ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

文字の大きさ
285 / 322
拾遺録6 俺達の決断

8 行きのゴーレム車で

しおりを挟む
 そんな訳で翌々日の朝7の鐘過ぎ、俺はイレーネさんとロザンナさんと、ゴーレム車でカタサーロに向けて出発した。

 ゴーレム車そのものは商会用にサリアが作った大型。
 パーティで使っていたものを簡素化したような構造で、今は4人乗り+荷物スペースという形にしている。
 
 だから3人乗っても充分な広さはあるのだけれど、微妙に落ち着かない。
 理由はまあ、俺なりにわかってはいる。
 同じゴーレム車にパーティ員以外と乗り合わせた事がないからだろうと。

 ただイレーネさんとロザンナさんは、そういった事を感じていない様子。
 というかゴーレム車での移動や高速移動魔法が物珍しい事に加え、テモリの街の外に出かける事そのものも久しぶりで楽しんでいるという感じだ。

「ゴーレムで牽く車というのは初めて乗りました。王族やラモッティ伯爵家以外でも、今では一般的になってきているのでしょうか」

「今でも中部や北部では少ないと思う。ただ南部のスリワラ領は領騎士団の顧問がゴーレム制作者だし、他にも民間でゴーレム制作者がいるからさ、そこここで見かける程度には使われている。あとうちの集団クランのサリアもゴーレム制作者だから、それなりの数を運用している」

 それなりの数というか……
 元勉強会の連中は、今では全員自分用のゴーレム馬を持っているし、サリアに至っては他にTシリーズ6体、Eシリーズ6体を持っているし……
 常識外れ過ぎるので、今はそこまで言及しないけれど。
 
「ゴーレムも珍しいですけれど、この馬車も珍しいですね。速くて乗り心地がいいです。何か特殊なものなのでしょうか」

「車輪と車体の間に、振動を緩和させる装置が入っている。この辺もサリアの領分だな。ゴーレムの方が馬より速く引く力が強いから、こういった構造にしないと振動が酷くて乗れなくなるらしい」

「これってサリアさんが独自に考案したのでしょうか」

「俺達がいた勉強会の先生の1人がゴーレム制作者で、こういった事にも詳しい人だった。これから会いに行くパーティ『オキュペテー』も同じ勉強会の後輩で、同じようにゴーレムやゴーレム車、大容量の自在袋を運用している」

 こんな感じの質疑応答が、さっきから車内で繰り返されている。
 でもまあ、この落ち着かない空間で無言でいるよりは、気分的に楽だ。

「それではまた高速移動魔法を使うぞ」

 目的地のカタサーロまで、300離600kmの距離がある。
 幾らゴーレム車が通常の馬車より速くても、ただ走っているだけでは1日で着くのは不可能だ。

 そして俺の空属性の熟練レベルでは、ゴーレム馬&ゴーレム車&3人で超高速移動魔法を連続使用するのはまだ無理だったりする。。
 1~2回なら使用可能だが、3回以上は連続で使えないのだ。
 必然的に高速移動魔法の連続起動で距離を稼ぐ事になる。

 地図とコンパスを見比べて、大体の方向を確認。
 東南東側に進路を決めて、高速移動魔法の連続起動を開始する。

「風景が灰色になりました」

「あまり外は見ない方がいい。人によっては魔法酔いする場合もあるから」

「こんな高度な魔法を使って、その上ゴーレムを操りながらでも、会話が出来るんですね」

 これはそれなりに空属性魔法を特訓した成果だ。
 空属性魔法を使えないと、何が起きているかわからないままま討伐依頼が終わってしまうなんて事が多々あった。

 だからレウスと2人で特訓した結果、半年で何とか、ゴーレムを使用しながら超高速移動魔法を使える状態になった。
 ただその直後、パーティ一時解散なんて事になったのだけれど。
 なんて事情や実情は勿論言わないけれど、経験談としてある程度の事は言える。
  
「訓練と慣れだな、これは。元々空属性魔法やゴーレム操縦は得意ではなかったけれど、半年くらい意識して訓練したら出来るようになった」

「でもカイルさんは、本来は火属性の魔法使いですよね。助けていただいた時も、火炎壁の魔法を本来と違う形で展開していましたし」

「そうだけれどさ、やれば何とかなるものだ。イレーネさんやロザンナさんも、あそこにいる間に練習したらどうだろう。高速移動魔法はすぐには難しいだろうけれど、ゴーレム操縦くらいは2日あれば出来ると思う」

 ゴーレム操縦は土属性がレベル1あれば可能な魔法だ。
 必要なのは考え方だけで、その辺りは俺が教えられる自信がある。
 スーザの街近くに出来た迷宮ダンジョンでリンドヴルム対策をした際、俺自身があれこれ苦労した経験があるから。

「出来れば敬称なしで呼んでください。私達の方がお世話になっている立場ですから。イリアさんにも私達だけの時は名前だけで呼んで貰っていますし」

 そういうところはイリア、ある意味遠慮無くやるからな。
 それに今は仲間意識を持ってもらった方が、2人にとっても楽だろう。

「わかった。それじゃ俺もさん抜きで、以降イレーネとロザンナと呼ぶことにする。俺の方もカイルとだけ呼んでくれ」

「わかりました」

 呼び捨てにする事に気恥ずかしさを感じるのは、きっと呼び慣れないせいだ。

「あと魔法については、実はイリアに教えて貰ってるんです。他の属性もレベル2までは使えるようになったのですけれど、それ以上がなかなか難しくて……」

 あ、それは、教えて貰う相手が悪いというか……

「イリアはどの属性もレベル5以上使えるけれどさ。本質的には感覚派だから、あまり人に教えるのには向いていないんだ。きっちり理屈から教わるなら、属性を問わずサリアかな。あと俺でよければ、今回の行き帰りでも教えるけれどさ」

 その辺だけでなく、大体においてサリアとイリアは好対照というか真反対だ。
 どちらも間違いなく優秀ではある。
 ただ性格も得意分野も、何もかもが反対というか……
 先生の家で育った中での2トップだったから、相補的になったのかもしれないけれど。

「さっきからカイルさ、カイルは、サリアを立てますよね。何か特別な関係があるのでしょうか」

 思ってもみなかった妙な方向の質問が来てしまった。
 以前エミリオに、対象がイリアで似たような質問をされたなと思い出す。

「特別な関係というか、同じ集団クランの一員だな。空属性魔法関係と工作能力の高さで頼りになるし。イリアの家事能力やアギラの治療能力、あと微妙にやっかいだけれどヒューマの金稼ぎの能力と同じだ。レズンやレウス含めた6人とは10年来の付き合いだからさ。そういう特別な関係と言えなくもないけれど、それ以上はないな」

 改めて考えても、そういう感情は無いし持てない気がする。
 俺はもっと普通の女の子の方がいいのだ。
しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。