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拾遺録6 俺達の決断
7 出張計画?
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イレーネさん達が来てから3回目の夕食。
いまのところ襲撃は無い。
ただし……
「出入りを見張られているようです。始末しようと思えば出来ますし、警告を出すことも出来ますけれど、どうしましょうか」
夕食時間、サリアがそんな話題をぶっ込んできた。
勿論俺も気づいている。
というか、あの勉強会出身の7人は全員気づいていただろうと思う。
イレーネの表情がこわばった。
ロザンナは表情こそ変えていないけれど、魔力のブレで動揺している事はわかる。
「特に気にする必要はないだろう。まだ仕掛けてきていないんだから、気づかないふりをしておけばいい」
とりあえず俺は、そう軽く言っておく。
実際今の警戒態勢なら、特に問題はないのだ。
それに見張られているなんて言ったら、イレーネやロザンナは自分たちのせいと思うだろうし、子供達も気にしてしまうだろう。
だから俺は、あえてその件について触れなかったのだ。
ただサリアの考え方は、俺とは違う。
問題があるのだから皆に公表して、さっさと処理した方が安全だ。
きっとそういう考え方なのだろう。
俺としては、そういう考え方は危ういと感じるのだけれど。
「うちの商会の方も、此処の大手からは大分恨みを買っていますからね。まあ古いだけで利益を還元せず自分の所だけ暴利を貪っている商会なんて、無くなった方がいいですからね」
「その件で妨害しようとした輩を、秋にごっそり捕まえていますからね。ベニーニ商会までは捜査は届きませんでしたけれど、おかげでテモリの犯罪組織は綺麗さっぱり壊滅出来ましたし」
「後始末が結構大変だったけれどな」
最大手の犯罪組織が潰れたせいで、二番手以降とか個人の犯罪者等が勢力争いを始めたのだ。
仕方ないので元勉強会の7人が交代で街を空属性魔法で見張り、犯罪があったらとっ捕まえるなんてのを2週間ちょい続けたのだ。
あの時も領主家に関与させない為、タウフェン公爵経由で冒険者ギルドと国に協力要請したのだった。
そっち側の後始末は、基本的に俺の役目になっているから仕方ない。
「とりあえず今の体制で、もう少し様子を見たいと思うんだけれどどうだろうか。見るだけなら犯罪じゃない。周囲の世論という意味でも、何も具体的な行動がないうちにこっちから出るのは避けたい」
「それが無難だろう」
アギラが賛成してくれると、正直ほっとする。
この中では一番、常識とか良識に近い立場にいる奴だから。
「でも見張られていて、自分が標的じゃないかと思うのは、正直閉塞感がありますよね。それならという事でイレーネさんとロザンナさん、ちょっと息抜きを兼ねて遠出してみませんか」
ヒューマがまた怪しい事を考えている気がする。
でも確かに、イリアの家事を手伝う事に絶望する頃合いかもしれない。
閉塞感を抱くのも確かだろう。
だからとりあえず、言葉を挟まないで様子をうかがう。
「何でしょうか」
「南部のカタサーロまで、ゴーレム車で野菜を受け取りに行って欲しいんですよ。南部では野菜が豊作すぎて値段が下がって、おかげで農家が困っているらしいんです。それでうちの冒険者集団の友好パーティ2つに適価で買い集めて貰っているんで、それを受け取って来て貰おうと思って。
もちろんうちからも1人出しますし、ゴーレム馬車も出します」
予想外の案が出てきた。
ヒューマが物価調整というか商売の為、南部中心に活動している、勉強会の第2期卒業者パーティ『オキュペテー』や第3期卒業パーティ『南の風』と連絡を取り合っている事は知っていた。
麦や豆の収穫時期も連絡を取り合って、南部と東岸中部を行ったり来たりしているのも知っている。
しかしまさか、この場でその話が出て、それにイレーネ達を生かせるなんてのは思わなかった。
「行くのは大丈夫ですが、お邪魔ではないでしょうか」
「うちが輸送に使う自在袋は大容量なんで、人数がいてくれるとそれだけで大分楽になるんですよ。もちろんうちからも1人つけます。
カタサーロまでは300離ありますけれど、うちのゴーレム車なら1日あれば余裕で行けます。だから行きに1日、向こうで1日、帰りに1日ってところでしょうか。向こうは友好パーティ、オキュペテーって冒険者パーティですけれどね、そこの集団ハウスがあるんで、安全面も問題はありません」
