月が出ない空の下で ~異世界移住準備施設・寮暮らし~

於田縫紀

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第15章 4月の一斉試験

87 試験終了

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 4月2日。
 今回の試験も社会見学実習と同様に、教室が指定された。
 ただし今回は、どうやって教室を指定したかが、『4月の一斉到達度試験における教室指定のお知らせ』に、はっきり記載されている。

『教室の指定は、4月1日時点での全科目の学習済み単位時間数が上位40人までの者を第一教室、それ以下を第二教室としました』

 ただし席指定は無く、正確な順位も不明。
 わかるのは「学習済み単位時間数が上位40人か否か」だけだ。

 そして教室に入って偵察魔法で確認したところでは、3月に一緒に女子会をした4人のうち、第一教室にいたのはカタリナとフイン。
 しかしニナとヒナリは第二教室だった。
 ニナはともかく、ヒナリは大丈夫だろうか。

 なおアキト、そしてケイトは第一教室だ。
 アキトは当然という感じだし、ケイトも予想通りかな。
 そんな思いを抱きつつ、午前の試験に突入する。

 ◇◇◇

 昼休憩のとき、ニナやヒナリと少しだけ話をした。

「思ったより皆、学習時間を増やしていたようです。これからは2日に1単位時間くらい増やした方がいいかもしれません」

「今回、本当にまずいかもしれません。前もぎりぎりだと警告がありました。一応試験対策はしたのですけれど」

 知識魔法による翻訳を使っているので、口調はいつもと変わらない。
 しかしヒナリはかなり危機感がある模様。
 表情だけでもそれがわかる。。
 
 午後の試験は自然科学と魔法の2科目。
 課程の希望は今回は事前に提出済みなので、説明や回答の時間はなし。
 だから魔力測定を終えた14時30分に、エノフ指導員からこんな説明が入った。

「この後は試験結果と課程選択決定の発表だ。15時40分にこの教室に集合してくれ。では解散」

 再集合まで1時間以上ある。
 今日は試験のせいで学習時間がとれないから、ここで少しでも進めておこう。
 寮に戻り、少し疲れを癒すためにパンプディングを食べつつ、言語Ⅲの4単位時間コマ目をやって。

 その後、ぎりぎりより少しだけ早めに第一教室へ。
 教室は思ったより静かだった。
 もっと試験結果についてあれこれ話すかと思ったが、そうでもない。
 授業等で集まる機会が少ないから、生徒同士が知り合いになりにくいため、会話も増えにくいのかもしれない。

 タブレットを操作するふりをしながら、偵察魔法で周囲を探る。
 アキトはテニフと、あと見知らぬ男子1人と話している。
 フインはケイトと、やはり私の知らない女子と会話中。

 カタリナの姿はまだ見えない。
 私以上にぎりぎりで来るつもりなのだろう。
 なんて思ったところで教室に入ってきた。

 カタリナが来たなら、そろそろ指導員も来るはず。
 廊下を確認すると、予想通りエノフ指導員とナラハ指導員が歩いてきている。
 偵察魔法を解除し、タブレットを初期メニュー画面に戻して机上に置いて待つ。

 エノフ指導員が入室した。

「それではタブレットを出してくれ。結果発表の時間だ」

 前回と同様、タブレットの表示が変わって、今回の結果が表示される。

『第2回課程選択・精査結果通知
 長期課程(Ⅰ)継続決定。施設、寮室の変更無し……』

 これは予想通りだし、もともと落ちるとも思っていない。
 それでも少しばかり安心しつつ、次の項目へ目を移す。

 試験結果の欄には細かな講評もあったけれど、まずは点数だけ確認。
 言語95点、魔法・数学・地理歴史は100点、自然科学95点。
 やはりケアレスミスが2問あるけれど、前回より10点上がっていた。

 1日あたりの学習進度は平均7.6時間。前回と同じだ。
 特別科目が少なかった分、もっと多いかと思ったけれど、考えると特別科目も単位計算に含まれている。
 そして私の1日のスケジュールは、運動が毎日加わった以外は大きく変わっていない。
 なら、この結果も妥当だろう。

 順位という欄はないので、この中で私がどれくらいなのか、もっと上がいるのか、いるなら何人かはわからない。
 でもまあ、どう考えても悪い方ではないはずだ。
 施設卒業後、ヒラリア共和国の特別A基準コースに進めるかはわからないけれど。 

 エノフ指導員の声が聞こえる。

「後の要領は前回と同じだ。15時50分になったら第一施設から迎えが来る。今回の移動者はこの教室から2名、第二教室から10名、素行不良で自室にて試験を受けている者1名の、合わせて13名だ。詳しく知りたい者は知識魔法で確認してくれ。ただし個人情報は表示されない。知り合いなら直接本人に聞くか、偵察魔法で廊下に出たところを見届けてくれ。
 それでは迎えが来るまで質問時間だ。声に出しての私語は禁止だが、仲間内で伝達魔法を使うのは自由だ」

 特に質問は無いようだ。
 そして伝達魔法なら、話すのも自由だと。
 音ではなく、気配としか言いようのない何かのざわめきが広がる。

『ケイトだけどさ、チアキ。今回のテスト、どうだった?』

 さっそくケイトから伝達魔法が飛んできた。

『今回は大丈夫、課程も変更なし』

『そっちは心配してないっしょ。アタシが聞いてんのはさ、何問間違えたかってこと。ちなみにカタリナに聞いたら「2問、修行不足」って返事だったわ。アタシは5問も間違えたし、マジで修行どころじゃないんだけど』

 うわっ!
 カタリナは予想の範囲内だとしても、ケイトもそんな成績とは。
 やっぱり洒落にならない。
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