30 / 90
直接対決
しおりを挟む
脅迫の手紙が届いて更に三日後。
いつものように自分の邸宅でゆっくりしていると、バルザックが慌てて現れた。
「お、お嬢様……大変でございます」
「どうしたの?」
「そ、その。大変申し上げにくいのですが、ヴァレリア様が来られました」
「……!」
バルザックの報告を聞き、わたくしは背筋が凍った。まさか敵がわざわざ乗り込んでくるとは想定外だった。しかも堂々と正面から。
「止めたのですが、強引に……」
「そう。直接対決ってことね」
てっきり回りくどく嫌がらせしてくるもとのばかり思っていた。けれど、ヴァレリアはそうではなかった。あの深い森の時と同じように大胆。
ということは勝算があってのこと。
危険しか感じないので退避してもよかった。
でも、逃げるわけにもいかない。
それに、ヴァレリアと直接話してみたかった。
なぜ、こんなことをするのか問い詰めたい。
「如何いたしましょうか?」
「通してちょうだい。わたくしが鉄槌を下します」
妹の仇を――半分くらいはその理由。残りは、わたくしとルドラの為。
このまま立ち止まっても意味はない。
ならば戦うまで。
いつもルドラに守られてばかり。
だから、ここはわたくし自らが出る。
そんな間にもヴァレリアがズカズカと広間に入ってきた。
「……」
氷のように冷たいまなざし。青い瞳をこちらに向けてくる。
さすがに成長して容姿が変化しているけれど、あの見下すような表情は忘れもしない。
「ヴァレリアね」
「そうよ、クリス。昔のことは思い出したかしら?」
くすくすと笑うヴァレリアは、わたくしの記憶を消したことを微塵も後悔していなさそうだった。そんなあざ笑うように近づいてくる光景に、わたくしは不快感を覚えた。
「それ以上近づかないで。それより、よくも妹を!」
「証拠がないわ」
「……くっ」
証拠は今、ルドラが固めているところだった。今日中には確かな情報を得られると言っていた。それまで時間を稼ぐ。
それが、わたくしに出来ることだから……!
いつものように自分の邸宅でゆっくりしていると、バルザックが慌てて現れた。
「お、お嬢様……大変でございます」
「どうしたの?」
「そ、その。大変申し上げにくいのですが、ヴァレリア様が来られました」
「……!」
バルザックの報告を聞き、わたくしは背筋が凍った。まさか敵がわざわざ乗り込んでくるとは想定外だった。しかも堂々と正面から。
「止めたのですが、強引に……」
「そう。直接対決ってことね」
てっきり回りくどく嫌がらせしてくるもとのばかり思っていた。けれど、ヴァレリアはそうではなかった。あの深い森の時と同じように大胆。
ということは勝算があってのこと。
危険しか感じないので退避してもよかった。
でも、逃げるわけにもいかない。
それに、ヴァレリアと直接話してみたかった。
なぜ、こんなことをするのか問い詰めたい。
「如何いたしましょうか?」
「通してちょうだい。わたくしが鉄槌を下します」
妹の仇を――半分くらいはその理由。残りは、わたくしとルドラの為。
このまま立ち止まっても意味はない。
ならば戦うまで。
いつもルドラに守られてばかり。
だから、ここはわたくし自らが出る。
そんな間にもヴァレリアがズカズカと広間に入ってきた。
「……」
氷のように冷たいまなざし。青い瞳をこちらに向けてくる。
さすがに成長して容姿が変化しているけれど、あの見下すような表情は忘れもしない。
「ヴァレリアね」
「そうよ、クリス。昔のことは思い出したかしら?」
くすくすと笑うヴァレリアは、わたくしの記憶を消したことを微塵も後悔していなさそうだった。そんなあざ笑うように近づいてくる光景に、わたくしは不快感を覚えた。
「それ以上近づかないで。それより、よくも妹を!」
「証拠がないわ」
「……くっ」
証拠は今、ルドラが固めているところだった。今日中には確かな情報を得られると言っていた。それまで時間を稼ぐ。
それが、わたくしに出来ることだから……!
203
あなたにおすすめの小説
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
『完璧すぎる令嬢は婚約破棄を歓迎します ~白い結婚のはずが、冷徹公爵に溺愛されるなんて聞いてません~』
鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎる」
その一言で、王太子アルトゥーラから婚約を破棄された令嬢エミーラ。
有能であるがゆえに疎まれ、努力も忠誠も正当に評価されなかった彼女は、
王都を離れ、辺境アンクレイブ公爵領へと向かう。
冷静沈着で冷徹と噂される公爵ゼファーとの関係は、
利害一致による“白い契約結婚”から始まったはずだった。
しかし――
役割を果たし、淡々と成果を積み重ねるエミーラは、
いつしか領政の中枢を支え、領民からも絶大な信頼を得ていく。
一方、
「可愛げ」を求めて彼女を切り捨てた元婚約者と、
癒しだけを与えられた王太子妃候補は、
王宮という現実の中で静かに行き詰まっていき……。
ざまぁは声高に叫ばれない。
復讐も、断罪もない。
あるのは、選ばなかった者が取り残され、
選び続けた者が自然と選ばれていく現実。
これは、
誰かに選ばれることで価値を証明する物語ではない。
自分の居場所を自分で選び、
その先で静かに幸福を掴んだ令嬢の物語。
「完璧すぎる」と捨てられた彼女は、
やがて――
“選ばれ続ける存在”になる。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい
神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。
嘘でしょう。
その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。
そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。
「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」
もう誰かが護ってくれるなんて思わない。
ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。
だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。
「ぜひ辺境へ来て欲しい」
※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m
総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ ありがとうございます<(_ _)>
【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
その結婚は、白紙にしましょう
香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。
彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。
念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。
浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」
身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。
けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。
「分かりました。その提案を、受け入れ──」
全然受け入れられませんけど!?
形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。
武骨で不器用な王国騎士団長。
二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。
私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?
あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。
理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。
レイアは妹への処罰を伝える。
「あなたも婚約解消しなさい」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる