11 / 13
11
しおりを挟む
それから三日、俺は緑と籠った。
三日、という日付感覚はなかったが、そろそろいいかな?とやってきた紺野に教えられた。
本当の発情期ではなかったから、三日で済んだのだった。
緑はまだベッドの上の住人ではあるが。
「うんうん、フェロモンも収まったようだね」
「おかげさまで……」
あんまり部屋から離れたくないけれど、今の緑の姿も見せたくない。
「うーん、本当は検査とかいろいろ連れまわしたいんだけど……今は採血だけで我慢しておくよ」
と、結構の量、血を取られた。
お陰で少し貧血気味だ。
紺野たちが満足して帰ると、陸さん、とかすれた声がカーテンの後ろからかけられる。
「起きたのか?」
「うん……あれ?注射の跡?」
「ん?あぁ、さっきまで紺野が来てて……もう帰ってもいいってさ。俺の家に連れて行ってもいいか?」
「はい……もう少し待ってもらいたいんですけど」
苦笑すると、緑はむせ始めた。
喉を酷使していたのだ。慌てて俺は水を飲ませる。
「わるい……手加減できなかった」
「いいえ。俺も、そうして欲しいと望んだんですから」
緑の笑顔にはいつも癒される。
緑が回復するのと同時に俺の方も少し休まないと動けそうにない。
はぁ、と近くの椅子に座り、天井を見上げた。
「早く帰ろうな」
「ふふっ、楽しみです」
俺にとっては帰るだが、緑は来る、なのかもしれない。
が、これからは帰ってくることになるのだから、それでいいか、と考えることをやめた。
はぁ、とため息を吐いてできるだけ早く部屋に帰ることに。
紺野の会社員である俺が、紺野にこんな態度をとっていていいのか、そういうのも気になりはしたが、それも、いろいろと緑の顔を見ていればどうでもよくなってくる。
「ここが……すごく広いお部屋ですね」
「え?あぁ……紺野……俺の勤めている会社の社長の好意でね。安く借りられているんだ」
最初は、住むことにも戸惑いはしたけれど……今は、慣れてしまって何とも思わない。
だが、やはり一般的なアパートなどと比べれば一人暮らしなのに広すぎと思うのは間違いではないらしい。
「緑の部屋も用意しないとな……どこにするか」
一つの部屋は書斎として使っているし、一つは寝室になっている。
となれば、と緑の腕を掴んで寝室の隣の部屋へと案内した。
「ここが、緑の私室になるかな。あと一つは今、客間になってるし……寝室は隣の部屋だから、使い勝手もいいだろうしね」
「え、でもそれだったら陸さんが使った方がいいのでは?」
俺は首を振り、笑う。
「俺の私室なんてないから。あえて言うなら、書斎がそこの通路の一番左側の部屋がそう。仕事の資料とかいろいろ置いてあるから、あんまり入ってほしくはないな」
「わかりました。でも、いいんですか?」
「もちろん。あんまり俺も隠すことなんてないしな……」
そもそも、俺のプライベートなんてあってないようなものだった。
俺の部屋にだって、母や兄弟たちは普通に入ってきていたみたいだし。何をしていたのかは知らないが。
だから、最低限のものにしか執着はしなくなったし、普通に置いてあるものは失っても壊れてもどうでもいいものだと思っている。
「じゃあ、遠慮なく……」
引っ越し用の手配をするかどうかも相談して、荷物を運ぶ日も俺が暇な日を選んでもらった。
紺野に連絡をすれば、明日から出勤で大丈夫との話だったので、俺たちはとりあえずの必要なものを買いにと、少しばかり運べるものを運びに、ショッピングと緑の家まで向かうことにした。
流石に車が必要になると、レンタカーを借りて。車自体は、免許はあるものの、所持はしていない。
乗る暇もないのに買ったところでと思っていたし、そんな暇もなければそうするならお金を貯めて家をでたいと思っていたから。
まずは、緑の家によって、緑の部屋で必要なものを運ぶ。
家の人は、お手伝いさんが居るだけで、他の母親や父親、兄弟など見当たらない。
不思議に思っていると、緑が少し説明してくれた。
「俺の家は、両親が番で、でも二人とも仕事人間で……父は会社を、母は離れでネットのプログラミングをする仕事をしてます。兄弟も出かけてますから、基本、この本邸に家族はいないんです」
へらり、と笑う緑がなんだか辛そうで、悲しそうで、俺は思わず抱きしめた。
早く、ここから出ようと言って緑を急かす。そんな俺に驚いたような顔をしてから、ふっと息を吐きだす緑は、そうですね、と笑った。
「そうですね、早くしないと日が暮れちゃいます」
お夕飯の準備が、と緑は急ぎだす。
夕飯の買い出しもしなければならないだろう。
そんな緑の様子を見ていると、俺まで笑ってしまう。
二人で協力して、必要なものを集めると、お手伝いさんにお邪魔しましたと頭を下げて車へ戻った。
本当に帰ってこないし、母親も本邸の様子を気にすることもないようだ。
なんの障害もなく緑の家を後にして、なんだか拍子抜けだったか?と思いながらショッピングモールへと向かった。
食器や食材を買いながら、あれこれと家具なども見ていく。
クローゼットなどは備え付けのものもあるし、直近で必要なものはないだろう。
ちなみに、男の一人暮らしだとてフライパンなど必要最低限はそろっているので問題はない。
米ぐらい炊ける。
そんなくだらない話をしてると、少し緑はふとしたような顔をした。
「俺……俺の家は普通じゃないかもしれないんですが、俺自身は普通の、ごく普通のオメガだと思っています。陸さんが特別なアルファだと聞いて、俺が本当に運命の番でよかったのかって少し不安で」
「……普通で良いんじゃないのか?」
何が問題なんだ?と俺は少し首を傾げた。
普通なことに、問題があるのだろうか?
