慣れてしまいそうだ。
「おはよ、啓生さん。風都さん、宗治郎さん」
「おはよう、咲ちゃん。んふふ、まだお眠みたいだねぇ。かぁわいい」
よしよしと頭を撫でられるとまた寝そうになるからその手を振り払う。
それすら楽しそうに笑うから、啓生の感覚が分からない。
「あさごはん……ごめんなさい」
「いえ。どうか謝らないでくださいませ。咲也様の体が休息を必要としていたのですよ。なので、そちらを優先するのは当然のことです」
「そう、なんだ……ねぇ、啓生さん」
さっき、ぼんやりとした頭で話していた事を、聞いてみようと思った。
それは、俺にとても関係深いことだったから。
「なぁに、咲ちゃん」
「ひーとが、くるの?」
「そうだねぇ。たぶん、来るだろうね。今までも、軽いのは来てたと思うんだけど、咲ちゃんの場合、体が出来上がってなかったっていうのも有るだろうね」
うん? と俺が首をかしげると、啓生はあぁ、と納得したように声を出した。
「抑制剤を飲んでたのに、どうして発情期が来るかってことかな? 抑制剤も完全に抑えてくれるようなものじゃないしね。発情期自体が強くなれば、抑制剤も効かなくなるし仕方がないよ」
「そういう、ものなの?」
アルファオメガのそういうものっていうのは、良くわからない。
けど、この体の怠さとかを考えると、そうなのかもしれない。
「そういうものなの。でも、まだ多分こないからちゃんと病院行って検査しようね」
「う、ん……けいせい、さんも」
「あ、はは、うん、僕もだねぇ」
その反応を見て、あ、と唐突に目が冷めた。
それは、啓生の事が気になったからかもしれない。
そう言えば、知りたかったんだ。
「啓生さん、なんで病院嫌いなの?」
「あ、ぱっちりだ。え、そんなに知りたいの?」
えぇ、とちょっと困惑気味だ。
でも、苦手なものなんて何にもないよって言う感じの啓生が、どうして病院だけ苦手そうにしているのか不思議でしょうがない。
「知りたい。啓生さんについてもっと知りたい」
「そんなキラキラしたお目々で僕をみないでよぉ……」
本当に困ったような啓生は、それでも仕方がないなぁと話し始めた。
「病院、ねぇ……僕、あんまり病院にいいイメージなくて」
「そう、なの? 病院、あんまり行ったことないから俺は何ともないけど」
「四方のアルファは、ある意味特別で昔から実験体とか被検体にしか見られていないんだよね」
「……え?」
「しかも、かかりつけの医者っていうのが雪藤のアルファだから遠慮が無いし」
「雪藤の……えぇ?」
ちらりと風都と宗治郎を見たら、ふたりともにこりと笑うだけだ。
確かに、雪藤の人は遠慮がないけど。
そもそも特別なアルファってなんだろう? 四方ってだけじゃないのかな?
