12 / 24
12
しおりを挟むあの日から、天先輩の態度が変わった気がする。
説明する時間を割いてまで仕事を手伝わせてくれるようになったのに加えて、一緒に食卓を囲むようにもなった。食事はほとんど天先輩がつくってくれるわけだけど、先輩の指示通りに切ったりするくらいは手伝わせてもらっている。
一緒にいる時間が長くなって、会話も増えて。
少しは近づけたんじゃないかなんて、浮かれていた。
……そんな時だった。
「お前、会長の『サポーター』か?」
天先輩と少し距離は縮まっても、それは部屋の中だけだった。普段通り自由に過ごしている俺は、会長の『サポーター』として奇異の目を向けられることも多い。他の『サポーター』は基本的に生徒会役員にべったりで、あまり見る機会がないからというのも視線を向けさせる理由の一端を担っていた。
「そう、ですけど……」
それでも、こうやって直接声をかけてくる人は多くはない。今までだと、どうやって会長に取り入ったんだと聞いてくる人たちであったり、会長の普段の様子を事細かに質問してくる人たちであったりと、熱烈すぎるファンという印象が強かった。
しかし、今日声をかけてきた人にはそんな様子は見えない。興奮しているというよりは嫌に冷静で、何を考えているのか分からなかった。
「ちょっと来い」
こちらの答えを聞く前に、手首が掴まれて引っ張られる。倒れるのを避けるために足を動かせば、辿り着いた先は人気のない教室だった。
いや。普段は人気がないはずなのに、その教室の中には5人ほど人がいた。
おそらくは、この男の仲間の。
……これはちょっと、やばい状況なのではないだろうか。
「悪いようにはしねぇよ。俺たちは会長に恨みがあるだけだからな」
それを聞いて、この人たちの正体に思い当たる。
会長が言っていた、この学園にあるという勢力図。生徒会派、日和見派、そしてこの人たちはおそらく、反生徒会派の人たちなのだろう。
「会長に、何の恨みがあるっていうんですか」
「あぁ? やりたい放題で調子に乗ってる“会長サマ”に苛つかねぇはずがねぇだろ。それともなんだ? お前、自分から喜んで『サポーター』やってんのか?」
「そしたらとんだ淫乱だなぁ。噂じゃ『サポーター』と生徒会役員は一緒に寝てるんだろ? 体のいいペットにさせられて可哀想に」
可哀想なのは、会長の方だと思う。会長自身は俺の誘いで手を出したことはあっても、自分から手を出してきたことはない。ましてや、むしろ暴走する自分を止めてくれた側だ。
それなのに、こんなくだらない噂で馬鹿にされて、悪者にされるなんて。
「……ちゃんと見てもないくせに」
会長は、実はまともなんだと思う。冷徹にも見えるけれど俺の意志を無視はしないし、人は信じないけどそれだって、こういうことに巻き込まれないためには必要なスキルだ。
「なんか言ったか? まぁいい。お前にはちょっと囚われのお姫様役をやってほしくてな。大人しく縛られて、会長を泣いて呼んでくれたらいいからさ。協力してくれる?」
疑問形のようで、多勢に無勢すぎてほぼ確認みたいなものだ。ここで抵抗をしたところで、いい結果には結びつかないだろう。そう理解しているのに、この人たちの言うことを聞きたくないと本能が叫ぶ。
「……誰が。誰が協力なんかするかよ!」
こんな姑息な手段を使わずに、俺みたいに真正面から天先輩にぶつかってみろ。
朝陽先輩や郁夜先輩みたいに、正攻法で生徒会の面々と戦ってみろ。
こんな卑怯者なんかに、好きにさせてたまるもんか。
殴り合いになったら負けるしかないけれど、逃げることならできる。俺だって会長のことを嫌いだろうと信じていた彼らは、俺が逃げ出すとは考えていなかったようだ。幸いにも、俺よりも扉側にいる人間はいない。
いける、逃げられる。
人を呼んで、目論見を潰してやろう。
手首を振り解いて扉に駆け出す。扉に手がかかって横にスライドしようとしたその時、背中に強い衝撃が走った。
「うあっ!?」
飛び道具の存在はさすがに考慮していなくて、バランスを崩して倒れ込む。起き上がろうとしたその時には、もう男たちに囲まれていた。
「演技にしてやろうと思ってたのに。本当に泣いて呼ぶことになるなぁ」
11
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
僕を嫌っていた幼馴染みが記憶喪失になったら溺愛してきた
無月陸兎
BL
魔力も顔も平凡な僕には、多才で美形な幼馴染みのユーリがいる。昔は仲が良かったものの、今は嫌われていた。そんな彼が授業中の事故でここ十年分の記憶を失い、僕を好きだと言ってきて──。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる