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第15章 4月の一斉試験
88 試験結果
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まあ、話せる知り合いが残るのは悪いことじゃない。
それにケイトは、知識魔法に頼らず会話できているあたり、相当優秀で努力もしているのは確かだ。
そもそも学習時間が十分でなければ、第一教室に来るはずがない。
とりあえずケイトには、こう答えておこう。
『言語と自然科学で1問ずつ間違った』
『マジ!? 洒落になってないんですけど』
そういえばこの機会に、ケイトに聞いてみようか。
それなり以上に学習した上で成績を聞いているのだ。
何か目標があるのかもしれない。
ということで質問してみる。
『そういえばケイト、卒業後のコースって、難しいの狙ってる? さっき壁って言ってたし、勉強もかなり進めているみたいだし』
『人気ないけど、必修多くて基準高めのコース狙ってんの。具体的にはナルニーアレ連邦の開拓者特別A基準。自分の牧場つくるのが夢なん』
知らないコースの名前が出てきた。
ナルニーアレ連邦に行くつもりはなかったから、調べていなかったのだ。
もちろん理由はある。
『ナルニーアレ連邦って、ペルリアやヒラリアと比べると政治体制的に危険じゃない? 生活水準も一人あたりGDPも低いし、国民の権利も一部制限されてるし』
ペルリアやヒラリア共和国が昔からの先進国だとすれば、ナルニーアレ連邦はようやく近年先進国、あるいは中進国最上位に食い込んできた国だ。
今は三権分立を含む近代的な体制になってはいる。
だが10年前までは軍部出身の大統領による開発独裁体制で、今の仕組みも革命に近いクーデターの産物だ。
国内がまだ不安定なため、政治的自由も一部制限されている。デモなどの集団示威行為は禁止だ。
『そーゆーのわかってる。でもだからこそ開拓が進められてるし、優遇制度も多いんだよね。開拓者特別A基準なら、義務教育のあとさらに2年間、実戦的に学べるし、自分の開拓地と準備金がもらえるし』
なるほど。独立して農業を目指すなら悪い制度じゃない。
ただ私から見ると、リスクが大きすぎる気がする。
念のため、知識魔法で条件を確認しておこう。
『ナルニーアレ連邦開拓者特別A基準は、言語Ⅷ、魔法Ⅷ、数学Ⅵ、自然科学Ⅴ、地理歴史Ⅴ、医療基礎Ⅲ、独自魔法作成Ⅴの7科目を履修し、最終確認試験で各80点以上が必要です。卒業後はナルニーアレ連邦首都ルリアフの義務教育学校を経て、レナア島の開拓前進都市オノリクにある養成校で2年間学びます。養成校の成績と卒業時に出す開拓案に応じて、最高2,000,000Cの開拓準備金と、道路のみ開通済みの開拓地2km²以上が支給され、開拓を行うことになります』
確かに独立はできそうだけれど……
『なかなか厳しくて大変なコースだよね、卒業後も』
『そだね。実際人気ないし、定員も埋まらないっぽい。でも街で神経すり減らすより、独立して自分の領域持ちたいって思うんよ』
意外だった。
ギャル語っぽい口調だから都会志向かと思ったが、実際は逆だったらしい。
そもそもここは日本じゃないし、ギャル文化も違うのかもしれない。
いや、そもそもギャルという存在自体、この惑星オーフにいるのかも不明だ。
『てかチアキは? もう目指すコース決めてんの?』
『そこまではっきりは決めてない。今はヒラリアの特別A基準が最難関だから、それに対応できるようにしてるだけ』
『あれ超ムズいじゃん! 条件も厳しいし倍率もヤバいし。なんで? 彼氏が行くとか?』
いや、ちょっと待て。
『彼氏なんていないけれど。そもそもそんな関係になれるような環境じゃないし』
『前に「私より進んでそうな男子いるから聞いてみる」って言ってたよね? あれ彼氏じゃないん?』
アキトは彼氏じゃない。
確かに話して楽しいと思ったし、一緒に演劇を観に行く約束はしたけれど。
『生活実習で知り合った情報交換相手ってだけ。そのあと売店で1回、情報交換で2回会っただけ。最後に話してからもう20日以上経ってる』
