兄をたずねて魔の学園

沙羅

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名前と部屋番号が対応した紙と寮内の地図を受け取り、自分の部屋へと入室する。もう1人の1年生も先に来ていたようで、部屋には既に3人が集まっていた。

「おっ、君がもう1人の新入生? これからよろしくー!」
「はい、よろしくお願いします! あっ、俺は池井秋弥っていいます」
「秋弥くんね。俺は織戸朝陽。朝陽先輩って呼んで。んで、こっちの静かな方が木戸郁夜」
「俺が静かなんじゃなくてお前が人一倍うるさいだけだろ……」
「えー、そんなことないのに。まぁいいや。俺たちがこの部屋の2年生。学校のことで分かんないことがあったらなんでも聞いてな。ちょっとここ複雑だから」
「ありがとうございます!」

さっそく心強いことを言ってもらえて安心する。同級生はどんな人なのだろうと思って視線を向ければ、軽く一礼をしたあとに答えてくれた。

「俺は北見夕斗って言います。夕焼けの夕に一斗缶の斗で夕斗。これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそ! よろしくお願いします」

丁寧な挨拶に、こちらまでついお辞儀を返してしまう。明るい人・クールな人・大人しくて礼儀正しい人。タイプはバラバラだけれど、みんな優しそうだ。

「しかしなんで2人ともこんな学校選んじまったかねぇー。全寮制の男子校なんて青春の『せ』の字もないのに」
「色恋基準で学校選んでるやつなんてお前くらいだから」
「えー! 俺は親にこんなところ放り込まれなかったら彼女つくりまくってたのに~」
「良かったじゃないか。モテない現実を突きつけられなくて」
「はぁ? ケンカ売ってんの?」

「あの……、質問いいですか?」
2人の微笑ましい言い合いを止めるのは申し訳なく思いながらも、この流れで兄のことを聞くのが自然だろうと思い尋ねてみる。
「どうしたんだ?」

「俺がこの学校に来たの、実は兄を探すためで」
「兄を探す?」
「聞いたことない理由だな」
心底不思議そうな顔をする2人に少しだけ安心する。彼らの反応を見るに同じような失踪事件が他にも起こっているわけではなく、何かの事件に巻き込まれている可能性は低いと知れたからだ。

「お兄さんの名前は?」
「池井春樹っていいます。顔はまぁまぁ似てると思うんですけど」
「うーーん。見たことない気がするけど。郁夜は知ってる?」
「いや。知らないな……」
「去年の夏休みから兄と連絡が取れなくなってしまって。それまでは頻繁に電話もしてたし家にも帰ってきてくれてたのに、それが夏休みでパッタリと」

そこまで話すと、何か思い当たるところがあったというように2人が顔を見合わせる。
「もしかして……この状況、あいつらか?」
「可能性は高いかもな」
「ん~~……それを新入生くんに話すのは酷だなぁ」

先ほどハッキリと知らないと述べてくれたのとは対照的に、2人だけでひそひそと話し始める。そんなにも言いづらいことに巻きまれているのかと、少し安心したのも束の間また不安が募っていく。

「何か手がかりがあるんなら、教えてほしいです」
「……確証がないからあんまり言いたくはないんだけどね」
「そうだな。あくまで可能性の1つとして聞いて、自分から接触しようなんて思わないでくれ」

ますます不安になるハードルの上げ方に、少しだけ身体が冷えていく。2人はさっきまでとは違い、少しシリアスな雰囲気を纏いながら話を進めた。

「家族を追ってこの学校まで来たやつは初めてだが、友達が急に音信不通になったって話なら聞いたことがある。というか、郁夜の親友がそうだった」
「……『サポーター』って知ってるか?」

「生徒会役員の補佐ってやつですか?」
午前中の説明で軽くその単語は聞いたが、その意味をしっかりとは理解していなくて疑問形で答える。
「そう、表向きは生徒会役員の補佐ってことになってる。この学校は生徒の自治を尊重するって建前で生徒会の仕事が多くてね。会長・副会長・会計・書記のそれぞれに1人ずつ『サポーター』って名前の庶務みたいなものがつくんだ」
「まぁ、表向きは、だけどな」
「実際はただ彼らが気に入った生徒を手籠めにしておくだけの枷ってところだよ。現に、郁夜の親友が『サポーター』に選ばれた時の生徒会役員はもう現役じゃない。それでもガチガチの束縛から解放されてないのは、実務じゃないところで必要な人間だったってこと。恋人同士ならいいけど、合意の上じゃなかったら最悪だよね」
「厄介なことに、この制度には教師も口出しできないみたいだしな」
「自治なんて言いつつ独裁者作り出してるだけだよね~。つまり、『サポーター』の命運は生徒会役員の裁量次第ってわけ。例えば、彼らが『自分のサポーターを誰の目にも触れさせたくない』なんて思えば、本当にその通りになっちゃう」
「あいつらもさすがに人の進級までは左右できなかったみたいだけどな。俺が親友と会えるのは、今ではもう期末テストの時くらいだ。まぁ、会えるだけで話も出来ないんだが」

声に怒りをにじませて、吐き出すように郁夜先輩が言う。寮の説明の中で『サポーター』の話を聞いた時は不思議な制度もあるもんだなと思ったくらいだったが、実際にはとんでもない制度だった。

そしてこの話を今のタイミングで俺にしたということは……。

「俺の兄も、誰かの『サポーター』になってる可能性があるってことですか」
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