機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第6章 嵐と実りの季節です

23 学生会も働きます

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 9月終わりの金曜日。
 4年生はまだ授業は始まっていないが、学生会幹部3人は学生会室に揃っていた。

 3限終了後の俺が学生会室の扉をくぐって真っ先に目に入ったのは、書類の山とうんざりした顔でそれを確認している深淵の監査担当。
 由香里姉の席にも鈴懸台先輩の席にもそれぞれ書類が束になっている。
 でも月見野先輩の前の書類はそれらより圧倒的に多い。

「何ですか。この仕事しているっぽい書類の山は」

「学園祭の申請書類よ。今日から申請開始なの」

 そうだった。
 この学校でと言うか、この島の一大イベントが迫っている。

 元々魔法技術関連しかないこの島は、普段は訪れるのも関係者ばかりだ。

 でも学園祭のある週は違う。
 うちの高専も隣の大学も同時に学園祭を実施。
 この時ばかりは島中がお祭りムードに包まれる。
 普段出入りが制限されているこの島も、この時だけは事前の申込みがあれば一般人が訪れることが出来るのだ。

 当然、訪れる人は多い。
 通常5千人に満たない程度の島の人口が、この週だけは十万人規模になる。

 その為に処理すべき事務事項も多い。
 例えば学内のイベントの認可・許可関連とか場所やスケジュール調整。
 物品購入等の予算執行関連や公式パンフレットの作成等。
 学生会絡みだけでもとんでもない仕事量がある。 

 もちろん幹部会が全部をやるわけではない。
 傘下のいくつかの分科会が実務を行う。

 しかし認可・許可関連は最終的には必ず幹部会に決裁として上がってくる。
 また場所や時間の調整で係争があって双方が引かない場合、その裁定も幹部会に回ってくる。
 結果、学生会幹部の仕事量も一気に増えるのだ。

 そしてその中でも、最終的な審査を実質的に行っている月見野先輩の負担が最も大きい。

「そう言えば長津田君、審査系の魔法持っていらっしゃいますよね」

 月見野先輩がそう言って俺をすがるような目で見る。

「会計系は無理ですよ。物品の性能や性質しか見えませんから」

「それで十分ですわ」

 そう言って月見野先輩が立ち上がり、俺の机の前にドスン、と書類の束を置く。

「申請書のうち、魔法を使うものと新たな制作物を使うものですわ。これの安全性を確認していただけるかしら」

 それなら一応俺の守備範囲だ。
 月見野先輩の負担も少しは軽くなるだろうし、仕方ないだろう。

「わかりました。それで安全性の基準はどれくらいを目安にしますか」

「そうですね。認識ある過失までは許されて、未必の故意は不許可にする……というのはわかりにくいですかしら」

「お客様は怪我をしないように、主催側は注意すれば事故や怪我を防げる程度でいいわ」

 由香里姉が分かりやすい基準に直してくれた。

「わかりました。由香里姉の基準で見てみます」

「お願いしますわ。私は他に予算関連もありますので」

 月見野先輩はほっとしたような顔をして、まだまだ積み重なっている書類の山に戻っていく。
 大変だな、月見野先輩。
 そう思いつつ、俺も渡された申請書の確認作業を始める。

 暗黒魔法や闇魔法を脅かしと舞台設定に使用したお化け屋敷。これはまあ大丈夫だろう。
 治療魔法による健康診断と健康相談なんてのも健全だしOKだ。

 魔法調理研究会の激辛カレーショップは、確か昨年救急車が出た。
 でも名物だし被害者納得済で食べる前に宣誓書書かせているし条件付き許可かな。

 召喚魔法愛好会の恐怖の館はNGかな。召喚対象に旧支配者とかが記載されているし。
 後で月見野先輩に確認しよう。

 そうやって見ていくと確かに危険なものもいくつかある。

 例えば『魔力によってバネ定数が変化する素材のデモンストレーション』。
 例の香緒里ちゃんの魔法で作ったバネのデモ。

 名前は一見研究発表っぽいが、実際の内容は単なる人間大砲だ。
 バネを柔らかくして人間を先端部に載せた後、一気にバネを固くして乗った人間を打ち出すという危険極まりない計画。
 提出元は田奈秀雄主任教授になっている。

 また『教官による学科対抗飛行スクーターレース』なんてのもある。
 提出元は教授会一同になっている。

「月見野先輩、教授なんかが出している危険な企画はどうするんですか」

 月見野先輩は大きくため息をついた。

「あれは学生会にも審査権限は無いですわ。まあ自己責任ということで無視してくださいな」

 そう言えば昨年は俺の作ったヘリコプターでのレースをやっていたっけ。
 あの時は確か用賀先生が墜落して足の骨折ったんだよな。
 審査外ならしょうがない、無視しよう。

 それにしても教授連中の危険な企画、今回は香緒里ちゃん関連ばかりだな。
 そう思ってふと気づく。

「そう言えば香緒里ちゃん、遅いですね」

 時計によると現在時刻は午後4時ちょうど。
 既に4限は終了している。

「今日から来る補助魔法科1年転入生の校内案内等をお願いしたの。本当は学生会幹部の仕事なんだけど、書類が溜まっているから頼んじゃった」
と由香里姉。

「転入生って珍しいですね、この学校に」

「留学生特別枠よ。でも日本語喋れるらしいし入学試験の成績も良かったみたい。大橋先生が褒めていたわ」

 成程。
 そんな話をしながら、俺達は書類の山を片付けていく。

 俺が安全確認関係。
 月見野先輩が予算と購入物品等の関連。
 由香里姉がスケジュールや場所の調整等と裁定関連全般。
 鈴懸台先輩がそれらチェックが終わった書類のはんこ押しとコピー。
 そんな感じだ。

 本当ははんこ押しは会長である由香里姉の仕事の筈。
 しかし各自の能力分担としては今の状態が正解なのだろう。
 鈴懸台先輩は自他共に認める脳筋だから。

 コンコン。学生会室の扉がノックされる。

「はい」

「香緒里です、失礼します」

 よそ行きの香緒里ちゃんの声。
 香緒里ちゃんは金髪の女子学生を一人連れている。
 この人が例の転入生かな。
 
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