嘘ではない。1回は2人きりで長く話し込んでしまったけど……。
そろそろまた情報交換してもいいかもしれない。
ケイトから聞いた医療基礎のことも話したいし。
『怪しいけど、証拠ないし今は黙っとく。それに第一施設の指導員、もう階段上ってきてるし。そろそろおしゃべりやめるわ』
来たか。私は偵察魔法を起動する。
3月の試験後にも来たごつい中年女性、テルミ指導員が階段を上ってきていた。
ニナとヒナリは大丈夫だろうか。
「さて、第一施設のテルミ指導員が来た。第一施設に移動することになった2名は廊下へ。寮の荷物はすでに移動済みだ。他の者はもう少し待ってくれ」
エノフ指導員の声で、男子1人と女子1人が無言で立ち上がり廊下へ出て行く。
どちらも3月の試験で第一施設から来た顔ぶれだ。アキトやカタリナ、フインは余裕がありそうだし、ケイトもさっき話したとおり。
だから心配はしていなかったけれど。
気になるのは第二教室のニナとヒナリ。
何せ向こうは4分の1近くが移動になる。
こっちより移動になる確率がずっと高い。
廊下に魔法の視点を飛ばす。
第二教室からも生徒がぞろぞろと出てきた。
1人、2人……10人。
見た限りでは、ニナもヒナリもいない。
念のため第二教室を探る。
ニナは窓際2番目、ヒナリは中央列前から5番目に座っていた。
無事残れたようだ。
引率の指導員は第一教室に顔を出さず、12人を連れて階段の下へ消えていく。
12人ということは、素行不良者1人は別で第一施設に送られたのだろう。
『掲示板に措置が書かれてます』
知識魔法からそう返答があったので、掲示板魔法を起動。
なるほど、移動を拒否したため眠らせて搬送したとある。
いずれにせよ厄介者が消えたのは、こっちにとってもありがたい。
そう思ったところで、エノフ指導員が口を開いた。
「この後、第一施設から13名、長期課程(Ⅰ)に決まった者が来る。そして次回の一斉到達度確認試験は5月1日第5曜日。本日は以上だ。解散」
エノフ指導員が教室を出たのにあわせ、私たちも立ち上がる。
それにケイトは、知識魔法に頼らず会話できているあたり、相当優秀で努力もしているのは確かだ。
そもそも学習時間が十分でなければ、第一教室に来るはずがない。
とりあえずケイトには、こう答えておこう。
『言語と自然科学で1問ずつ間違った』
『マジ!? 洒落になってないんですけど』
そういえばこの機会に、ケイトに聞いてみようか。
それなり以上に学習した上で成績を聞いているのだ。
何か目標があるのかもしれない。
ということで質問してみる。
『そういえばケイト、卒業後のコースって、難しいの狙ってる? さっき壁って言ってたし、勉強もかなり進めているみたいだし』
『人気ないけど、必修多くて基準高めのコース狙ってんの。具体的にはナルニーアレ連邦の開拓者特別A基準。自分の牧場つくるのが夢なん』
知らないコースの名前が出てきた。
ナルニーアレ連邦に行くつもりはなかったから、調べていなかったのだ。
もちろん理由はある。
『ナルニーアレ連邦って、ペルリアやヒラリアと比べると政治体制的に危険じゃない? 生活水準も一人あたりGDPも低いし、国民の権利も一部制限されてるし』
ペルリアやヒラリア共和国が昔からの先進国だとすれば、ナルニーアレ連邦はようやく近年先進国、あるいは中進国最上位に食い込んできた国だ。
今は三権分立を含む近代的な体制になってはいる。
だが10年前までは軍部出身の大統領による開発独裁体制で、今の仕組みも革命に近いクーデターの産物だ。
国内がまだ不安定なため、政治的自由も一部制限されている。デモなどの集団示威行為は禁止だ。
『そーゆーのわかってる。でもだからこそ開拓が進められてるし、優遇制度も多いんだよね。開拓者特別A基準なら、義務教育のあとさらに2年間、実戦的に学べるし、自分の開拓地と準備金がもらえるし』
なるほど。独立して農業を目指すなら悪い制度じゃない。
ただ私から見ると、リスクが大きすぎる気がする。
念のため、知識魔法で条件を確認しておこう。