「えっ?」
「俺は確かに珍しい産まれのアルファかもしれないが、たぶん俺だって普通のアルファとそんなに大差ないよ。むしろ、普通で良いんじゃないのか?と俺は思うよ。そんなに特別がいいなら一つだけ、緑にはあるよ」
「一つ?俺に?」
「わからない?……緑は俺の特別な相手だってこと。それじゃダメ?」
ぶわり、と途端に緑の顔が赤く染まる。
だ、駄目じゃないです、と顔を隠しながら言うから少しくぐもって聞こえた。かわいい。
三日、という日付感覚はなかったが、そろそろいいかな?とやってきた紺野に教えられた。
本当の発情期ではなかったから、三日で済んだのだった。
緑はまだベッドの上の住人ではあるが。
「うんうん、フェロモンも収まったようだね」
「おかげさまで……」
あんまり部屋から離れたくないけれど、今の緑の姿も見せたくない。
「うーん、本当は検査とかいろいろ連れまわしたいんだけど……今は採血だけで我慢しておくよ」
と、結構の量、血を取られた。
お陰で少し貧血気味だ。
紺野たちが満足して帰ると、陸さん、とかすれた声がカーテンの後ろからかけられる。
「起きたのか?」
「うん……あれ?注射の跡?」
「ん?あぁ、さっきまで紺野が来てて……もう帰ってもいいってさ。俺の家に連れて行ってもいいか?」
「はい……もう少し待ってもらいたいんですけど」
苦笑すると、緑はむせ始めた。
喉を酷使していたのだ。慌てて俺は水を飲ませる。
「わるい……手加減できなかった」
「いいえ。俺も、そうして欲しいと望んだんですから」
緑の笑顔にはいつも癒される。
緑が回復するのと同時に俺の方も少し休まないと動けそうにない。
はぁ、と近くの椅子に座り、天井を見上げた。
「早く帰ろうな」
「ふふっ、楽しみです」
俺にとっては帰るだが、緑は来る、なのかもしれない。
が、これからは帰ってくることになるのだから、それでいいか、と考えることをやめた。
はぁ、とため息を吐いてできるだけ早く部屋に帰ることに。
紺野の会社員である俺が、紺野にこんな態度をとっていていいのか、そういうのも気になりはしたが、それも、いろいろと緑の顔を見ていればどうでもよくなってくる。
「ここが……すごく広いお部屋ですね」
「え?あぁ……紺野……俺の勤めている会社の社長の好意でね。安く借りられているんだ」
最初は、住むことにも戸惑いはしたけれど……今は、慣れてしまって何とも思わない。
だが、やはり一般的なアパートなどと比べれば一人暮らしなのに広すぎと思うのは間違いではないらしい。
「緑の部屋も用意しないとな……どこにするか」
一つの部屋は書斎として使っているし、一つは寝室になっている。
となれば、と緑の腕を掴んで寝室の隣の部屋へと案内した。
「ここが、緑の私室になるかな。あと一つは今、客間になってるし……寝室は隣の部屋だから、使い勝手もいいだろうしね」
「え、でもそれだったら陸さんが使った方がいいのでは?」
俺は首を振り、笑う。
「俺の私室なんてないから。あえて言うなら、書斎がそこの通路の一番左側の部屋がそう。仕事の資料とかいろいろ置いてあるから、あんまり入ってほしくはないな」
「わかりました。でも、いいんですか?」
「もちろん。あんまり俺も隠すことなんてないしな……」
そもそも、俺のプライベートなんてあってないようなものだった。
俺の部屋にだって、母や兄弟たちは普通に入ってきていたみたいだし。何をしていたのかは知らないが。
だから、最低限のものにしか執着はしなくなったし、普通に置いてあるものは失っても壊れてもどうでもいいものだと思っている。
「じゃあ、遠慮なく……」
引っ越し用の手配をするかどうかも相談して、荷物を運ぶ日も俺が暇な日を選んでもらった。
紺野に連絡をすれば、明日から出勤で大丈夫との話だったので、俺たちはとりあえずの必要なものを買いにと、少しばかり運べるものを運びに、ショッピングと緑の家まで向かうことにした。
流石に車が必要になると、レンタカーを借りて。車自体は、免許はあるものの、所持はしていない。
乗る暇もないのに買ったところでと思っていたし、そんな暇もなければそうするならお金を貯めて家をでたいと思っていたから。
まずは、緑の家によって、緑の部屋で必要なものを運ぶ。
家の人は、お手伝いさんが居るだけで、他の母親や父親、兄弟など見当たらない。
不思議に思っていると、緑が少し説明してくれた。
「俺の家は、両親が番で、でも二人とも仕事人間で……父は会社を、母は離れでネットのプログラミングをする仕事をしてます。兄弟も出かけてますから、基本、この本邸に家族はいないんです」