「さぁ、昼食になさいましょう。そろそろお腹もすきましたでしょう?」
そっと机に出された料理の匂いに、ぐぅっと忘れていたかのようにお腹が鳴った。
あぁ、とその音を聞いて自分がお腹が空いていたことに気がついた。
それはそうだ。起きて、朝ご飯を食べていなかったんだから。
「あれ、啓生さんは?」
「僕はもう食べたからね」
そう言って時計を見ると、それは昼ご飯には遅い時間だった。
「あ……ごめんなさい」
「あはは、僕もごめんね。先に食べちゃってて」
その代わり、と啓生は出てきたスプーンを手に取った。
リゾットが一口分、掬われて差し出される。
「はい、あーん」
「いや、自分でって、前にもやったような……」
「咲ちゃん? ほら、あーん、だよ?」
これを諦めてくれないことはもう分かってて、そしてそのスプーンも帰ってこないことは分かっていた。
だから、大人しく口を開いた。
そこにニコニコしながら、啓生が差し出してくる。
「どう? おいしい?」
「ん……おいしいです」
「だって、良かったねそーじろー」
「えぇ、とても」
わりと、宗治郎がご飯を作っている確率が高い気がする。
風都も料理をするけれど、啓生がしている姿を見たことはない。
ちなみに言えば、俺は料理のりの字すらない。
その点は、啓生に拾われて良かったと思う。でも、啓生と出会わなくても料理は覚えていたようなそんな予感がある。
宗治郎の作ってくれる料理が不味かったことは一度もないし、そう言えば尚志の作ってくれた料理も美味しかった。
俺はあまり、味に拘りがないのかもしれない。
「啓生さんも」
そう、俺は付け合せのサラダに乗っていたプチトマトを差し出す。
ちなみに、俺はトマトが苦手だ。
「え、僕はいいよ? 咲ちゃんが食べて?」
「俺は、だめなの?」
「だめじゃないけど、うーん……一個だけね? これは咲ちゃんに食べてほしくて作ってるものだからね」
そう言って、俺が差し出したトマトをぱくりと食べてしまった。
トマトが減ったことにホッとする。
啓生はそれも分かっているのか、苦笑いしているけど。
「もー、可愛いなぁ」
「え、なんで?」
ただ、嫌いなものを食べてもらっただけなんだけど。
どこが可愛いと刺さったのか分からないな。
「僕の番は何をしてても可愛いんだよ?」
「いや、知らないけど」
「ん、ふふ~。僕だけが知ってればいいことだもんね、大丈夫」
そういう度、俺を抱きしめて大好きって体いっぱい伝えてくるから、俺はどうしていいのかわからない。
けど、嫌じゃないから抵抗もしない。それどころか、その腕の中が世界で一番安全な場所だと思うから。
「さぁ、咲ちゃん。食べちゃおっか」
「うん……その、食べなきゃだめ?」
「まぁ、食べなくても死なないけどね。でも、食べてくれたほうが僕は嬉しいよ?」
「そう……分かった」
食べなくていいのなら、と思ってしまう。
啓生がトマトと他の野菜を一緒にフォークに刺すからそれを食べなきゃいけなくなった。
食べなくていいのなら、食べてくれればいいのに。
目を閉じて食べるけど、あまり他の野菜が味を消してくれることはなくて、眉間にシワが寄ってしまう。
「咲ちゃん、嫌いなものはわかりやすいね」
「嫌いじゃない、苦手なだけ」
「そう? まぁ、嫌いじゃないならいいけど……あと、苦手なものが有ったら先に言ってね?」
うん、と一つ頷く。でも、それを伝えたところで、何が変わるわけでもないと思ってた。
でも、うなずいてからハッとして気が付いた。
そう、自分の中で信じられていなかった部分。
俺は、何も変わらないと思ってた。信じていなかった。
だって、それは俺には叶えられてこなかったものだから。
「啓生さんは、何で俺のお願いを聞いてくれるの?」
「何で、かぁ……難しいね?」
「難しい? でも、俺は……無償で誰かの願いを叶えたいとは思えない」
対価があったところで、願いを聞き入れられないのであれば、対価を払う必要も、そして願いを口にする必要もない。
だから、願うことを諦めていた。叶えられないのであれば、意味がない。
「あー、うん? そうね、そうか……どう言えば咲ちゃんが分かりやすい例えがあるのかわからないなぁ」
「啓生様が悩むとは珍しい事ですね」
「僕を悩ませるの何て、咲ちゃんぐらいだよ」
「俺、そんな難しい奴じゃないよ」
「そうだね。咲ちゃんは咲ちゃんが生きてきた分だけの価値観があるんだものね」
「うん?」
「何でもないよ。ともかく僕は咲ちゃんの願いなら何でも叶えたくなっちゃうの。アルファで番だからね」
「アルファで番だから……じゃあ、俺が分からないのも仕方がないのかな」
「そうだよ。だから、仕方がないんだよ」
ほっとしたように息を吐きながら啓生が抱きしめてくる。
一日に何度も何度も、それこそ特別だと言う様に抱き締めてくるから、それすら慣れてしまいそうだ。
443
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
虐げられた令息の第二の人生はスローライフ
りまり
BL
僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。
僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。
だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。
救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。
お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる