機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
24 / 202
第6章 嵐と実りの季節です

24 黒船襲来大混乱

しおりを挟む
「本日から魔法補助科1年に転入されます、ジェニス・ブルーリーフヒルさんをお連れしました」

「ジェニスと申します。ジェニーって呼んでくさい。よろしくお願います」

 こっちも全員立ち上がって挨拶する。

「私は薊野由香里、学生会の会長で攻撃魔法科の4年、そこの香緒里の姉よ。よろしくね」

「私は鈴懸台翆、副会長で同じく攻撃魔法科4年だ。よろしくな」

「書記と会計を務めております月見野朱里ですわ。ジェニーさんと同じ補助魔法科の4年よ、よろしくお願いしますね」

 順繰りに挨拶が出て俺の番だ。

「魔法工学科2年の長津田修、ここの手伝いをしている。よろしく」

 と、俺の紹介のところでジェニーの視線が動いた。

「あなたが、魔法工学科の学生さんの、オサム・ナガツダさんすか」

 何だろう。でもその通りなので俺は頷く。

 いきなり彼女は俺に飛びついてきた。
 3m位は間合いがあった筈なのに。

「+*!#$%&?……」

 何か俺を抱きしめて言っているが、早口の英語なので何もわからない。
 ただ感じるのは彼女の柔らかい感触と触れ合った部分の熱さ。
 そしてシャンプーかな、いい香り。

 だがこの状態が続くとマズい。
 俺の健全な男子の体が反応しそうだ。

 まずい、そう思った俺の背に回していた腕の力が緩んだ。
 ジェニーが俺を開放してくれたようだ。

「ごめんなさい。嬉しかったのでついつい抱きついてしまいました」

 抱きつくのってついついやる事だろうか?
 それとも文化が違うという奴なのだろうか。

 由香里姉から怒りのオーラが出ているのが横目にも見える。
 それを面白そうに観察する鈴懸台先輩。
 観察しつつもそれとなく重要書類を机の中に退避させている月見野先輩。
 不穏さが徐々に高まりつつある。

「この学校に転入したは、オサム・ナガツダさん、あなたに会うためす。一生懸命勉強したし日本語も話せるようなりました。褒めください!」

 部屋の気温がすっと5度くらい下がった。勿論気のせいではない。
 危険な兆候だ。

 しかし俺は彼女に見覚えはない。
 それでも何かが引っかかる。

「まだわからないすか。ではこれでわかるすか」

 そうジェニーは言って、不意に自分のスカートを捲りあげる。
 おいおい一体!と思ってそして俺は気づいた。

「ひょっとして手紙をくれた、あの義足の」

「そうす。ジェシーす。やっと会えまた!」

 そう言って再びジェシーは俺に抱きついてきた。
 抱きつかれて必死に自制心を発動させている俺の耳に、ばたっ、という人が倒れるような音がする。

 何の音かは想像つく。
 由香里姉が危険な状態になったので、月見野先輩が気絶させたのだろう。
 下がる一方だった部屋の気温が元に戻りつつあるのがその証拠だ。

 しかし今度は俺の視界が急に色あせてきた。
 あ、この感覚には憶えがある。
 これは香緒里ちゃんの自衛兵器の発動……

 ◇◇◇

 俺が気づいた時には、既に俺を除く学生会幹部面々はジェニーとにこやかにお茶会をしていた。

「修兄、起きましたか」

 そう言って香緒里ちゃんが紅茶を入れてくれる。
 うーん、気絶明けの紅茶が身体に染みわたる。

「ごめんなさい、つい気が高ぶって害虫退治くんを発動させちゃいました」

 害虫退治くんとはこの前開発した香緒里ちゃん自衛用の最終兵器だ。
 発動させると香緒里ちゃん以外の付近の人間を無差別に麻酔状態にする。
 薬物耐性最強の月見野先輩以外、行動不能にしてしまう恐ろしい自衛兵器だ。

「大丈夫ですわ。香緒里ちゃんの自衛兵器は安全な薬剤を使用していますから」

 という事はフォローした月見野先輩の魔法は安全ではないのだろうか。

「それで今、修君のいない間に皆で話し合ったのですけれどね。ジェニーさんも学生会幹部補佐に任命して一緒に頑張ってもらうことになりましたので、了解の方よろしくお願いしますね」

「えっ」

「よろしくお願います、オサムさん」

 大丈夫なのだろうか。
 俺は横目で由香里姉を見る。
 あまりご機嫌宜しい感じではないが、納得はしているようだ。

「こちらこそよろしく」

 俺も軽く頭を下げる。

「ジェニーさんは探知魔法を中心に補助魔法が使えるそうですの。学生会幹部の活動に有用ですので是非にとお願いしたのですわ」

「今年度は探知系の魔法を使える役員がいなかったからな。これで何処へ行っても安心だ」

「そうね」

 不本意そうに由香里姉が同意する。

「それで学生会ここのメンバーになった以上、当然今夜の行事から参加するんだろ」

「勿論ですわ」

 鈴懸台先輩と月見野先輩がわからないやり取りをしている。

「今夜って、何か行事があるんですか」

 俺の質問に鈴懸台先輩がにやりと笑った。

「金曜夜と行ったら露天風呂だろ」

 ちょっと待ってくれ。

「あれは香緒里ちゃんを狙う連中がいるから中止なのでは」

「大分ほとぼりも覚めてきましたことですしね。それに今はジェニーさんの能力もある事ですし。ジェニーさんはこちらに害意を持って近づく人間を察知できる魔法を使えるそうなので」

「自動継続の魔法のです。一度かければ24時間有効で寝ていても自動的に起きられるす」

 成程、それなら確かに襲われる危険は避けられるだろう。
 しかし問題は他にもある。

「あとキャンピングカーの寝床は2人用3つしかないけれど。何なら俺が助手席リクライニングして寝ればいいいか」

「2人用3つあれば6人寝れるから問題ないよな」

「そうですね」

 あ、由香里姉にスイッチが入った。
 香緒里ちゃんも何か反応している。

「寝る場所はあとで厳正なくじ引きとさせていただきますわ。私とミドリで一番後ろの下段を取りますので、あと2つのベッドをくじ引きにすればいいですわね」

 さらっと月見野先輩と鈴懸台先輩で一番いい場所取りやがった。
 しかし他の面々に文句は無さそうだ。
 由香里姉のギラギラした視線が怖いが、香緒里ちゃんの何か静かな決意を込めたような目もちょっと怖い。

 大丈夫か、俺?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

処理中です...