へらり、と笑う緑がなんだか辛そうで、悲しそうで、俺は思わず抱きしめた。
早く、ここから出ようと言って緑を急かす。そんな俺に驚いたような顔をしてから、ふっと息を吐きだす緑は、そうですね、と笑った。
「そうですね、早くしないと日が暮れちゃいます」
お夕飯の準備が、と緑は急ぎだす。
夕飯の買い出しもしなければならないだろう。
そんな緑の様子を見ていると、俺まで笑ってしまう。
二人で協力して、必要なものを集めると、お手伝いさんにお邪魔しましたと頭を下げて車へ戻った。
本当に帰ってこないし、母親も本邸の様子を気にすることもないようだ。
なんの障害もなく緑の家を後にして、なんだか拍子抜けだったか?と思いながらショッピングモールへと向かった。
食器や食材を買いながら、あれこれと家具なども見ていく。
クローゼットなどは備え付けのものもあるし、直近で必要なものはないだろう。
ちなみに、男の一人暮らしだとてフライパンなど必要最低限はそろっているので問題はない。
米ぐらい炊ける。
そんなくだらない話をしてると、少し緑はふとしたような顔をした。
「俺……俺の家は普通じゃないかもしれないんですが、俺自身は普通の、ごく普通のオメガだと思っています。陸さんが特別なアルファだと聞いて、俺が本当に運命の番でよかったのかって少し不安で」
「……普通で良いんじゃないのか?」
何が問題なんだ?と俺は少し首を傾げた。
普通なことに、問題があるのだろうか?
「えっ?」
「俺は確かに珍しい産まれのアルファかもしれないが、たぶん俺だって普通のアルファとそんなに大差ないよ。むしろ、普通で良いんじゃないのか?と俺は思うよ。そんなに特別がいいなら一つだけ、緑にはあるよ」
「一つ?俺に?」
「わからない?……緑は俺の特別な相手だってこと。それじゃダメ?」
ぶわり、と途端に緑の顔が赤く染まる。
だ、駄目じゃないです、と顔を隠しながら言うから少しくぐもって聞こえた。かわいい。
32
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれβの恋の諦め方
めろめろす
BL
αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。
努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。
世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。
失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。
しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。
あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?
コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。
小説家になろうにも掲載。
孤独なライオンは運命を見つける
朝顔
BL
9/1番外編追加しました。
自分はアルファであると信じて生きてきたのに、発情したことがキッカケで、オメガだったと発覚してしまった。
アルファだと思っていた時も、孤独で苦しかったのに、オメガになったことで俺の人生はより厳しいものになった。
そんな時、俺は運命と呼べる相手と出会うことになる。
※※※※※
高校生×高校生で、オメガバースの設定をお借りしています。
設定はよくあるものだと思いますが、おかしなところがあったら、すみません。
オメガバースについて詳しい説明などは省略しています。
シリアスあり、ラブコメもあり、淡くて青い恋愛がメインのお話です。
※重複投稿
全十話完結済み
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
ちゃんちゃら
三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…?
夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。
ビター色の強いオメガバースラブロマンス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる