兄をたずねて魔の学園

沙羅

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僕の兄は、どうやら誰かの『サポーター』になっているらしい。先輩たちの仮説はこうだ、兄を『サポーター』に選んだ生徒会メンバーはかなり独占欲が強いタイプで、おそらく兄は、常にそいつの側にいて他の人間と連絡をとるなという指示でも受けているのだろうと。

兄に繋がる手がかりが得られたことで一刻も早く真相を知りたいとうずうずしたが、同時に先輩たちから口を酸っぱくして言われたこともある。
それは、絶対に兄を探るような行動は起こすなということだった。

「あいつらの反感を買えばこの学校には居られなくなる。俺らみたいなのは稀で、基本的に生徒会メンバーには信者がたーっくさんついてるからね。執拗ないじめに耐えられるだけの精神力あるなら別だけど」
「そうなったら少なくともお兄さんが卒業するまでは再会できないだろうな。だから、正面から取り戻そうとするのはまず不可能だ」

じゃあどうすればいいのか。4人で思考を巡らせるが、なかなか良い案は思いつかない。

「秋弥が生徒会メンバーに入れるのが一番だが……生徒会メンバーになれるのは2年になってからだしな。そもそも秋弥じゃちょっとカリスマ性が足りない」
「悔しいことに、生徒会メンバーは即座にそうと納得できるくらいの容姿と経歴はしてるからな」
「『サポーター』同士なら接触できるんですか?」
「うーん……それは一理あるけどリスクは高いかもね。取り入った相手が変態束縛魔だったら大変だ」
「そんなに危ない人が多いんですか? 生徒会なのに」
「なんせここの生徒会をやるようなやつは人の上に立って当たり前みたいな人種だからな。支配欲が強いやつが多いんだよ」

生徒会に所属するのは、おそらく不可能に近い。『サポーター』になるのも、危険が多い割には実際に兄に会える可能性は低い。

「まぁ、秋弥のお兄さんを囲ってるやつが飽きるまで待つしかないんじゃねぇか」
「そうだねぇ……今すぐ動きたい気持ちでいっぱいだろうけど、郁夜にまたトラウマを植え付けるのも可哀想だし。俺は止めさせてもらうよ」

何もできることはなさそうだと諦めの空気が流れ始めた時、ふと夕斗が疑問を口にした。

「でも、生徒会の人の方から接触される可能性はあるんじゃないですか? お兄さんとのメッセージにも、この学校に来ることは送っているんでしょう? それを見られてるとか、そもそも顔が似ているのなら気付く人もいるのかもしれません」

虚をつかれたような質問に、先輩2人が思わず顔を見合わせる。

「あーー……その可能性は考えてなかったな」
「基本的にあいつら人に興味はなさそうだが。そこまで気に入ってる『サポーター』の身内になら興味を持つ可能性はあるな」

それから議論は、もし向こうから接触されたらどうするのが正解かという話になっていった。もし兄のことなんか知らないと嘘をつけば、プライドの高い人たちだ。バレた時に逆上される可能性もあるだろう。
反対に、素直に弟だと認めたらどうなる。事実確認だけで済めばいいが、兄の立場が余計に悪くなってしまう可能性や兄が余計に辛い目にあう可能性があると言われた。どういう意味かと尋ねると、少し言いづらそうにしながらも郁夜先輩が答えてくれる。「お前だって、兄がヤってるとこなんて見たくねーだろ」と。あまりの発言に絶句していると、「裏の意味ってそういうことだよ。可哀想だから直接は言わなかったけどね」と朝陽先輩の声が続いた。

結論としては、はぐらかせそうならはぐらかそうというなんとも曖昧なものに収まった。名前まで知られているのであれば本当のことを言わざるを得ない状況だが、生徒会のやつらにそこまでの関心がなく、なんとなく似ているという程度で聞かれたんだったらはぐらかした方が良いということだった。

欲を言えばそこで奇跡的に仲良くなれるのが兄救出のための最前手ではあるが、どこに地雷が埋まっているかわからない相手のため、無理に距離を縮めようとするのは禁物だとも言われた。いつかチャンスはくるだろうから、自分からガツガツいくのは危険だと。

「先輩たちも夕斗もありがとう。兄ちゃんのことは気になって仕方ないけど、とりあえずはぐっと抑える。向こうから来た時になんとかしてみせるよ」

正直なところあまり生徒会の怖さのイメージは共有できなかったけれど、こんなに心配してくれている先輩たちの気持ちに反するようなことはしたくないと思った。

いつか声をかけられたときに、なんとかしてみせる。俺の一言で兄を解放してもらえるくらいに生徒会メンバーと仲良くなってみせるんだ。

そんな風に意気込んでいると、存外にも早く決戦の時は訪れた。
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