言っている事そのものは事実だ。
それでもヒューマの事だから、何か企みが隠れている気がする。
俺の偏見かもしれないけれど。
「お手伝い出来るのなら、喜んでやらせていただきますけれど」
「私もです」
ヒューマ、俺から見ると詐欺師にしか見えない笑顔で頷いた。
「なら申し訳ありませんが、明後日の朝出発でお願いします。あとカイルに一緒に行って貰っていいですか。商会用の6人乗りゴーレム車と専用自在袋8つは渡しますから」
今度は俺に話が降ってきた。
「別にいいけれど、何故俺なんだ?」
明日冒険者ギルドのイゼラニア地方支部に行ってタウフェン公爵に首尾を確認すれば、後は特に用事は無い。
強いて言えば3週間ちょっと後、来月1日に新年祭の演武に出るため王都に行かなければならない。
でもこれは、前日に此処を出れば充分に間に合う。
「戦力的な問題と、向こうの要望ですね。最悪、魔法が通用しない敵が出てきた場合、一番何とか出来るのはカイルですからね。時点でイリアですけれど、イリアがここから離れたら家事に支障を来しますから。
あとカイルは、カタサーロの集団ハウスにいる子供達に人気がありますからね。そろそろ顔を出して剣術や魔法を直接教えてやって欲しいって、ファビオから言われているんですよ」
その人気というのは、迷宮消去者の名目上のリーダーだというのが原因だ。
実際はサリアの方がよっぽど多くの魔物や魔獣を倒しているのだけれども。
ただ『魔法が通用しない敵が出た場合』は確かに俺が一番適任ではある。
そんな迷宮の最奥部にいる魔物とか、カレン団長とか、エルディッヒのような敵が実際に出るかどうかは別として。
だからまあ、ヒューマの言う事は理屈上は正しい。
ついでに言うとうちの集団の活動費用は、主にヒューマの商会の利益から出ていたりもする。
厳密には、サリア名義でヒューマが実質的に運営している商会だけれども。
だからまあ、ここで反対するような事は無いだろう。
そもそも行って帰って3日程度なのだ。
「わかった。明日イゼラニアから帰ったら準備する」
「カイルなら特に準備はいらないと思いますよ。いつもの冒険者装備に、商会用大容量自在袋を装備するだけで済みますから。
イレーネさんとロザンナさんの準備は、イリアにお願いします。明日1日あれば充分ですよね」
「そうね。その辺は任せておいて」
イリアがそう言えば、まあ問題はない。
いまのところ襲撃は無い。
ただし……
「出入りを見張られているようです。始末しようと思えば出来ますし、警告を出すことも出来ますけれど、どうしましょうか」
夕食時間、サリアがそんな話題をぶっ込んできた。
勿論俺も気づいている。
というか、あの勉強会出身の7人は全員気づいていただろうと思う。
イレーネの表情がこわばった。
ロザンナは表情こそ変えていないけれど、魔力のブレで動揺している事はわかる。
「特に気にする必要はないだろう。まだ仕掛けてきていないんだから、気づかないふりをしておけばいい」
とりあえず俺は、そう軽く言っておく。
実際今の警戒態勢なら、特に問題はないのだ。
それに見張られているなんて言ったら、イレーネやロザンナは自分たちのせいと思うだろうし、子供達も気にしてしまうだろう。
だから俺は、あえてその件について触れなかったのだ。
ただサリアの考え方は、俺とは違う。
問題があるのだから皆に公表して、さっさと処理した方が安全だ。
きっとそういう考え方なのだろう。
俺としては、そういう考え方は危ういと感じるのだけれど。
「うちの商会の方も、此処の大手からは大分恨みを買っていますからね。まあ古いだけで利益を還元せず自分の所だけ暴利を貪っている商会なんて、無くなった方がいいですからね」
「その件で妨害しようとした輩を、秋にごっそり捕まえていますからね。ベニーニ商会までは捜査は届きませんでしたけれど、おかげでテモリの犯罪組織は綺麗さっぱり壊滅出来ましたし」
「後始末が結構大変だったけれどな」
最大手の犯罪組織が潰れたせいで、二番手以降とか個人の犯罪者等が勢力争いを始めたのだ。
仕方ないので元勉強会の7人が交代で街を空属性魔法で見張り、犯罪があったらとっ捕まえるなんてのを2週間ちょい続けたのだ。
あの時も領主家に関与させない為、タウフェン公爵経由で冒険者ギルドと国に協力要請したのだった。
そっち側の後始末は、基本的に俺の役目になっているから仕方ない。
「とりあえず今の体制で、もう少し様子を見たいと思うんだけれどどうだろうか。見るだけなら犯罪じゃない。周囲の世論という意味でも、何も具体的な行動がないうちにこっちから出るのは避けたい」