『ナルニーアレ連邦開拓者特別A基準は、言語Ⅷ、魔法Ⅷ、数学Ⅵ、自然科学Ⅴ、地理歴史Ⅴ、医療基礎Ⅲ、独自魔法作成Ⅴの7科目を履修し、最終確認試験で各80点以上が必要です。卒業後はナルニーアレ連邦首都ルリアフの義務教育学校を経て、レナア島の開拓前進都市オノリクにある養成校で2年間学びます。養成校の成績と卒業時に出す開拓案に応じて、最高2,000,000Cの開拓準備金と、道路のみ開通済みの開拓地2km²以上が支給され、開拓を行うことになります』
確かに独立はできそうだけれど……
『なかなか厳しくて大変なコースだよね、卒業後も』
『そだね。実際人気ないし、定員も埋まらないっぽい。でも街で神経すり減らすより、独立して自分の領域持ちたいって思うんよ』
意外だった。
ギャル語っぽい口調だから都会志向かと思ったが、実際は逆だったらしい。
そもそもここは日本じゃないし、ギャル文化も違うのかもしれない。
いや、そもそもギャルという存在自体、この惑星オーフにいるのかも不明だ。
『てかチアキは? もう目指すコース決めてんの?』
『そこまではっきりは決めてない。今はヒラリアの特別A基準が最難関だから、それに対応できるようにしてるだけ』
『あれ超ムズいじゃん! 条件も厳しいし倍率もヤバいし。なんで? 彼氏が行くとか?』
いや、ちょっと待て。
『彼氏なんていないけれど。そもそもそんな関係になれるような環境じゃないし』
『前に「私より進んでそうな男子いるから聞いてみる」って言ってたよね? あれ彼氏じゃないん?』
アキトは彼氏じゃない。
確かに話して楽しいと思ったし、一緒に演劇を観に行く約束はしたけれど。
『生活実習で知り合った情報交換相手ってだけ。そのあと売店で1回、情報交換で2回会っただけ。最後に話してからもう20日以上経ってる』
嘘ではない。1回は2人きりで長く話し込んでしまったけど……。
そろそろまた情報交換してもいいかもしれない。
ケイトから聞いた医療基礎のことも話したいし。
『怪しいけど、証拠ないし今は黙っとく。それに第一施設の指導員、もう階段上ってきてるし。そろそろおしゃべりやめるわ』
来たか。私は偵察魔法を起動する。
3月の試験後にも来たごつい中年女性、テルミ指導員が階段を上ってきていた。
ニナとヒナリは大丈夫だろうか。
「さて、第一施設のテルミ指導員が来た。第一施設に移動することになった2名は廊下へ。寮の荷物はすでに移動済みだ。他の者はもう少し待ってくれ」
エノフ指導員の声で、男子1人と女子1人が無言で立ち上がり廊下へ出て行く。
どちらも3月の試験で第一施設から来た顔ぶれだ。アキトやカタリナ、フインは余裕がありそうだし、ケイトもさっき話したとおり。
だから心配はしていなかったけれど。
気になるのは第二教室のニナとヒナリ。
何せ向こうは4分の1近くが移動になる。
こっちより移動になる確率がずっと高い。
廊下に魔法の視点を飛ばす。
第二教室からも生徒がぞろぞろと出てきた。
1人、2人……10人。
見た限りでは、ニナもヒナリもいない。
念のため第二教室を探る。
ニナは窓際2番目、ヒナリは中央列前から5番目に座っていた。
無事残れたようだ。
引率の指導員は第一教室に顔を出さず、12人を連れて階段の下へ消えていく。
12人ということは、素行不良者1人は別で第一施設に送られたのだろう。
『掲示板に措置が書かれてます』
知識魔法からそう返答があったので、掲示板魔法を起動。
なるほど、移動を拒否したため眠らせて搬送したとある。
いずれにせよ厄介者が消えたのは、こっちにとってもありがたい。
そう思ったところで、エノフ指導員が口を開いた。
「この後、第一施設から13名、長期課程(Ⅰ)に決まった者が来る。そして次回の一斉到達度確認試験は5月1日第5曜日。本日は以上だ。解散」
エノフ指導員が教室を出たのにあわせ、私たちも立ち上がる。
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※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
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