さようなら、わたくしの騎士様

夜桜

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結婚指輪

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 ライラは、その未来の結果だけを教えてくれた。
 誰がいつ、どのようにわたくしとフェイルノートの結婚をぶち壊すのか……。そこまでは解からないという。


「本当に誰なのか分からないのですか?」
「残念ですが、わたしが見通せる未来は結果だけです」


 やっぱりダメか。
 でも、気になることがあった。


「なぜ、親切に教えてくれるんですか」
「もちろん、最初は嫉妬していた部分もあるわ。フェイルノート様という、帝国随一のお方と一生を共にできるなんて……羨ましすぎるわ」

「だから、最初はあんな敵対を」

「まあね。でも、今はどうでもよくなった。あなたの結婚式がどうなるか見てみたい」


 ちょっと悪趣味な気もするけれど、でも占いが確かなら……近い将来、わたくしとフェイルノートの結婚式でとんでもないことが起こるかもしれない。

 なら、対策するしかない。

 自分ができる精一杯の防御策を。


「一応、お礼を言っておきます」
「あら、優しいのね……クリス。まあ、気を付けることね」



 わたくしはお店を後にした。
 そのまま宝石店へ戻り、フェイルノートと合流。

 お店は少しだけ落ち着きを取り戻していたけれど、それでもお客様はあふれていた。


「ふぅ」
「フェイルノート様、ただいまです」

「おかえり。休憩はできたかい?」
「はい。おかげ様で」

「? クリス、やはり疲れているようだね」


 ぐっと顔を近づけて、わたくしの顔を見つめるフェイルノート。そんなジロジロ見られると恥ずかしいというか、嬉しい。

 このままキスできてしまえそうな距離。

 って、営業中になにを考えているの、わたくし。


「…………その」
「今日は任せてくれ。クリスはそこで座っているといいさ」
「でも」

「大丈夫。今、俺はとても楽しくてね。接客がこんなに楽しいとは初めて知ったよ」


 テキパキと仕事をこなしていくフェイルノート。はじめてには見えない動きだった。
 もしかしたら彼には才能があるのかも。いえ、あるのだわ。

 お客様が求めている宝石をきちんと勧めているし、そして笑顔も忘れていない。爽やかすぎてまぶしい。

 騎士でなくとも、フェイルノートは完璧ね。


 ――そうして、初日は大盛況に終わった。


 その夜。
 静かなお店の中で、フェイルノートは懐から指輪を取り出していた。

 それは結婚指輪だった。


「こ、これは……」
「クリス、今日は大成功だった。これからも俺と一緒に」


 左手の薬指に指輪をはめてくれるフェイルノート。……嬉しい、幸せっ。
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