「それが無難だろう」
アギラが賛成してくれると、正直ほっとする。
この中では一番、常識とか良識に近い立場にいる奴だから。
「でも見張られていて、自分が標的じゃないかと思うのは、正直閉塞感がありますよね。それならという事でイレーネさんとロザンナさん、ちょっと息抜きを兼ねて遠出してみませんか」
ヒューマがまた怪しい事を考えている気がする。
でも確かに、イリアの家事を手伝う事に絶望する頃合いかもしれない。
閉塞感を抱くのも確かだろう。
だからとりあえず、言葉を挟まないで様子をうかがう。
「何でしょうか」
「南部のカタサーロまで、ゴーレム車で野菜を受け取りに行って欲しいんですよ。南部では野菜が豊作すぎて値段が下がって、おかげで農家が困っているらしいんです。それでうちの冒険者集団の友好パーティ2つに適価で買い集めて貰っているんで、それを受け取って来て貰おうと思って。
もちろんうちからも1人出しますし、ゴーレム馬車も出します」
予想外の案が出てきた。
ヒューマが物価調整というか商売の為、南部中心に活動している、勉強会の第2期卒業者パーティ『オキュペテー』や第3期卒業パーティ『南の風』と連絡を取り合っている事は知っていた。
麦や豆の収穫時期も連絡を取り合って、南部と東岸中部を行ったり来たりしているのも知っている。
しかしまさか、この場でその話が出て、それにイレーネ達を生かせるなんてのは思わなかった。
「行くのは大丈夫ですが、お邪魔ではないでしょうか」
「うちが輸送に使う自在袋は大容量なんで、人数がいてくれるとそれだけで大分楽になるんですよ。もちろんうちからも1人つけます。
カタサーロまでは300離ありますけれど、うちのゴーレム車なら1日あれば余裕で行けます。だから行きに1日、向こうで1日、帰りに1日ってところでしょうか。向こうは友好パーティ、オキュペテーって冒険者パーティですけれどね、そこの集団ハウスがあるんで、安全面も問題はありません」
言っている事そのものは事実だ。
それでもヒューマの事だから、何か企みが隠れている気がする。
俺の偏見かもしれないけれど。
「お手伝い出来るのなら、喜んでやらせていただきますけれど」
「私もです」
ヒューマ、俺から見ると詐欺師にしか見えない笑顔で頷いた。
「なら申し訳ありませんが、明後日の朝出発でお願いします。あとカイルに一緒に行って貰っていいですか。商会用の6人乗りゴーレム車と専用自在袋8つは渡しますから」
今度は俺に話が降ってきた。
「別にいいけれど、何故俺なんだ?」
明日冒険者ギルドのイゼラニア地方支部に行ってタウフェン公爵に首尾を確認すれば、後は特に用事は無い。
強いて言えば3週間ちょっと後、来月1日に新年祭の演武に出るため王都に行かなければならない。
でもこれは、前日に此処を出れば充分に間に合う。
「戦力的な問題と、向こうの要望ですね。最悪、魔法が通用しない敵が出てきた場合、一番何とか出来るのはカイルですからね。時点でイリアですけれど、イリアがここから離れたら家事に支障を来しますから。
あとカイルは、カタサーロの集団ハウスにいる子供達に人気がありますからね。そろそろ顔を出して剣術や魔法を直接教えてやって欲しいって、ファビオから言われているんですよ」
その人気というのは、迷宮消去者の名目上のリーダーだというのが原因だ。
実際はサリアの方がよっぽど多くの魔物や魔獣を倒しているのだけれども。
ただ『魔法が通用しない敵が出た場合』は確かに俺が一番適任ではある。
そんな迷宮の最奥部にいる魔物とか、カレン団長とか、エルディッヒのような敵が実際に出るかどうかは別として。
だからまあ、ヒューマの言う事は理屈上は正しい。
ついでに言うとうちの集団の活動費用は、主にヒューマの商会の利益から出ていたりもする。
厳密には、サリア名義でヒューマが実質的に運営している商会だけれども。
だからまあ、ここで反対するような事は無いだろう。
そもそも行って帰って3日程度なのだ。
「わかった。明日イゼラニアから帰ったら準備する」
「カイルなら特に準備はいらないと思いますよ。いつもの冒険者装備に、商会用大容量自在袋を装備するだけで済みますから。
イレーネさんとロザンナさんの準備は、イリアにお願いします。明日1日あれば充分ですよね」
「そうね。その辺は任せておいて」
イリアがそう言えば、まあ問題はない。
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